表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/80

こいつは私の敵だったのか

 目を覚ます。

 けっこう久しぶりにエネルギーがゼロになって意識を失った気がする。


 く、あの巨大ザメ。

 私がもう瀕死の重体だったというのに容赦なく……。

 これは許すまじ。

 あいつころす。

 『空間把握』を使ってあいつと同じくらいの反応を探す。


 ひー、ふー、みー……うわ、『空間把握』で感知できる範囲で六つあるよ。

 一つずつ潰していくしかないか?

 いや、【搾取】があったな。

 あいつの姿を『空間把握』で感じ取れる反応に重ね合わせる。

 これでいけるか?


 こいつじゃない、こいつは違う、こいつでもない、あっ、こいつだ。

 問題なく【搾取】が発動した。

 まだ『空間把握』の圏内にいて良かった。


 私に姿を見せた時点で、死を免れないと知るんだ!


 まあ、『空間把握』を使える範囲から出られたらもう無理だけど。

 それか、物凄いスピードで動いてるとか?

 まあ、今回はいけたからいいか。


 もうこれで一安心だ。

 サメについては心配いらない。

 『空間把握』で確認するあたり、私に向かってくる反応もなくなっているようだし、これなら落ち着くことができる。


 さて、落ち着いたところで、私自身に向かって『判別分析』を使ってみる。



〈ステータス〉

 妖魔Lv:94

 フェイスライム

 ENE:1/1

 STA:2/2



 ……おいいっ!?

 なんでこいつのレベルがこんなに高くなってるんだ!?

 もともとレベルが上がりやすかったのか?


 そういえば……そういえばだ。

 最近、私のレベルの上がりが悪いような気がしていたんだ。

 ……まさか、こいつのせいじゃないよな?


 なんで今、こいつのステータスを見たかというと、こいつがあの私の傷口から出てきた黒い液体じゃないかと思ったからだ。

 でも、ステータスを見ただけじゃよくわからない。


 そもそも、なんでこいつは、レベルがこんなに高いのにエネルギーとスタミナをこれしか持っていないのか。

 私はステータス自体がステータス自体が偽物という説を推そう。

 でもこれが性格なら、なんか妖魔って感じのところから、魔力とかが異常なくらい高そうな気がするんだよなあ。


 とにかく、信頼なくしてこいつとの共生は無理だ。

 速やかに排除させてもらおう。

 寄生生物を除去するスキルが欲し……あれ? あんまりそんな、いらない気がしてきた。


 むむ。

 なんかおかしいな。

 私って、こうと決めたらなにかどうしようもない理由でもない限り、そんなに考えを変えないタイプだったと思う。

 でも、今までに二回。ただなんとなくで寄生生物を除去するスキルの取得を取りやめてる。

 これはさすがにおかしくないか?


 ……そうだな。

 やっぱりスキルをとろう。

 気分なんかは無視だ。

 絶対あの黒いドロドロに私の考えが干渉されている。


〔龍種権限発動。プログラムを取得中……〕


 あっ、やってしまった。

 途轍もない後悔が私を襲う。

 でもどうだ?

 この感情も、あの黒いドロドロのせいだと思えば、なんとかこらえられる。


〔スキル『寄生体駆除』の取得に失敗しました〕


 失敗したか……。

 劣化版で良かった。

 良かった? 良くないんじゃないのか?

 何か本格的に私自身が信じられなくなってくる。


〔取得した断片データを再構成……〕


 あの黒いドロドロ。

 あれには、思考とかそういうのに干渉するスキルでもあるのだろうか。

 それとも、スキル以前にそういう力を持った生き物だったのか。

 もう、私……どうすればいい……?


〔スキル『寄生体追放』を取得しました〕


 何も考えず、取得してすぐにこのスキルを使う。

 きっとこれでいいはずだ。


 使ってすぐに変化は起こった。

 けれどそれは、あの黒いドロドロが私の体外に出てくるとか、そういった物理的なものではない。

 私に対して正体不明の痛みが走ったのだ。


 理由はなんとなく理解できる。

 おそらくはあの黒いドロドロの攻撃だろう。それしか考えられない。

 私はその痛みに耐える。


 身体が痛い。というよりは、脳に直接、痛みという感覚を植えつけられているような感覚だ。

 どう足掻こうと痛みから逃れるすべはない。


 けれど、痛みに対して屈するような私ではない。

 このくらいならまだ耐え切ることができる。


 スキルを使ってるのに、なんで出てこないんだ?

 私に対しての抵抗もあることから、黒いドロドロも何かに耐えているのだろうか。

 お互いに根比べか。

 いいだろう。受けて立とう。


 そうして、何も起こらないまま数十分という短いようで長い時間は過ぎた。

 あっ、私をカジカジしたサメが死んだ。

 意外と遅かったな。


 うーん、進展なし。

 途中で、竜力をこのスキルに使ってみたんだけど、気絶しそうなくらいの痛みになったからやめておいた。

 というか、私の感じている痛みが最初より弱くなったような気がするんだけど、気がするだけだろうか?

 黒いドロドロが弱ってくれた証なら嬉しいんだけど。

 早いところ、このスキルには名前通りの結果を出してもらいたいものだ。


 どうしよう。

 痛みといっても、今はもう動けないほどではない。

 たぶん、動きに支障とかもでないと思う。


 そうしたら、ここにとどまっているのもなんか時間がもったいない気がしてきた。

 ちょっと泳ごうかな?


 海水の中をスイスイと泳ぐ。

 そう、スイスイとだ。

 今なら二十五メートルなんて目じゃないぜっ!

 い、いや、泳げなかったわけじゃないんだよ?

 ……少なくとも一回は、端から端まで辿り着いてみせたさ。


 改めてスキルのすごさを実感する私。

 もう、なんか凄いとしか感想が言えない。

 最初からスキルがとれれば、苦労して練習する必要だってなかった。

 今度からは努力する前に龍種権限を試してみるべきか。


 そうだ。

 『水中遊泳』に竜力を使ってみるとどうなるのだろう?

 できるかな? できるかな?

 結果、無理だった。

 竜力で私の泳ぎは上手くならなかった。


 だいたいこのくらい泳げれば、地形は突破できるかな。

 あとは一直線に陸地に向かうだけだ。

 通り道にいるでっかい反応は蹴散らしていこう。


 ひときわ大きい反応もあったけど、【搾取】さえあればなんとかなると思う。

 今までなんとかなってきたし。

 まあ、私は勝ち逃げだけは絶対に許さない。

 負けたとしても、地の果て――海の果てまでも追い、リベンジを成し遂げる覚悟だ。


 痛みは今でも続いている。

 この痛み、陸に上がるまでにはなくなってるだろうか?

 竜力を少し流すと、痛みも少し強くなる。

 私は常に戦っている。

 今回はどうなるのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ