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脱出のとき

 さてと、まずはステータスから確認しよう。



〈ステータス〉

 龍種Lv:26

 パラサイト・アンデットドラゴン

 ENE:105/105

 STA:89/92

 SAN:108/213

 MAG:63/63

 DRA:137/137

 KAR:011/100



 え!? レベル上がりすぎじゃね?

 そう思いながらステータスを眺める。

 でも、あの御館様のレベルからすればこれが妥当なのだろうか。


 あれ? な、なんだと!?

 そうしていたら、私は認めがたい真実に気がついてしまった。


 エネルギーと……スタミナの上限が……あの寄生虫の同レベルより……低い。


 なんということだ。

 納得いかない。

 確かに龍種権限は卑怯だと思うが、どこかでもあの寄生虫に劣っているとは……。


 まあ、文句を言っていたってもうどうしようもない。

 あきらめるほかないんだが……それでも……。


 うん、忘れよう。

 私はあの憎き寄生虫のステータスなんて覚えていなかった。

 覚えていなかったから、比べようがないんだ。


 これでよし! って、うわ!?

 足元が崩れてバランスがくずれた。

 そんなことをしているうちに、御館様の死骸の崩壊が始まったのだ。


 えっと、これは虚時間に放り出される感じになるのだろうか。

 え? でも、虚時間って、どんな空間よ。

 いま、息ができているということは空気はあるんだろうけど……。


 御館様の身体が完全に崩れてしまった。

 ついに虚時間なところを垣間見ることができる。


 そこは、真っ暗。

 何もない空間だ。

 何もないというのは齟齬があった。

 ただ、真っ黒な闇の中を白い寄生虫が漂っている。

 けれど、その寄生虫も何も動く気配がない。おそらく、最後の御館様の攻撃でやられてしまったのだろう。


 生きているのは、私一人。

 勝利したのは、私一人。


 言葉にならない感情。

 ある種の虚無感、ある種の達成感、ある種の切なさが込み上げてくるのをこらえる。


 もうここにいる必要はない。

 私は私に「ネバネバー」と、『虚時間幽閉』をかける。


 ただ、このとき私は大切なことを忘れていた。

 『虚時間幽閉』を解除した先。

 そこは空だった。


 前をみれば青い。

 地平線を眺めようとする。

 けれど地平線は見えなかった。

 なぜなら、大地と天の境をそう呼ぶのだからだ。

 言っちゃえば、雲平線が見えた。


 前世を含めて、初めて生で見た。

 できれば初めては自分の力で飛んで、見た方が良かった。

 いや、今はそうなことを考えている場合しゃない。


 なんでこんな高度を飛んでたんだ御館様ぁあああー!!

 今は亡きかの竜に文句を言ったってしかたないかもしれないが。


 落ちる。ただ落ちる。

 せめてもの抵抗に、私の小さい翼を広げる。

 うん、なにも変わらない……。


 雲へと突入をする。

 今さらなんだが、ものすごく寒い。

 空に放り出される驚きが優って、そっちに気づくのが遅くなった。


 雲の中で、ペシペシと頻繁に何かが私に当たる。

 痛い。地味にいたい。そして冷たい。

 エネルギーを見てしまえば、減っていっていることがわかる。


 まさか落下ダメージの前にエネルギーがゼロになるのか?

 そんなことを思ったが、その前に雲を抜けられた。


 ああ、地平線が見える! あっちには水平線が……!

 私にできることといったら現実逃避くらいしかない。


 それにしても、スカイダイビング初体験だ。

 まさかパラシュートなしでこんなことをするとは夢にも思わなかった。


 うーん、よく考えれば虫王の後あたりで想像できることかもしれなかったが、せめてもう少し低いと思っていたんだ。


 いやあ、いい景色だなあ……。

 あっちには緑が見える。

 ん? 緑!? 緑だ!!


 生まれて初めては緑を見ることができた。

 状況が状況だというのに、テンションが上がってしまう。

 食糧難に怯えなくてすむ!


 他にも、いろいろと大地の様子を確認する。

 崖の切り立った海辺。

 あっちには山脈だろうか。

 私の生まれた荒野は……地平線の見えるそっちか。


 改めて見回してみて、人工物の気配はない。道路が作られている様子もないし、建物なんかも一切ない。船一そう浮かんでいない。

 人間、もしくは知的生命体の存在は確認できなかった。

 いないのだろうか?


 まあ、まだ決めつけるのは早計だ。

 今後に注意していきたい。


 そして、私が落ちていくであろう地点。

 そこには残念ながら緑はなかった。


 目を凝らして地面の様子を確認する。

 私の目はその全容を捉えることができた。龍種の視力は異常かもしれない。

 それとも、空飛ぶ動物ならば、これが普通なのだろうか?


 なんというか……。

 そこは荒地だった。

 ゴツゴツした岩場だ。そのはずだ。

 だけど何故か、所々に地下深くに続きそうな穴が開いていた。


 これを荒地と呼ばずして、なんと呼ぶ。

 荒野、から体内、の次は荒地なのか?

 つくづく私はまともな場所で過ごせないのだろうか。

 いや、まあ、普通に森とかに行ったら、生態系ブレイクする気満々なんだけど……。


 それにしても、どうしたらあんな穴が開いてしまうのだろう。

 自然的なもの? 何かが吹き上げてきた?

 いや、ないな。かなりの数が開いているんだ。こんな数の穴が開く現象なんて聞いたことがない。


 近づいたからわかるんだが、一つ一つの穴が、同じ大きさ、私が通ってもかなり余裕がありだろう大きさだ。

 やはり自然にこんな穴が開くわけがない。


 一定の大きさ、ということは、なにかが同じ方法で穴を開けたのだろう。

 こんなにいっぱい。


 地面に穴を開けるためのスキルがあるのだろうか?

 果たしてあったとしても、なにか需要は……。

 まあ、分からなきゃわからないでいいのだが。


 ん? というか、私の落ちる地点って、その穴の一つじゃないか!?

 くっ、普通の地面に降り立って、速やかに森に移動するつもりだったのに……。


 地面はもうかなり近い。だからこそ、私自身が落ちる場所をある程度正確に予測することができた。

 その答えがこれだったのだ。


 必死に翼を操って、落ちる場所を変えようとする。

 けれど、結果から言おう。穴は思ったよりも大きかった。


 もうすでに落下地点は変えられない。

 私はその穴へと突入した。


 光がすぐに届かなくなる。けれどその瞬間に目が慣れる。

 龍種の目は性能がおかしいようだ。


 穴は随分と深いようだが、すぐに地面が見えてくる。

 少しだけ水であることを期待した私は愚かだった。


 地面へと衝突。

 私は痛みを感じる前に意識を失った。

 荒野→体内→×荒地 ○地底

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