第92話 頼れよ
一日目の文化祭も終わり、2日目に突入した
一日目の出し物での優秀賞は麗奈先輩達のクラスだった
2日目は色んな部活の人達の出し物もあるし
私達もそれなりにいい結果が出せればいいんだけど……
実は現在進行形で紅葉さんが行方不明になった
十中八九逃げたんだろうけど……
「あんんんんのやろう……見つけたらただじゃおかねぇ……」
隣にいる鬼の形相の一色ちゃんを誰か止めて欲しい
紅葉さんがこういうことするのは珍しいから
私もどこに逃げたとかは検討がつかない
屋上や体育館付近は探したけどいないし……
「あれ?無口のねーちゃんだ」
「ほんとだ!姉貴の友達!」
後ろから声をかけられて振り向くと
紅葉さんの弟二人が手を振っていた
久しぶりに会ったな……えっと……小太郎君に亮君…だったかな
「二人とも、久しぶり。お姉ちゃんに会いに来たの?」
「そうなんだ!姉貴の野郎、主役するって言ってたからさ、ビデオぐらい撮ってやらないとって思って!」
「無口のねーちゃん達こそ、ねーちゃんと一緒じゃないの?」
「あ〜…それがどこかに隠れてるらしくて……紅葉さんがこういう時どこに隠れるか分かる?」
二人とも目をぱちくりさせてお互いを見合い
「「それなら灯台下暗しだと思う」」と声を揃えた
身近な事柄に気づきづらいとかそういう奴だったかな
「ねーちゃん考えるの苦手だから、すぐ近くに隠れること多いんだよね」
「だから教室のロッカーとかにいるんじゃねーの?」
「よくそのことわざ知ってたね」
「姉貴が馬鹿すぎるからな」
「ねーちゃんの代わりに勉強頑張ってる」
な、なるほど……
「ロッカーは見てないな……ありがとう」
「あ、待って、金髪のねーちゃん」
私が話してる間に無言で行こうとしてる一色ちゃんを何故か止めた小太郎君
てこてこと近づいて、顔を指さす
「あ?んだよガキ、ウチら急いでんだ」
「最近よく遊びに来るねーちゃんだよね?ムスッてしてなきゃカッコイイのにって、いつもねーちゃん言ってたよ」
「…………うっせぇな、怒るなってことだろ?仕方ねえな」
それだけ言って一色ちゃんは教室に戻り
私も2人にありがとうとまた後でと伝えてから戻る
そして二人でロッカー開けると
居眠りしてる紅葉さんが出てきた
「ほわ!?見つかっちゃった!!?」
「ほんとにいやがった……おら、観念して出てこい」
「だってだってだってー!やっぱり無理だよぉ〜!」
「失敗しても、見た目がダサくても、全部ウチがカバーしてやるから、お前は自由にやればいいんだよ」
「……ほんと?」
「ズッ友なんだろ、頼れよ」
「…………うん、頑張ってみる」
なんだかいい雰囲気。これなら劇も上手く行けそう
数時間後
……劇が始まった
役になりきって、ボロボロの服を着た紅葉さんを顎で使ったり
「まだ埃がついてるけど?ほんっとに使えないわね!」
若干楽しさを覚えつつある、この嫌味な喋り方に
見てる雪乃も麗奈先輩達も驚きより笑いが勝ってるのが見えた
その後紅葉さんはドレスに着替え
王子役である一色ちゃんの元へ行く
2人とも格好が様になってて美しい
「そこの姫…俺と一緒に踊れ」
何故か台本にないオラオラ系王子になってる一色ちゃんは
ほぼ強引に紅葉さんとダンスを踊る
紅葉さんはおどおどしながらもその演技についていく
一通り劇が進み、最後ガラスの靴をはめるシーンが始まった
私はガヤっぽく「どーして私の足にハマらないの!?ムカつくー!」とかやりつつ場を温める
そしてようやく紅葉さんがガラスの靴をはめ
クライマックスがはじまる
「お前がシンデレラだったのか…この俺と結婚しろ」
「は、え、えっと……」
…………ん?はい喜んで!で終わりなはずだけど
もしかして紅葉さんセリフ飛んだ?
とその時
「嬉しくねえとは言わせねえぞ?もうお前は俺のもんだ」
一色ちゃんはそう言って紅葉さんに関節キスをした
後ろのクラスの女子達はキャー!と黄色い歓声をあげ
かくいう私も思わず舞い上がりそうになる
そしてそのまま幕を閉じた
「二人とも凄く良かったよ。特に一色ちゃんはね」
「おう、お前もノリノリだったな」
「そうかな?まあ楽しかったからね」
私と一色ちゃんが話してる間も
後ろでぼーっとしている紅葉さん
これは……落ちたな、多分
一色ちゃんも気づきそうなもんだけど
意外と平然としてる?
「最後のアドリブ凄かった。よく思いついたね」
「あー、まあカバーしようと思ったらいつの間にかな。抵抗ないって言われたし」
「紅葉さんもお疲れ様」
「ほえ?ふぁ、んん。」
寝起きみたいな反応しかできなくなっちゃった
あえてこのままにしとこう……
「そういやこれからクラス全員でお疲れ会するってよ。お前らも行くだろ?」
なにそれ聞いてない。「行くよ」
「んん……」
紅葉さん……これ一色ちゃんにバレるの時間の問題かな……




