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想いはいつも不揃い。  作者: 春紗
第一章 猫宮高校編

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第六話「鈍感」な君へ

昼休み。

教室の片隅。三毛野は机に突っ伏していた。

頭の中には、昨日の敗北がリピート再生中。

――ジョーズ。

――堕ちない黒川。

――ビビる自分。

――デートお決まりの4つが通じない。

思い出すたびに、心臓の奥がヒュッとなる。

まるでサメに噛まれたようなショックだった。

三毛野「、、うわぁぁぁ、オレ、ダッサ、、」

顔を伏せたまま呻く。

もうどうしようもなく、自分の情けなさが押し寄せてくる。

黒川、かっこよかったな、、怖がらないで映画見て、微動だにしないし。

あれ、絶対サメより強い。

というか、俺より強い。

、、でも、なんか惚れ直した。いや、最初から惚れてるんだけど。

__一心に見るその横顔が好き。

「おい、三毛野?死んでんるのか」

どん、と背中を叩かれた。

声の主は友人A。

筋肉だけが信頼できる脳筋。脳内はスポ根とタンパク質で構成されている。

その後ろに、にやけ顔のBとC。

「おい、聞いてんのか?」

「死んでるぞ、顔が灰色」

「マジでサメに食われたんじゃね?」

「、、おまえら、うるさいぃ」

三毛野は机から顔を上げ、目の下にクマを作った顔でつぶやいた。

「なんでサメの事しってんの」

「お前がさっきからサメ、サメ呟いてるから」

on、心の声が漏れていたとは、、

「、、、反省会、する」

「はぁ?」

「昨日のこと。反省会する。作戦会議も」

「昨日?部活サボったのか?」

「なんだよ、ナンパでも失敗したのか?」

「お、彼女できた?え、マジで?お前に?」

三人の言葉に、三毛野は額に手を当てて溜息をついた。

こいつらに言うのは気が引けていたがつい口に出していた。

「、、ちがう。その、、ちょっと、デート、、っぽいものに行って、全滅した」

「おおおおお!?」

「誰だよ!?」

「まさかの!?」

「お前が!?サメと?なんで!?」

机がどよめいた。

てか、一人変なこと言ってるし。

慌てて手を振る。

「違う違う!“もしも”だから!? “もしも”デートに行ったとしたらって話!」

「でも今、行ったって言ったよね?」

「言ってない!」

「言ったよね?」

「言ってない!」

「言ったなー!」

「あーはいはい、“もしも”ね、“もしも”デート行ってサメに負けたんだな、わかるわー」

くそ、バカトリオめ。

「サメとデートなんて変わってるな」

「サメとじゃないよ!!」

さっきから友人Aはズレてるは!!

Bがにやにや笑いながら言った。

「友人Aよ、こいつは人間とだよ」

「そうなのか」

サメなわけ無いでしょうが!

__さすがの三毛野さんでも人間以外には欲情しないわ

「で、“もしも”そのデートが失敗だったとしたら、どういう反省点があるわけ?」

三毛野は真面目な顔になる。

肘をついて、軽く拳で顎を支えた。

「、、まず、“相手の趣味をリサーチすべき”だった」

「へぇー。おまえにしてはまともな意見」

「で、何見たん?」

「アクション。サメのやつ」

「ジョーズかよ!恋愛映画とかじゃねえの?」

「そう思ってたよ!恋愛映画=デートって定番だと。でも興味ないって言われて、、」

その瞬間、思い出し笑いがこみ上げる。

いや、笑えない。

でも笑うしかない。

「今までの彼女たちにはそれで通用してたからな笑」

「馬鹿だな」

「ごもっとも」

「みんなが同じなんて思うからだろ」

友人Aの言葉が特に刺さる。

「興味がないから見ようとは思わないって言われて、あ、これは心臓にトドメ刺されたなって、、」

「強っ、、振られてやんの笑」

「ていうかそれ言われて生きてるお前も強い」

「で、サメ映画でどうだった?」

「オレが一番ビビってた」

「え。」

「だってでっかいサメがドーン!って!“ギャー”って!」

「女子よりビビる男子」

「お前、、いつもと逆じゃねぇかじゃねぇか(笑)」

「笑ってるの見えてるよ!」

三毛野は机をバンと叩いた。

「そりゃビビるよ!音すげぇし!横で後輩がポップコーン食ってるのに、俺だけ”ヒッ!”って!」

「後輩?」

三人の顔が同時にぴくりと動く。

「、、え、後輩?誰?」

「まさかの三角関係?」

「おいおいおい、裏切りの男だな」

「違う!違う!後輩は付き添い!いや、ほら、仲いいから!」

――説明しても余計に誤解される。

ああ、なんで言っちゃった。

「ま、もしも、な?」

「“もしも”デートで、“もしも”後輩が一緒で、“もしも”サメ映画で、、、“もしも”ビビって、“もしも”空回りしたんだな?」

「、、、お前ら、死ぬほど性格悪いな」

笑いが止まらない三人を尻目に、三毛野は天井を見上げた。

__でも、ほんと。空振りしまくりだったし。

心の中ではちゃんと反省していた。俺はすごくダサいと思うたびに、、、

黒川ちゃん、ほんとにかっこよかったな。そう思う。

スカートじゃなくてパンツスタイルで、さらっと歩いて、財布出して自分で払って。

奢るよって言ったのに、軽くかわされて。ド迫力でも淡々と見て。

別に当たり前の行動だと思うだろう。俺も思ってるし。

でも、ずっとドキドキしてた。あれは、惚れ直しちゃう。いや、惚れてるんだけど。もっと、その横顔が見たい。もっといたい。もっと、、、

「三毛野顔紅いぞ」

「、、、次は、もうちょっとスマートにいく///」

「ほう、“次”ね?」

Bがニヤリと笑う。

「で、“もしも”次に誘うならどう誘うわけ?」

「うーん、、、デートしよう♡、とか?」

「おえ」

「きもい」

「即通報」

「お前ら容赦なさすぎだろ!!」

「てかさ、お前ほんとに恋愛経験あんの?」

「あるわ!彼女だって何人もいたし」

「浮気野郎」

「浮気なんて一度もしたことないよ!三毛野さんは一途なの」

__来るもの拒まずさるもの追わず、なだけで!

「いやー、三毛野は顔は、顔は、いいけど、恋愛レベルは中学生で止まってそうだな」

「なんで二回も言った!」

――そんな中。

教室の前を、後輩が一人で通りかかった。

移動教室らしい。手にノートを持って、ぼんやり歩いている。

Bがニヤリと笑う。

「おーい後輩くーん!」

「、、、なんですか」

「お、タイミングいいな!今“もしも”の話してんだよ」

「“もしも”女の子をデートに誘うなら、どんな風に言えばいいと思う?」

後輩はぴたりと足を止めた。

ゆっくり三毛野を見て、ため息をつく。

「、、、三毛野さん、また“もしも”ですか」

「え、う、うん、“もしも”だよ!」

「“もしも”なら、そうですね」

後輩は少しだけ考えてから、ぼそっと言った。

「相手が行きたい場所に、理由つけて誘えばいいんじゃないですか。デートって言うより、“行くついでに”みたいな感じで」

「「「おおおぉぉ」」」

「めっちゃまともだ」

「クソ野郎との差がえぐい」

「さすが後輩、経験者だな」

「残念ながら経験ありません」

即答。

けど、顔に眉間のシワがよっていた。

__彼女いたことないんだな

と誰もが思ってしまうほど。

そして、教室のドアに手をかける前にもう一言。

「あと、無理してカッコつけないほうがいいです」

「!?」

バタン。

「ダセェってよ」

「だってよ」

「でもなぁぁ」

__好きなこの前じゃカッコつけたいよ。

そう思いながら机に突っ伏していたら、

「三毛野、課題出して」

「あっ、ごめん」

クラスメートの女の子に呼び止められた。

「あれ、どこやったけ、」

__机、鞄、、

「えぇぇ!!ない」

「何やってんだよ」

「あ、お前のノート借りっぱなしだった」

「ちょっと!!」

友人Aは急いで自分のクラスに取りに戻った。

「ごめんね」

「早く出してよね」

「はぁい」

この子は小さいながらも怒ったら怖い。

「ね、ちょっと聞いてもいい?」

「いいけど」

友人Bはにこやかに言った。

「”もしも”付き合ってない男女が一緒に出かけるならどこがいいと思う?」

「まじかよ」

__この人はどんだけ他の人を巻き込むわけ

「えっ、二人っきり!?」

「う〜ん、まぁそんな感じ」

「コンビニかな、、、?」

「コンビニ??」

「私だって二人っきりで出かけたことないし、よくわかんない男女ってそんな感じじゃない、、、」

「そんな感じなの!?」

今まで三毛野と出かけてきた女の子は下心しかなく、誰でもOKな三毛野だから、である。

「大人数なら別だけど」

「そうなちゃうよね、、、」

「なんの会話これ、、」

__巻き込んでごめんね

「恋愛相談強い?」

「無理だけど、、」

「恋バナとか」

「興味ない」

友人B、諦めずに聞いてるけど。頼る女の子を間違ってるよ。、、、鈍感だからこの子。

クラスメートであるこの子も、イケメン三毛野さんに惚れなかった子。

黒川ちゃんと、鈍感なところが同じだからいいアイディアないか、と思ったけど

__だめだこれりゃ

「お前のノート持ってきたぞ」

「ありがと、、っていうか早く返してよね」

「わりぃ」

クラスメートにノートを渡しておわろうとしたが、、

「そういえば」

友人Bが引き止めるように

「”もし”後輩と出かけるならどうする」

「後輩?」

__え、言っちゃうの!?

自分の恋バナをクラスメートに伝えてしまうのか!恋バナを続けるのか!?

と焦ったが。

「やっぱ、映画かな」

「他には」

「マックとか」

「面倒な事に答えてくれてありがとな」

「どういたしまして」

そう言い帰っていった。

「二人っきりと、後輩じゃ違うもんなのか」

「事情が違うからな」

「それに」

友人Bはクラスメートを見ながら、

「うちの後輩がお世話になってるしな」

と言った。

「そうだったか」

「委員会とかでな」

気になるようで気にしない会話があるが、、

「誰も彼も否定だったけど良かったな」

その言葉が嬉しかった。

三毛野は頭を抱えた。

「あぁぁぁぁ!!!」

__間違ってなかった。

映画を選んだこと間違ったかと思った。変だったかなって。不安になってしまった。でもクラスメートのお陰で肯定感が上がった。

「本人によるけどな」

三人の笑い声が響く。

昼休みの教室に、男子高校生たちのどうしようもない会話が飛び交う。

だけどその中で――

三毛野の心の奥には、まだ燃えるものがあった。

__次こそは。黒川ちゃんが楽しめるようにもっと知ろう。

そう心に誓いながら、彼の恋は、今日も空回りしながら続く。

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