表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/80

反省をしよう

 うう……。

 私は不貞腐れてうずくまる。

 いったいあいつなんだったていうんだ。


 普通、逃げるなんて思わないだろ。

 プライドはないのか、プライドは。


 というか、逃げたってことは、あいつは私の姿を確認できていないわけか。

 もし確認できていたのなら、沸き上がる殺意で、逃げるなんて選択肢は選べないはずだ。


 ああ! 今になってようやく、あいつの攻撃の正体に気がついた。

 あれは明からさますぎたよな?

 なんで気づかないんだ私。


 はあ、ダメだなあ。

 もうなんか、気力がなくなってきた。

 でも、どうやってあいつは逃げたんだ?


 うーん、あっ!

 よし、あいつの呼び名は年貢にしよう。

 別に小作科っぽいとかそんなことはないけど。


 改めて、逃げた方法について考えよう。

 ん? これって、考えるまでもない気がしてきた。

 そうであれば、だいたい説明はつくし。

 だけどこれじゃあ、本当に厄介すぎる。


 まず、次に遭ったときは私自身の姿を見せるべきだろう。

 今度は逃げられないように。


 どうしようか。

 今の私にはやることがない。

 周りにはもう強そうな反応はないんだ。

 ちまちまと弱そうなやつらを倒していくのはなんか気に入らない。


 そういえば、まだ私に寄ってくる反応が残っている。

 そいつら、どうやって倒そう?

 うん。どうやって、とか頭を巡らせても【搾取】を使うくらいしか攻撃方法がないわけで……。

 あとは体当たりか、引っ掻くくらいだ。


 やっぱり他の攻撃方法が欲しい。

 【苛虐】が頑張ってくれて、私の新しい攻撃方法になってくれたりはしないのか?


 考えていると、新たなる敵が私の前に現れた。

 フタバスズキリュウ?

 絶滅していなかったのか!?


 それにしても、凶暴そうだ。

 それでもなんか、思ったより小さい。

 もしかしたら、私が大きいのかもしれないんだけど、まあ、いま考えたってわからないか。


 なんか上から攻めてきた。

 ダッ、と海底を蹴って避ける。

 後ろに回られた。もう一度、攻撃を仕掛けてくる。

 だが、私にかかればこんな攻撃簡単に避けられるんだ。

 うわ、急加速してきた。

 翼の部分をカジられる。


 はは、よくやってくれたな。

 【搾取】を使用。

 こいつからは、吸収するのが容易だ。

 反応的にも、あの高速カジキとかズルい鮫よりも小さかった。



〈ステータス〉

 下級竜Lv:36

 モバイルプレシオサウルス

 ENE:016/125

 STA:007/132



 寸止めに成功した。

 こいつはもう、瀕死であり、私にカジりつき続ける気力はないはずだ。

 竜だけど、ドラゴンって付いてないんだなあ。


 ここで私は【苛虐】を使用。

 「クルクル回れ」と念じてみる。

 おお、回った。回ったぞ!


 この【苛虐】。

 相手を支配下に置くスキルみたいだ。

 条件は詳しく検証しない限りわからないが、なんか微妙なスキルな気がする。


 だってさあ、こいつ、瀕死なんだぜ?

 こいつに戦わせるには、あるていど回復させなきゃならないわけで、そのためには私がエサを用意しなきゃいけない。


 だけど、ここで一つ、問題になってくることがある。

 私が使える殺傷方法は、【搾取】だけだ。

 そして、これ使ったら、死骸が残らない。


 そこで私が考えた活用方法。

 私の竜力に気がついて襲ってこようとするやつが遠目に確認できる。

 なんか顎の強そうな魚だ。


 ふっ、この距離から【搾取】を使い始めてやる。

 泳ぎはそんな速くないみたいだ。

 私に辿り着くことができずにギリギリまで吸い取られる運命となる。

 もちろん、『空間把握』があるから、逃げることはできない。


 こいつにも【苛虐】を使用。

 私の支配下に置く。

 仲良く並んでもらおう。


 幸い、私を襲ってくるやつに、高速で移動するようなやつはいなかった。

 そんなやつはきっと、年貢のやつの攻撃を浴びてお亡くなりになってしまったんだと思う。

 あはっ、速く泳ぐからいけないんだ、速く泳ぐから。


 つまり、いま私の周りに集まってるやつは、総じて泳ぎが遅いやつらだ。

 もっとも、私よりはだんぜん速く泳げるんだけど。


 いち、にい、さん……十二匹か。

 頑張ったな、私。

 はんぶん……いや、ちょっとだけ勢い余って殺しちゃったやつらもいたけど、このくらいも集められれば十分かな?


 では皆さんに命令です。

 「最後の一体になるまで戦ってくれ」と全員に伝える。

 海の怪物バトルロワイヤルだ。


 うん、皆んな頑張れ!

 私も頑張る。頑張って観戦するよ。


 そうそうに戦いが始まった。

 うん、皆んな必死だなあ。

 なんで私がこんなことさせているか?


〔一定の経験を得たことにより、レベルアップが起こりました〕


 ま、まさか。

 本当にこんなのでレベルアップするとは……。

 どういうことか、私の推測を説明しよう。


 私が支配しているやつら経由で、私に経験値的な何かが入っているんだと思う。

 いま乱闘しているあいつらが頑張ってくれるほど、何もしていないはずの私が潤うということだ。

 まあ、単純に【苛虐】を使い続けているおかげかもしれないけど。

 確か【搾取】を使い続けてレベルアップしたこともあったよな?


〔一定の経験を得たことにより、レベルアップが起こりました〕


 なんだろう。

 今までの上がらなさが嘘のように上がっていく。

 何か悪いことでも起こるんじゃないか?


 お、そろそろ大詰めだ。

 最後に残った二匹。

 えっ!?

 あのフタバスズキリュウもどきが残ってる。

 意外だな。中でも弱い方だったのに。


 それと対するやつは、なんかウツボっぽいなんかだ。それなのに、体長は私より長い。

 さあ、世紀の一戦。

 勝利の女神はどちらに微笑むのか!


 おっと、アナゴっぽいのしかける。

 え? ん? あ? アナゴ……? ウツボ……? まあ、どっちでもいいか。大して変わらん。

 フタバスズキリュウもどき、軽やかにかわす。これは美しい。

 フタバスズキリュウもどき、鮮やかに反撃。

 ウナギっぽいの、疲れが溜まっているのか? まともに攻撃を受けてしまう。これはたまらない。


 ハモっぽいの、これで終わってしまうのか? いや、まだ終わらない! フタバスズキリュウもどきの首筋めがけて噛みつき攻撃!!

 フタバスズキリュウもどき、さすがにこれは避けられな……なんと!? こんな動きが許されるのだろうか? あり得ない……! 非常にトリッキーな挙動で攻撃を躱したぁああ!! すかさず止めの一撃っ!


 ウミヘビっほいの、もはやなす術なし。海底に力尽きる。

 勝者、フタバスズキリュウもどきぃいいい!!


 ……私、本当に、何やってんだ?

 まあいい、忘れよう。


 最後に残ったのは、意外や意外。あのフタバスズキリュウもどきだ。

 ステータスを確認すれば、レベルが十くらい上がってる。


 生き残ったところ悪いんだが、最後に私と戦ってもらおう。


 「かかってこい」と命令を出す。

 すると、先手必勝とばかりに、今までで一番速い動きで私に攻撃をしかけてきた。


 【搾取】を使用。

 さっきまでの激闘が嘘のように、フタバスズキリュウもどきは海に溶けていく。

 む、虚しすぎる。


 いやあ、ちょっとした憂さ晴らしとついでに【苛虐】の性能実験でもしようかな? と思ったんだけど、こんな結果になるとは。


 私の目の前には死骸が血を撒き散らした状態で、原型をとどめずに散乱している。


 気持ち悪い。

 胃はすっからかんだけど吐き気がしてきた。


 そんなときだ。

 私は私の身体に違和感を受けた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ