蝗害、やばい
【搾取】発動。
バッタ一体を干からびさせる。大して数秒もかからないうちに倒せた。
ふふ、どうせただの虫けらだ。
ん? 耳障りな高い音が聞こえるきがする。なんだろ、気のせいか。
そう思った数秒後だ。
バッタが一斉に騒音をたてながら飛び立った。
私に向かって。
え、はやっ!
なんで私の場所がそんなすぐにわかるんだよ!
全部いっきに向かってきやがって……。
【搾取】を使い全力で撃ち落とす。
相手はかなりの数だ。さすがに一体一体倒していてはどうしようもない。
だからって、これ以外に方法はない。
くっ、間に合わない。
いくら数を減らそうとも、撲滅するには至らない。
膨大な数でもって、私に殺到してくる。
〈ステータス〉
昆虫Lv:3
プレイグ・グラスホッパー
ENE:6/6
STA:7/9
このバッタ自身は大したことない。
でもいかんせん数が……!
【搾取】は多数相手には向かないことが実感できる。
いや、私が始めたことだ。気づかれる前にある程度倒せるかと思ったんだが。
こうなってしまったら仕方ない。
一匹一匹と撃ち落としていく。
せいぜい焼け石に水と言ったところだろうか? それでも、塵も積もればとも言うし、私にはこうするしかない。
あ、撃ち漏らした。
バッタの一体が私を襲う。
私にとりついて……かじりついてくる。
なめるな!
私を食べるなんて、後にも先にも御館様くらいだけだ。
エネルギーを吸い取れば、一瞬で枯れ果てる。
触れていた方があまり集中力を使わずに吸収が可能かもしれない。
まあ、いまはそんなことを考えてはいられない状況。
次々とバッタ達を干からびさせる。
地面に落ちた死骸も、もう相当な数になっている。
それでもまだ十分の一くらいしか減っていない。いや、それくらい減っていたらいい方だろう。
私はついにバッタの群れに囲まれてしまった。
時間の問題だとも思っていたが、意外と早かった。
バッタ達は私に向けて一斉に襲ってくる。
【搾取】を全力で発動。数多くを倒していくが、それでもキリがない。
私を埋め尽くすようにバッタはたかってくるのだ。
逃げ場なんかもうない。
全方向がバッタで埋め尽くされている。
私が甘く見すぎたというわけか。
さすがにこれは馬鹿だったかな……。
この量ならみただけでまずいと思うはずだ。この量なら――ん? なんか増えてね……?
最初に見たときもかなりの数はいたはずだった。それでも百数十程度。
けど、いまはどうだ?
この空間を埋め尽くすほどに飛び回るバッタたち、軽く千は越えている。
私は一秒で一体くらいのペースでバッタを倒せるから……やはり計算が合わない。
増援が来ているのか?
私に何匹かのバッタ達がとりついてきた。すかさず【搾取】を使用。
こ、これは!? 触れている状態なら二体以上同時に使える。
これでかじられる心配はなくなったか。
く……っ、それでもどこか疲れる気がする。意識が若干遠のいた。乱用は禁物か。
〔一定の経験を得たことにより、レベルアップしました〕
ここでレベルアップか……。
もうバッタを殺した数は百を越えているはずなのに……。やけに遅い。
あまりうまみがないということか。
絶えることなくバッタの襲撃は続く。戦いは数なのか……?
兄者に嘆きたくなる気持ちもわかる気がする。
いくら強からろうと単機は単機。分裂でもしない限り対応できる限界がある。
あれ? 分裂……。
……なにかわかりそうだ。
バッタのステータスをかたっぱしから開いていく。
地味に疲れるが今は我慢だ。
やはりそうか……。
バッタの大半のレベルが一。そして、スタミナ、エネルギーの値がどれも減っていない。
十分の一、いや、二十分の一くらいの確率でレベルが二以上、スタミナの値が若干減っているやつが見つかるのだ。
数量の比的にも、そのレベルが二以上のやつが元々いたバッタで、レベルが一のやつが増援と考えていいだろう。
だが、どこから増援はくる? 飛び回っているバッタ達は分裂する様子なんかないし。……いや、まてよ?
ぐあ……っ!?
背中に痛みが走った。
くそっ、バッタめ! 噛みつきやがって。
付近の撲滅をおろそかにした私がいけないだけだが。
【搾取】を使い噛み付いてきたやつを殺す。
あれっ?
なんか意識が遠のいてきた。
まずい、毒でも持っていたのか。
だめだ。もう直ぐなにかわかるきがするんだ。いま、気を失うわけには……。
頑張って踏み止まろうとするが、さらに奴らは私に噛みつこうとしてくる。
複数のバッタが同時に私にふれてくる。【搾取】でその全てを倒した。
あ……っ。
さらに意識が遠くなった……。
たけど、駄目だ。こんなところで気を失ってしまえば。
気力だけで押し止まろうとする。
〔条件を満たしました。スキル『強制行動』を取得します〕
新しいスキルが獲得できた。
意識はギリギリで保つことに成功している。
その代わりにエネルギーを確認すれば、少しずつだが、無視できないペースで減っているのがわかる。
原因は毒ではなくこのスキルか。
なんにせよ、早くしなくちゃいけない。
私は増援が来ている方向にバッタを屠りながら向かう。
そこを潰さなくちゃ駄目だ。
なりふり構わずバッタの群れの中を突き進む。
何匹も私に触れてくるが、【搾取】を使って振り切っていく。
頼れるのは僅かに聞こえる高い音、バッタの羽音に隠れて聞こえずらいが、私は龍種だ!
その高い張力で、このくらい聞き分けられなくってどうするっ!?
私はようやくそいつを見つけた。
ずいぶんと手間をかけさせてもらったぜ?
こいつがこのバッタたちの元凶。
〈ステータス〉
昆虫Lv:32
プレイグ・グラスホッパー
ENE:63/63
STA:63/63
あれ? なんか意外に普通だった。というか弱い。
私はてっきり虫王がくるものとばかり思っていた。
でも、どうやってるかは知らないが、バッタがどんどんと複製されている。
きっとスキル的な何かだろう。
まあいい、サクッとやっちゃおう。
【搾取】発動。
抵抗なく死んだ。
あっけなさすぎるよ。
こいつがバッタたちの統率をとっていたはずだ。私の位置を把握して他の虫たちに命令を与えていた。
私が聞いた高い音は超音波みたいななにか。きっと私の位置が一瞬でばれたのはそれのせいだ。超音波が聞こえるとか……龍種って、どれだけ音域広いんだよ?
さて、これでバッタの群れの攻撃も……あれ? 止まない。私にたかってくるままだ。
リーダーだったバッタの死骸に目をやる。えっと……なんか黒いドロドロが出てきた。まだ終わってないようだ。
書けた……!