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一方的な戦い

 あ、危ないっ!?

 【搾取】を発動して竜力を吸収。その後、私を衝撃が貫いた。

 その後、辺りを轟音が響く。


 がはっ、ごほっ……。

 口から血を吐き出す。なんとかエネルギーは残っているが、瀕死の重体。次の一撃は耐えられない。


 どうしてこうなったか?

 それにはまず、時間を戻して説明しよう。


 事の起こりはわからない。けれど、私がわかることの中で一番初めに起こったことから説明する。


 遡ること数日前、おそらく私が最初のあの寄生虫に悪戦苦闘を強いられていたときだ。

 御館様と平氏のやつは戦っていた。

 いいや、おそらくそれはおおよそ戦いとは呼べるようなものではなかったはずだ。


 考えてみてほしい。私が『虚時間幽閉』を解除して、最初にいた場所。

 ――雲の上だ。

 そう、御館様は雲の上から、平氏のやつに攻撃をしかけていたのだ。


 私が落ちてきたときに見た穴。その全てが、御館様の開けたものだと推測できる。


 次に、平氏のやつの攻撃手段。これはさっき攻撃を受けたときに確信した。衝撃波だ。


 予備動作――竜力の高まりを感じられたことでなんとか減衰には成功したが、酷い有様だと思う。いま減衰に成功したことだってほとんど偶然だ。やれと言われたって、五回に一回くらいしかできない。


 不可視、感じるより速い、終わった後の轟音。この三つがあれば、これはけっこう絞るのは簡単なはずだ。


 他にも、平氏の主な攻撃手段は衝撃波と考えていい理由はある。

 だって衝撃波は、遠くまで届かないんだ。

 いや、竜力とかそういうのを全力で込めればどうかわからないが、多分そんな遠くまでは届かないはず。

 おそらくそのときは羽化する前だし、いまよりは弱かったはずだし。


 従って平氏は、遥か上空から攻撃をしかけていた御館様に反撃ができなかったんじゃないかと結論づける。


 次に御館様の攻撃手段だが、熱線的な何かだ。そうじゃないと、あの穴はあんな風にはならないはず……。

 あの穴の縁を眺めながら、改めて考えて、私はようやくこれが御館様の攻撃だったのではないかと悟ったのだ。


 御館様が平氏のやつを追い立てていたちょうどそのとき、私に『虚時間幽閉』が送られてきた。いろいろあって、調子に乗った私は、まんまと対象を御館様にして使ってしまったのだ。

 その結果、平氏のやつを助けたことになった。


 私が落ちてきたすぐそばで、平氏のやつが繭か蛹がよくわかんない感じで羽化しようとしていたのは、御館様の攻撃が一段落してようやく落ち着けたからなんじゃないかと考える。

 無用心だと思うのは私だけか?


 ともかく、『虚時間幽閉』や、前に送られてきた『狂気化』。この二つから考えられること――

 享楽か何かかは知らないが、龍同士を戦わせたいやつがいるということだ。

 これがわかって、非常に業腹だった。


 それがわかった私だが、まず平氏から逃げるだけじゃまずいと思った。なるべく早くこの干渉してきたやつをどうにかするために、まずは平氏を滅ぼすことにしたのだ。


 これじゃあ、掌の上で転がっているようだが、いまはそれ以外に進める道はない。それに知りたいんだ。御館様がどうして平氏のやつを倒そうとしたのかを……。あれはきっと、用意周到なやり方だった。

 だからきっと、そこに強くなるためのヒントがあるはず!


 どこの誰かは知らないが、せいぜい、いまは笑っているんだ。いつか寝首を掻いてやる。


 そうと決めた私は、さっそく行動にでた。平氏のやつに、『空間把握』を利用した【搾取】をかけ続けたのだ。だから近ごろは、対象一体にしか使用できない遠距離で吸い取る方法はやっていなかった。

 そんなことをしたおかげで、【搾取】の扱いが上手くなったのは言うまでもないことだろう。


 『空間把握』で認識したやつ。そいつの姿がわかっていれば、【搾取】は使えるんだ。

 使い勝手が良すぎるだろう?

 まあ、今回の場合は一つずば抜けて大きな反応があったからわかっただけだ。そうじゃなきゃ、紛れてわからなくなっていたところだった。


 以上で回想は終わりだ。

 どうやら私は運が()らしい。


 だって何故なら、傷が見る見るうちに治っていくからだ。エネルギーが瞬く間に回復していくからだ。


 これは、スキル『不死身』の効果?

 半分はそうだろう。だけど半分は違う。

 【搾取】での吸収分だ……!


 そうか、もうここまで来ていたのか……。

 【搾取】には使えば使うほど、吸収量が増していく凶悪さがある。まあ、私が慣れたか慣れないかなのだが。

 平氏のやつは、かなり吸いずらい部類だったが、もう十分に慣れたようだ。


 明確なことは言えないけれど。この慣れ、全体的な慣れと、個体別の慣れがあるような気がする。


 それはいいとして、私は衝撃波を受けた分も完全に回復したのだ。


 それでも私には、あの衝撃波があるから勝機がない?

 いや、それは違うさ。

 私は【搾取】で竜力も、魔力も吸収しているんだ。

 果たして、さっきの威力の一撃が、今のあいつに放てるのだろうか――


 平氏のやつは、前足の鎌を構えながら、私を睨みつける。

 その闘志のある目は、私を同格と認めているようで心地よい。

 どうやら、接近戦で私を倒そうというわけなのだ。


 ――答えは否のようだ。


 思えば私は、本当に運が良い。


 『空間把握』を手に入れたとき、あいつが範囲内にいてくれた。


 【搾取】の新しい使い方に気がつかなければ、さっきの一撃で意識を失っていた。その間に、『空間把握』の範囲外に逃げ出されていたら、私にはどうしようもなかった。


 私の居場所に気がついて、襲ってくるのがもう少し早ければ、やはり私は対応できなかった。


 私があの竜な虫との戦いの後で、『空間把握』使うのがもう少し遅ければ、あの衝撃波は完全な不意打ちになっていただろう。


 ここまで追い詰められたのは、度重なる幸運のおかげだ。


 これを逃せばもう二度と機会は巡ってこない。


 鎌を使い、私へと攻撃が繰り出される。

 思ったほどは速くない。速くはないが、私が受ければ確実にエネルギーがゼロになりそうだ。


 全力で避ける。

 衝撃が身体をつんざいた。私は数十メートル吹き飛ぶ。

 直撃こそは避けたものの、余波みたいなものを受けてしまったのだ。ずいぶんと滅茶苦茶だ。


 いくら身体が傷つこうとも、【搾取】は止めない。勝機は捨てない。


 スキルの効果で回復がなされる。

 地面に着く頃には、もうほとんどの傷が塞がった。


 追撃はくる。

 必死に即死だけは防いだ。

 普通なら致命傷といって良いほどのダメージを受けた。


 全身が痛い。

 今度は簡単には回復しない。

 痛みで動けなくなる。


 次の一撃。

 確実に仕留めようと、ゆっくりと誤差のないように狙いを定めながら、鎌が振り下ろされる。


 私は避けられない。

 いくら回復力があったって、この痛みをすぐに回復することはできかった。

 だから、私は避けられない。普通なら、だ。


 スキル『強制行動』。

 無理な身体の使用と引き換えに、エネルギーが減少する。


 エネルギーの減少分。それは回復量と相殺。いや、回復量の方が若干少ないか……。

 そうして私は、無理と思われた回避に成功した。


 平氏のやつの驚愕を感じ取る。これを躱した事実が、よほどに意外だったのだろう。

 その隙に、『強制行動』を解除して、エネルギーの回復に努める。


 あの床や壁をやすやすと切り裂く鎌は本当に危険だ。

 この平氏って、接近戦向けなのだろうか?


 明らかに私の分が悪い。

 でも――


 平氏のやつの動きが目に見えて悪くなってきているのがわかる。

 最初は掠っていた鎌も、段々と、私へ届かなくなってくる。

 交互に繰り返しくる鎌を躱す。

 動きが単調だ。もうほとんど、余力がないからだろう。


 すると突然。動きが今までと比べて速くなってきた。

 どんどん、どんどん加速していく。

 単調のままではあるが、速度だけが急激に上がっていく。全てがそこに注ぎ込まれるかのように。


 いくら単調だとはいえ、この速度はまずい。一瞬たりとも油断できない状態になる。

 壁を裂き、床を抉りながら迫ってくる鎌を躱す。


 何回も繰り返し躱す。ギリギリでも躱し続ける。幾らでも、幾らでも、躱す、躱す、躱す。

 私はその一撃も躱せたと思った。そのはずだった。けれど違った。

 それは囮の一撃だ。本命が私に迫る。


 思わぬタイミングでのフェイントだ。

 本当に思わぬだ。だけれども、今まで攻撃のどれよりも、思いがこもっていたのはこの一撃ではないだろうか?


 気付いたときにはもう遅い。

 その一撃を身体に受ける。

 なんとか即死だけは免れた。

 けれど、脚や翼が千切れている。もう動ける状態ではない。

 吹き飛んで、ボロボロになった。


 回復する猶予はもはや、私にはない。

 止めの鎌が私の目前に迫る。

 私はもう目を閉じた。


 ――けれど私の意識は続いたまま……。


 ゆっくりと目を開ける。

 そうすればおのずと、数センチメートル手前で、私の命を刈り取らんとするばかりの鎌が目に入る。

 しかし、それは止まっていた。


〔条件が満たされました。スキル《龍纏・甲》が解放されます〕


 終わった、のか?

 【搾取】の反応はない。

 おそらくあいつは死んだものと考えてもいいだろう。


 見事だった――甲龍アインビルティス。

 お前のことは忘れない。忘れられないだろう。


 今はやけに虚しい気分だ。

 本当に、今回は運が良かっただけだった。

 もう少し遅ければ、確実に私は負けていたはずだ。


 グラっと地面が揺れる。

 て、え? あ!

 これだけ暴れてくれればこうなるに決まってるじゃないか!?

 穴だらけだし。


 わわっ! じ、地面が崩れる!?

 あ、ちょ、む、無理!!


 私は勝利の余韻に浸ることなく、地面の崩壊にまきこまれるのだった。

 一回なんか保存に失敗して心が折れそうになりました。

 戦闘はあっさりしすぎな感じがしなくもありませんが、どうでしたかね?

 長くしたくなかったんです。まあ、ダイレクトに保存失敗のダメージを受けたことも一因でしょうけど……。


 ということで、地下編終わりですかね。


 追記。

 ちょっと編集しました。でも、そんなに真面目にやってないんで、ほんの少しだけ読みやすくなった程度だと思います。

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