表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想いはいつも不揃い。  作者: 春紗
第一章 猫宮高校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

第五話「鈍感」な君へ

バレー部の練習は佳境。

スパイク音、ボールを拾う音、笛の合図。

三毛野は主将らしく、的確な指示を飛ばしていた。

「よし!今日は声が出てる!その調子!」

「サーブ、もっと思い切って打っていいよ!」

その姿は、普段教室で見せるチャラついた態度とはまるで違う。

部員たちも尊敬しているし、ファンクラブができるのも納得だろう。

ただ――休憩時間になると。

「、、ふぅ」

汗を拭きながら、つい天井を見上げる。

頭に浮かぶのは、窓際で本を読む黒川の横顔だった。

__これが終わったらデート、、、!おしゃれなカフェとか、映画とか、、いや、絶対『、、、』で終わるんだろうけどさ!

そんな妄想をしているのを、同期の友人に見抜かれる。

「おい三毛野。さっきから顔がニヤけてるぞ」

「へっ!?ニヤけてない!真剣に戦術考えてるの!」

「いや絶対なんか考えてただろ。、、後輩んとこの教室行ってるのも、そういうの関係してんのか?」

「ち、ちがうよ!俺はな!あれだよ!後輩の指導!生活態度の指導!先輩として!」

「、、部活でも指導してやれよ」

「うっ、、」

友人の冷たい目線に、思わず視線を逸らす。

そのとき――後輩が、ひょっこり差し入れのスポドリを持ってきた。

「これ。余ったんでどうぞ」

「おっ、サンキュー!、、あれ?お前、今日はやけに静かだな?」

「え、いや、、いつも通りですけど」

「うそつけぇ!クラスで見たぞ俺!女子に『一緒に帰ろぉ』とか言われて普通にテンション高く返事してただろ!」

「そ、それは、、場のノリで、、」

「ほぉ〜? じゃあ俺の前では猫かぶりしてんだなぁ!」

「違います!ただ絡んでくると、ツッコミ疲れるだけです!」

「おいコラ!」

横で聞いていた友人たちは爆笑。

「ははっ、三毛野、完全に後輩になめられてんな」

「ちげーし!俺はこうやって可愛がってやってんの!」

「それ可愛がりっていうか、ただのいじりだろ」

「だ、だから!違うって!」

そう言いつつも、内心は焦っていた。

__、、やべ、これ以上黒川ちゃんの教室行くと、ほんとに『後輩狙い』って誤解されかねねぇ、、

でも行かないと彼女に会えないし、、どうすりゃいいんだ俺、、、

笛の音が鳴る。再び練習が始まる。

主将の顔に戻り、声を張り上げる。

けれどその胸の奥では、やっぱり同じ言葉が響いていた。

早くデートしたい!一緒に映画なんて最高!!←後輩もいるけどね。

映画デートと言えばお決まり4つがあるから今日で落としちゃうぞ!!!!

___



バレー部の練習を終えた三毛野は、家に帰るや否やソワソワしていた。

「よし、髪型チェック!服装チェック!、

、笑顔の角度チェック!」

鏡の前であれやこれやとポーズを決める。

まるでアイドルの撮影会。

いや、もしかしたら今日こそ「黒川ちゃん」との本格的なデート。そう信じて疑わなかったのだ。

、、たとえ間に後輩がいることを、無意識にスルーしていたとしても。


___


映画館前。


「お待たせ~!、、って、え?」

そこに立っていた黒川は、淡いブルーのシャツに黒のパンツ。

シンプルで、けれどやけに大人びて見える装いだった。

「、、」

無表情。

いつも通り。

だが、その姿を見た瞬間。

__ズボ〜ん

この男数々のデートをしてきた中で女の子達の定番かな!と何かよくわからん基本があった。

__女の子は皆初デートはスカートなのかと思ってた

内心の叫びを押し殺しながら、満面の笑みで手を振る。

「黒川ちゃん、今日も最高に可愛いね!」

「、、(軽く会釈)」

「、、はいはい、先輩、騒がないでください」

既にツッコミ役は定位置。


___


チケット売り場。ポップコーン。


①財布

「俺が奢るからさ!今日は特別に!」

懐から財布を取り出す。

女の子に財布を出させる隙を与えない!これぞ王子様ムーブ。

「、、」

黒川は淡々と自分の分を購入していた。

「あっ、、」

「、、(自分のも普通に買ってる)」

「ちょ、ちょっと!ここは俺が、、」

「、、必要ない」

「が、がーん!!」

財布を掲げたまま、銅像のように固まる。

「(、、先輩、カッコつける前に現実を見ましょうね)」

「キャラメル味食べる?」

「、、塩」

「コンソメで」

見事に意見が割れた。

三毛野、キャラメル。黒川、塩。後輩、コンソメ。分け合おう!カップルサイズぅ!とかは無かった、、


___


映画スタート。


②ドキドキ

選ばれた映画は――まさかの「シャーク」。

「えぇ!? アクション!? サメ!?」

←当日まで何を見るかホウレンソウされていなかった男。

『、、、言ってなかったけ』

←ホウレンソウしたか覚えてない後輩。

女の子といえば恋愛映画。ホラー映画。興味がないとか言っていたけど結局観るかなと、そう信じて疑わなかった三毛野は、膝から崩れ落ちそうになる。

黒川「、、(無表情でポップコーンを食べる)」

後輩「、、(普通に見てる)」

「(ま、まぁ、これも一種のデート、、だし!?)」

必死に自分を励ます。

「席ここですよ」

そこは一番うしろの真ん中だった。背の高い2人からしたらちょうどよい場所だ。

後輩、黒川、三毛野。

__これ、黒川ちゃんを端っこにしたら独り占めできたんじゃ、、


___


サメ、登場。


③お決まり展開

暗い海のシーン。

静寂のあと、突然――

「ガバァァァッ!!」

巨大なサメが飛び出した。

「うわあああああああああああ!?」

小声だけど心の声が漏れまくっていた。

__心臓突き破るかと思った、、、

驚きのあまりポップコーンを隣へと零してしまった。

映画館中が一瞬で静まる。

「、、」

無表情のまま、自分の膝に落ちたポップコーンを一粒拾う。

「うるさいですよ。迷惑です」

「ご、ごめん、、!でもサメがぁ、、サメがぁぁ!!」

心臓が口から飛び出そうな勢い。

黒川は相変わらずの真顔でスクリーンを凝視。

微動だにしない。

「(くっ、、!スゴいこの肝の据わり方、、!!)」


___


上映中後半。


④手を繋ごう作戦

三毛野は震える手を、そっと黒川の手に近づける。

__今だ、、サメの恐怖で自然と手を繋ぐ流れ、、!!

あと数センチで指先が触れる――その瞬間。

「、、(ポップコーンを拾って手を動かす)」

スッ、、とかわされる。

「(あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)」

心臓が二度目のサメショックを受けて爆発寸前。

「、、(全部見てた)」

『三毛野さん、哀れすぎる、、』


___


クライマックス。


映画はどんどん盛り上がる。

サメが船を襲い、人々が逃げ惑う。

「、、」

最後まで無表情でスクリーンを見つめる。

『黒川ちゃん、、強い、、強すぎる、、!!』

『いや普通に映画見てるだけです』

一方で三毛野は、最後までサメに飛び跳ね続けていた。

『ぎゃああ!』

『ひぃぃ』

『うわああああああ!』

声には出ていないが表情が騒がしかった。

もはや観客の子供よりうるさい。


___


映画館を出て。

外に出ると、もう夜の気配。

「はぁ、、はぁ、、俺、映画館で命を削った気がする、、」

「ホラー映画誘うくせにこれだとダメじゃないですか」

「ホラーは恋人マジックがあるの!!」

ホラーのドキドキが手を繋いだりして恋のドキドキに変わる!これだとホラーも無敵に!!

「、、面白かった」

「ですよね。迫力ありました」

淡々とした二人の会話を聞き、三毛野はがくりと膝をつく。

『なんか、、俺だけ、命の危険を感じてんだよ、、』

__デートの基本お決まり4つも効かなかったし、、

しょげていた。

しかし次の瞬間。

「、、また、面白いのがあったら行こ」

それだけを言い残し、彼女は歩き出す。

「えっ、、!? ま、また!?」

顔を真っ赤にしながら、慌てて後を追う。

「、、(ほんとにめんどくさい先輩だ)」


___


帰り道。


こんな時間に一人にはできないので皆で駅に向かっていた。

黒川は無表情。

後輩はクール。

そして三毛野は――

『デートだ、、!! これはもうデートだぁぁぁぁぁ!!』

心の中でだけ、大絶叫していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ