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第1節

第1節



「しおり、今から部活?」

「ああ、今日から新入生も参加できるんだ……」

「頑張ってね、しおりなら5月の新人戦も出れるんじゃない?」

「まあ出れたらいいな……」

授業が終わり2人は話しながら帰り支度を済ませ、席を立つ

「じゃあまた明日!バイバイ!」

「またな……」

別れ際渚は手を振り詩織を見送り、詩織は軽く微笑み手を上げグラウンドへと向かって行く


2人が通う讃城(さんじょう)女子高等学校は充実した設備と新しい校舎の女子高で、地元の学生だけでなく、他県からの生徒も寮を利用して在学している人気校である。


「……おっと、ボール?」

「ごめーん!こっちパース!」

「あ、はい……!」

渚は校門に向かい歩いており、ふと物音が聞こえ足元を見るとサッカーボールが転がって来る。まだ肌寒い季節にも関わらず半袖のシャツにハーフパンツを着て少しクセのある髪をヘアバンドで押さえているいかにもな部活少女が低い身長を補うように両手を振って声を上げている。何となくの雰囲気で恐らく上級生だろうかと思い渚はそう返事して、渚はボールの横に左足を踏み込みーーー

「っと……」

「わっ…と、凄い!ナイスパス!経験者?新入生⁉︎」

「ええ……っ⁉︎」

軽く体を反らし右足を軽く振り抜くと、ボールは小さな放物線を描き、ふたつバウンドした後およそ15m離れた少女の足元に吸い込まれ、少女はトラップすると目をキラキラ輝かせながら渚に駆け寄り、渚は困惑した様子で少女を見ており

「ゴメンゴメン、私は高垣 莉子、キミは?」

「私は笠原 渚です……」

「ナギちゃん!ちょっとサッカー部見に来てよ〜!」

「え、いや私……」

「おい莉子、嫌がってるだろ」

「ええ〜だってさ響、このコ上手そうだもん!」

莉子は渚の手をギュッと掴み引っ張り、渚はズルズルと引きずられていくが、莉子とは少し違う、黒の長袖のインナーと半袖のシャツとハーフパンツを着た背の高い少女が莉子の肩を掴み呆れたような様子でそう言う

背の高い少女は、短めの髪にやや鋭い目付きと大人びた雰囲気を持っており

「ごめんなさい、今サッカー部人少なくて躍起になっててね……」

「あ、いえ…実は友人がサッカー部に入るので少し気になって……近衛って子です」

「そう、近衛さんの友達なんだ」

「はい……」

背の高い少女、響は軽く苦笑いしながら詫びて、渚は響に友人の話をして

「折角だし見学していってよ!行こう!」

「は、はい……」

「悪いね、強引で……」

莉子は渚の肩に手を置きグラウンドに向かい、響は苦笑いを浮かべながら隣を歩き

「ナギちゃんポジションどこが得意?」

「主にやってたのはトップ下です」

「……」

初対面とは思えないくらい仲良さげに話す渚と莉子の隣を歩きながら響は渚の言葉に少し疑問を抱いており

「ほら、ここだよここ!我らが讃城女子高の負の遺産!人工芝のサッカーグラウンド!」

「やめないかその言い方は……」

「負の遺産、あはは……」

莉子は過去に理事長の独断で作られ全く活躍していないサッカー専用グラウンドを指差し渚にそう言い、響は腰に手を当て困った表情を見せ、渚は苦笑いして

「トウカ!新入生連れて来たよー!」

「えっ……⁉︎」

「悪い冬華、莉子が新入生にちょっかい掛けててな……こら莉子……」

3人はグラウンドに入り、莉子は渚の手を取りそう言いながらストレッチ中の部員達の元に行き、渚は慌てた様子で響は2人に着いて行き

「新入生?よろしくね、私は志水冬華、サッカー部のキャプテンです」

「え、いや……」

冬華と呼ばれる綺麗な女性は立ち上がると3人の元に来てマイペースな様子で微笑み、渚は戸惑い思わず小指で頬を掻いて

「ええっと、私は……」

「大丈夫、私達がちゃんと教えるからね?」

「そうじゃなくて……」

「冬華、彼女の話を聞こう」

アタフタする渚とは対照的に、冬華は微笑みながらそう言い、見かねた響が冬華の肩に手を置き

「ごめんなさい、私足を怪我してて、激しい運動は出来ないんです……」

「っ……」

渚は苦笑いしながらそう言うが、何となく察していた響以外の2人は表情を曇らせ

「ナギちゃん、ごめん…私無理矢理……」

「あっいえ、私は気にしては……」

莉子は渚の言葉に相当な罪悪感を感じているのか涙を浮かべ、渚は莉子を宥め

「えっと、嫌な思いさせて悪かった……」

「私も、つい嬉しくて……」

「……やります、マネージャーで良いならやらせて下さい、実を言うとまだサッカーには未練あって……どんな形であれ関われるのなら良いかな、と……」

響と冬華は少し目を伏せて謝り、渚は何だか申し訳なく感じ、突拍子もなく発言し

「本当に良いの?嬉しいけどゆっくり考えていいんだよ」

「そうです、無理に決める必要は……」

響と冬華は渚の急な決断に戸惑いながらそう言い

「やります、これも何かの縁だと思いますから」

渚は何処か心のモヤモヤが晴れたような明るい表情で微笑み


こんな形で、私の青春は始まった。


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