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害虫には注意

 やばかった……。

 何がやばかったって?

 いや、うん。


 私はカミキリムシのときと同じように大きな反応を見つけて、そいつを倒しに来たのだ。

 これで確か四体目になる。

 これまでが簡単に倒せたため、私は油断していた。

 そしたらどうだ?

 黒い艶を持ったアレがいたのだ。


 そいつは、カサカサッと音を立てながら、私の方へと寄ってきたのだ。

 気持ち悪い意外の何者でもなかった。


 仕方がないから、私は遠距離で【搾取】を使用。

 そいつはあっさりと死んださ。そう、普通の虫と同じくらいあっさりと。


 勿論、私はそこで、いくら気持ち悪くても、こんなやつ、私の敵じゃなかったなと思ったさ。

 そこまでは良かった。


 そしたら、そいつの小型版が大量に、そいつの腹を食い破って出てきたのだ。

 見ている私としては、生きる心地がしなかった。


 しばらくたってそいつらは、あろうことか私を目がけて走り出してきたのだ。

 ちょっと私は目を疑った。


 小さな黒光りする虫の集団が、カサカサと音を立てながら私に迫ってくる。

 私に逃げる以外の選択肢はなかった。


 【搾取】は遠距離では一匹ずつにしか使えない。

 だから、私はその虫を一匹ずつ倒しながら走って逃げたのだ。


 けどどうだ、その虫は、軽く百匹を超えていたのだ。

 一匹いたら、百匹はいるのか!?

 本当に止めてほしい。


 そこで私は大きな反応だった割に、あっさりと死んだ理由を理解したのだ。

 そうだ、小さな反応が寄り集まって大きな反応に思えただけなのだ。


 泣きたい気持ちを抑えながら、必死に私は逃げていった。

 生まれて初めて、後先考えずに全力で走った。今までで一番速かったんだと思う。


 それだのにだ!

 自然はときに理不尽だ。

 あいつらは私に軽々とついてこれるようだったのだ。

 本当に理不尽だ。


 私は龍種。

 それなりに足が早い、と思っている。腐りやすいかは知らないが。

 まあいい。

 少なくとも私は、あのカミキリムシには余裕で追いつけたはずだ。

 そんな私なのに、戦々恐々としながらそいつらから逃げ続けた。


 私が撲滅するのが早いか、あいつらが追いつくのが早いか。

 それなりのペースで、撲滅できていたので、あ、これなら大丈夫だなと途中から思ったりもした。

 けれど、私はやってしまったのだ。

 行き止まりにきてしまった。


 言うまでもなく、私は大冒険を繰り広げないためのスキル『空間把握』を持っている。

 なのにだ。突然のことで頭がいっぱいになっていたのか、使うのを忘れていたのだ。


 これを使って、最初のこいつらの親だっただろうあいつを見つけたというのにだ。

 我ながら、馬鹿らしすぎる。


 私は自分の行動を反省しながら、こいつらの撲滅にいそしんだ。

 それでもまだ数十匹いる。


 私に一斉に襲いかかってくる姿。本当に悪夢のようだとしか思えない。

 本格的に詰んだかと思った。


 だが、そこで私はそこで賭にでたのだ。

 一か八か、振り返ってこいつらを飛び越える。

 幸いにして、数歩の助走をとるくらいの間隔なら、こいつらとの距離を考えて、まだあったのだ。


 そして即決した私は、そいつらの上を飛び越えようとしたのだ。

 思いっきりジャンプして、ついでに翼なんかも広げてみて。


 しかし、一つ私は忘れていたことがあった。

 こいつら、飛べるのだ。

 あんまり速くないらしいが。

 とにかく、飛んで私を襲ってきたのだ。


 そのときが一番、まずいと思った。

 私は本当に泣きそうだった。

 それてでも私はあきらめずに撲滅を続けた


 そのおかげかどうかは知らないが、こいつらが、私に接触することはなかったのだ。

 奇跡だったと思う。


 それからは簡単だった。

 『空間把握』で、今度こそ行き止まりにたどりつかないようにしながら、こいつらを撲滅した。

 本当に強敵だった。


 それで今からだが、後始末に向かおうと思う。死骸を潰しに行ってくるのだ。

 なんでそんなことするのかと言われれば、なんとなくでとしか答えられない。


 サクッと潰していく。

 もはや生前に感じた気持ち悪さなんてないか。

 ふっふっふっ、私の恨みを全力で込めて潰していくのだ。


 逃げてきた道の死骸の処理をしながら戻っていたら、唐突にあのレベルアップのときや、龍種権限のときと同じような声が聞こえてきた。


〔カルマが一定の値に達しました。査定を実行中……〕


 驚くことなかれ、カルマがまた百にたどりついたのだ。

 早すぎやしないだろうか?


〔完了。カルマを清算して、罪科系スキルを取得します〕


 今度は何だろう?

 どうせなら、あの平氏のやつを倒せるくらいのなんかすごいスキルが欲しい。

 まあ、【搾取】の性能だって高いんだ。期待はできるだろう。


〔スキル【加虐】を取得しました〕


 ぐほっ、げほっ、げほっ……。

 【加虐】って……。

 カルマの意味って、確か業って感じだよな?

 私の行いのせいなのか?

 思えば、【搾取】っていうのも大概だったかもしれない。


 私はどこへ向かおうとしているんだ……?


 まあ、それを考えるのは後だ。とりあえず、スキル覧を確認してみよう。



〈スキル〉

 『不死身』『魂魄攻撃無効』『燃焼攻撃無効』『体内寄生』『拘束効果緩和』『虚時間幽閉』『判別分析』『狂気化』『強制行動』『空間把握』


1.

2.

3.【加虐】

4.

5.【搾取】



 えっと……三番目?

 これって、五から段々番号が少なくなる順にとっていく感じじゃないの?


 ……もしかして、これって、どこにどんな名前のスキルがくるか決まっているのか?

 それで、あの査定でどこにどんなスキルを送りつけるのかを決めるとか?

 駄目だよくわからん。


 ていうか……【加虐】って、もしかして……私が死骸を潰してたからかなのか。

 いや、でも【加虐】って言うほどじゃないと思うんだけどなあ……。


 【搾取】といい、【加虐】といい、私をスキルだけ見たら、ずいぶん酷いやつだな。

 これ系統って、いいことしたら貰えるみたいなやつとかあるのかな。

 できればそっちの方を貰いたい。


 ちょっとだけ、私の行動を改めてみようと思った瞬間だった。

 思っただけなんだけどね。


 私は死骸潰しを続けながら、次の標的を探す。このスキルを試してみるためにだ。

 字面からして、明らかに相手がいない限り発動しない気がする。

 【搾取】のように、なにかが併合されたわけでもないし、性能が完全に未知だ。


 ついにあの親の死骸までたどりついた。

 ずいぶん追いかけっこをしたものだ。


 さて、次の目標は見つかった。

 【加虐】。どんな効果だろうか。

 嫌すぎますよね……。黒いアレ。

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