第75話 大切な人!
二人三脚が終わったあとは借り物競争だ
私は出る予定ないけど、これは雪乃が出る競技だ
私は吸入薬や絆創膏、『頑張れ』と書かれたうちわを用意してスタンバイする
するとそれを見兼ねた紅葉さんが若干引きつった笑顔で様子を見に来る
「二人三脚1位おめでと〜って……愛華ちゃん…なにしてるの?」
「雪乃が出るから、スタンバってる」
「保健係とかいるからその辺の道具はいらないんじゃないかな?」
「私が行く。死んでも行く」
「愛華ちゃんって雪乃ちゃんのことになると変になるよね…あたしも手伝おっかな」
そう言って紅葉さんは私が持ってた半分を持って
ビデオカメラを用意してくれる
正直紅葉さんに変人扱いされるのは癪だけど
今はそんなことどうでもいいか
雪乃が準備運動を軽くしてる間
近くで保健室の先生が入念に状態を確認してくれている
「ほんっとーに!!大丈夫なんでしょうね?」
「大丈夫だって五反田先生」
「貴方ねぇ、私がど、れ、だ、け、心配してるのか分かってないでしょう?」
「雪乃、成長した姿を皆に見せたいの。これも先生がいつも診てくれるおかげだよ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない……はぁ、悪くなったらすぐに言いなさいね?」
「うん、行ってきます」
確かに、あの様子じゃ私の出番は速攻で駆けつけるくらいかもしれない
雪乃が私達のことに気づいて
輝いた笑顔で手を振ってくれる
あまりテンションが上がることがない雪乃が
あんなにはしゃいでるのは初めて見るので
お姉ちゃんは涙で見えなくなりそうです
「愛華ちゃん!始まるよ!涙拭って!!」
紅葉さんの言葉にハッとして
直ぐに涙を拭う
雪乃の走りはポテポテという効果音が鳴るんじゃないかというくらい
可愛らしく一生懸命走っている
お題を見た雪乃は真っ先に1年のテントに行くと
流ちゃんと凪ちゃんを引っ張り出す
すると今度は私と目が合って
私の方へ駆けつけてきている
あぁ、雪乃が私に向かって…走ってる……!!
「愛華ちゃん!多分あれ愛華ちゃんが欲しいんじゃないの!?」
感動しすぎている私をよそに
座り込んでる私を何とか立たせようとしてる紅葉さん
あの二人はともかく私まで?と思ったけど
「お姉ちゃん来て!」と言われ
真っ先に雪乃についていく
「足速…」と紅葉さんの独り言が聞こえた気がするけど
そんなのはお構い無しに4人でゴールをした
ちゃんとゴールした喜びで私は雪乃にハグをする
凪ちゃんも流ちゃんも嬉しいのか被さるようにハグをする
「お疲れ様雪乃!」
「お、お姉ちゃん、2人も、嬉しいけど苦しいよぉ」
「そりゃ嬉しなるやろぉ〜泣いてまうでこんなん〜」
「そういえばお題はなんだったのですか?」
「えへへ……大切な人!」
そう言って見せた笑顔は
キラキラ眩しかった
「雪乃ちゃんゴールおめでどぉーーーあたしも泣けたよぉ〜」
「なんで紅葉さんまで感動してるの…次の次の項目はリレーだよ、切り替えないと」
「そだね!行こ愛華ちゃん!」
テンションが高いのか
私の手を引っ張ってリレーの控え場所まで連れてかれた




