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1-1「コンテナは、生きている」


俺の名前はケント。冒険者を目指している。

正確にはスペース冒険者だ。


「作業者ケント、15分後に入港予定の輸送艦のコンテナ搬出準備を開始せよ。」


上司のドワーフ――脳機能拡張技術で生まれた技術系人種だ。

俺は上司からの作業指示に重い腰を上げる。

俺は今スペース冒険者ギルドで下働きをしている。仕事内容はコンテナオペレータだ。入港した船舶からステーションのコンテナ搬入口までコンテナを移動させる仕事だ。アームの操作は難しいが、ちゃんと仕事をしていればお給料はもらえるので不満はあまりない。


「はい!ボス!」


4年間の下働きの日々、薄給でかつかつの生活。ナチュラルへの差別。辛かった。本当につらかった。

しかし、そんな日々とも明日でおさらばだ。明日、俺は冒険者育成専門学校、通称【アカデミー】に入学する。そしてスペース冒険者として一発当ててこの生活をひっくり返してやるのだ!


「うひひ、うひひひ。」

「気持ち悪い笑い方ね。」

「やぁ、アリシア。だって明日からアカデミーに通えるんだぜ!気分も上がるぜ!!」

「まあ気持ちはわからないでもないけどね。あたしもパパとお祝いしたし。」

「そうだろう。そうだろう。」


俺に話しかけてきたのは幼馴染のアリシアだ。同じコロニー【ハビタットステーション18】に生まれ育った。彼女もアカデミーの新入生で選択は俺と同じ戦闘科だ。俺と違い、数学や機械いじりが得意なくせになぜか戦闘科を受験した変人である。


「へへへ、やっぱりアカデミーの戦闘科ってモテるのかなぁ」

「はぁ、あんたはいつまでもバカねぇ。宇宙線に頭やられてるんじゃないの?」

「うるせー」


そんな話をしていると本日最後の入港予定船から入電が入る。


「こちら貨物船ノストロモ号。ハビタットステーション18、入港許可願います。」

「こちらハビタットステーション18管制室、入港申請を受信しました。審査完了まで相対位置を維持して待機してください。」


貨物船がステーションの入港審査に入った。俺はこの審査の待ち時間が嫌いだ。審査はやたらと時間がかかることがあり、ひどい時には入港まで1か月も待ったこともあった。だが今回はただの貨物船だからすぐに承認が下りるだろう。


「こちらハビタットステーション18管制室、入港審査完了。相対運動量400メガニュートン秒で5番ポートにアプローチしてください。」

「こちらノストロモ号、了解、5番ポートにアプローチする。」


どうやら民間の貨物船らしい。エアロックの小窓から覗く船体には巨大なコンテナが見える。これは大仕事になりそうだ。これだけコンテナが大きいと2本以上のアームを接続し、息を合わせて搬入する必要があるのだ。


「こちらハビタットステーション18管制室、ドッキングを確認。これよりコンテナ搬入作業に入る。ロックを解除せよ。」

「こちらノストロモ号、了解、ロックを解除する。」


ガコン、、、


「さぁて、アリシア。準備はいいか? 1番アーム起動!」

「はいはい。 2番アーム起動!」


二本のアームがコンテナに伸びていき、アームエンドインジケータの赤い光がコンテナを磁気吸着したことを知らせる。巨大なコンテナに対して髪の毛の様に細く見えるアームはゆっくりと、そして着実にコンテナを引きはがしてゆく。100tを優に超える重量物、それを操作するのは俺の手の中の小さなレバー一つだ。繊細な力加減でアームを制御する感覚はまるで外科医の手術だ。


「アリシア、お前のもってるほうから入れるから回転させるぞ。」

「OK。回転方向とタイミング任せるわ。」

「了解、3カウントで右回転だ。3、2、1、回転。」


完璧だ。アリシアと俺は幼馴染というだけあってハビタットステーション18宇宙港で一番のバディコンテナオペレータだ。十数年同じ町で育ち、4年はバディーとして働いているのでやることなすことすべてがわかるのだ。

今回の搬入もいつも通り完璧な連携で終わるはずだった。


ゴン、、ゴン、、


「アリシア、今の聞いたか?」

「聞こえたわ。どっちかのアームの異常かしら?」


ゴン、、、、ゴン、、ゴン、、、、、、、ゴン、、


「いや、違うな。音がだんだん大きくなっている。それにステータスモニタを見ろ。」

「アーム負荷が音と連動している。つまり、コンテナの中身が揺れているってこと?そんなことありえるの?」


ありえない。

宇宙貨物の輸送において固定は最も重要な項目である。ほんの少しの重心のずれが大きな航路誤差を引き起こすからだ。固定されていない貨物が入港審査を通過するはずがない。


「ありえないな、そんな貨物載せてたら1光年すらできないはずだし。」

「それにコンテナの振動がどんどん大きくなっているし固定されていない貨物が暴れまわっているっていう感じでもないわね。なんか生きてるみたい。」

「非気密コンテナに?生物は入ってないだろ。」


生物的な振動、真空状態での生存。俺とアリシアの脳内に恐ろしい可能性が浮かぶ。


「ねぇケント、そんなことないわよね?」


アリシアの声が震えている。俺の額にも嫌な汗が浮かんでいる。


「宇宙生物ーーかもしれない。」






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