次元創世者アクセレイザー 序章1【綺麗な星々を見てると心に余裕が生まれるよね。】
私と、この物語の主人公の名前が同じなのは、この小説が私の妄想のなれの果てだからです。
【うわぁ・・・・・・綺麗だなぁ・・・・・・。】
宇宙の星達がまるで砂粒のように散らばり、恒星の放つ光で乱反射して輝いている。
まさに星の雲、星雲という表現方法は言い当て妙だと感心する。
それを眺めていたその存在は思わず声をあげた。
とはいっても、真空の宇宙空間で彼の声が誰かに聞こえる筈も無い。
というより、そこには『彼』以外の意思を持った存在がいなかった。
『彼』はこの宇宙が存在している場所、すなわち『次元空間』を創った者だ。
この宇宙自体の名前はまだない。
もし、この宇宙が意思を持っていたら名前を自分で付けさせようと彼は考えていたからである。
暫定的には『第三宇宙空間』と呼んでいた。
なぜかと聞かれたら、彼はこう答える。
『確認できる範囲で、三番目に誕生を確認できた宇宙だから』と。
ここで誤解の無いように説明すると、前の宇宙が滅んで今の宇宙が誕生したということではない。
次元を創ってしまった彼が、そこから誕生する瞬間を三番目に確認したということだ。
【さて・・・・・・こんなに熱かったら流石に生物は発生しないかな・・・・・・。】
と、誰も聴いている者も居ないのに再び声を発する彼。
一人暮らしが長くなると思った事を口に出してしまう癖が生まれる。
それと同様であった。
彼の言う通り、このあたりは彼の本来の常識では考えられないほどに熱い。
様々な恒星達が、炎を吹き出しているので彼の周囲は水ならばすぐに蒸発してしまうはずだ。
真空で重力の無い、放射能や量子が飛び交う宇宙に生命体の常識など通用しない。
生命体はおそらくこの星雲の光満ちる場所を、星雲の外から観測することしか出来ないのである。
そのことに彼自身が気付いているかどうかはともかく。
彼は目的もなくこの宇宙を漂っている訳ではない。
自分と意思の疎通が出来る生命体を探して旅をしているのである。
彼はとある次元が内包している宇宙にある地球に21歳まで居た。
彼自身はこの次元を出生地と云う意味で『バースプレイス次元』こと『BP次元』と後に呼称するようになった。
BP次元の中のBP宇宙のBP地球に居た彼は、日本に住む極普通のサラリーマンであった。
しかし、22歳の誕生日を半月後に控えたある日、彼は『次元の狭間』に墜ちた。
後々の彼の推論ではあるが、この次元の狭間は、とある次元空間と隣の次元空間との間にあるエネルギーに満ち溢れた空間であり、その向こうに別の次元空間があるようなものだという。
ブロック塀でわかりやすく例えてみる。
個々の四角いブロックが次元空間で、その間にあってブロックを固めているセメントが次元の狭間だと考えてみる。
彼は何かしらの理由でこのセメント部分に来てしまったということだ。
隣の次元までは、彼の居たBP宇宙よりはずっと広いであろう。
数億年か数兆年、いや、彼の感覚ではもっと永かったのかもしれない。
彼はそこで正体不明の様々なエネルギーや、それに伴う現象によって肉体が変性していった。
しかし、肉体が変性する度に発狂するほどの激痛や悪寒を覚えて苦境の中で精神が疲弊していく。
彼はその果てに、遂にある能力に覚醒した。
『次元創造』
その名の通り、新しい次元を創り出す能力である。
ブロック塀に例えるならば、新しいブロックを塀の側面か上に継ぎ足すようなモノだ。
この能力によって彼はこの次元空間を創り、その中に入った。
次元空間は何も無い『無』によって安定した状態だったが、そこに彼が入った際の影響でエネルギーが産まれ、幾つもの宇宙が誕生したのである。
そして、彼はその幾つもの誕生した宇宙の一つに居た。
狭間の苦痛から逃避した彼は、この宇宙の誕生の瞬間と成長の様子、星々や銀河、星雲の織り成す美しい光景を見て疲弊していた精神を回復させ、再び地球に居た頃の心を取り戻していた。
しかし人間の心や感情を取り戻した彼は、やがてある感情に苛まれる。
孤独
生物を逸脱して真空の宇宙に生身で存在している彼は、この宇宙で自分以外の生命体を発見出来ていなかった。
そこで彼は今、様々な星を巡って生命体を探している。
【誰か居ないか~。】
そして、後に彼はこの次元を『インフィニットディスティニー』と名付け、自分をこう称する。
『エル=グランド=インフィニットディスティニーメイカー=アクセレイザー』
彼はこの後、長ったらしい自分の名前を『エーア』と略称した。