第86話 集中出来ない
【愛華視点にようやく戻ります、ようやくすぎるだろ】
二先生と付き合って、もう2週間が経つ
これといった進捗はあんまりなく
かといってあまり関わると先生が危うい立場になりそうで
私はずっとモヤモヤしながら毎日を過ごしていた
放課後、帰るわけでもなく1人で黄昏てると
頭をなにか紙のようなものでポンと叩かれた
顔を上げると分厚い書類を持った先生だった
「放課後暇?」
「え?えぇ、一応」
「お前にプレゼント」
プレゼントと言われて急に渡された物は大量の書類だ
目を通すとまだ3年生の習ってない部分も入った
数学の問題集だった
「ほんとは全教科作りたかったけど、ふつーに時間足らんかったわ」
「いや、これがプレゼントとか、やなんですけど」
「彼女を思ってのプレゼントに嫌とか言うなよ〜」
そう言って先生は私の机の反対側に座る
「え、というか、なんですかこれ」
「お前、唐鏡の青葉大学受けるかもしれないんだろ?入試の時に出てた過去問題掘り下げてきた」
受けるとはまだ決めたわけじゃないけど…
正直、私も受けることになるだろうとは思っていた
先生がせっかく用意してくれたし、チャレンジしてみようかな
「……本当は遠距離になるから引き止めるべきなんだけどよ、お前の夢が優先だからな」
先生は少し寂しそうに頬杖をつく
確かに、県外だからまた引っ越すわけになるのか
……私の夢か
「私、青葉大学の教授に目指そうかなって思います」
「おあ?また急だな」
「……先生が出来なかった夢を、私が代わりに叶えたいんです」
「大きく出たねぇ、一筋縄じゃ行かんと思うぞ?」
「……それを1番傍で支えてくれる人が目の前にいますので」
書類に目を通したままその言葉をポロってから
チラッと先生の顔色を伺うと
少しだけ顔赤くなってるのが分かる
しかしチラ見したのがバレて
頭をわしゃわしゃ掴まれる
「そーゆーのいいから、まあやりたいなら応援するぞ」
「そうなったら…迎えに行きますからね」
「たはは、お前なら本当にやりそうでこえぇよ。そん時は養ってくれよ〜」
「相変わらず台無しにするの上手いですね」
そんな雑談をしながら
私は出された宿題を順調に解いていく
ただ1年先に習う問題もあるから
そこは二先生が丁寧に教えてくれる
この人に勉強を教わること自体は慣れてるはずなのに
2人きりという状況が特別に感じて
すこし集中出来ない
この人シャツの第1ボタンいつもとめないから
胸元が見えそうで見えないのが視界に映って更に集中出来ない
「そんなにチラチラ見て〜意外とムッツリか?」
「なっ、ち、違います。気づいたなら防御もっと固めてください」
「たはは、お前もそーゆーのあるんだなぁ」
からかわれながらも私は先生の服装を整えて
ようやく集中出来る環境になった
「マジで奥さんみてぇだなぁ〜」と笑う
確かに、同居とかしたらいつもこんなことしそう
……………………
「行ってらっしゃい……あなた…………とか言うことになるんですかね」
「……おま、それはダメだろ……」
「それだと先生が夫になるし……翠…っていつか呼ぶんですかね」
「待って、からかったの謝るからそれ以上やめて」
「フフ、そうなるように、私も頑張りますね、翠」
私がわざとらしい笑顔を向けると
「…………参りました」とようやく降参してくれて
集中して勉強出来るようになった
でもこの時間が、たまらなく幸せだった




