第64話 ズバリ6センチ!
ひっさびさにストック貯めてて心に余裕ある
もう何も怖くない……!
午前の部の水族館が終わり
また午後の部は好きな場所に行けるようになったんだけど
私のちょっとしたわがままで3人で大学に来ていた
……ここに来るのも中学以来、かな
「ここ名門大学だよね!スポーツに学問全部がエリートとか聞いた事ある!」
「ウチもテレビで見たことある、愛華の母さんここで働いてんのか」
「うん、入る許可は取ってるけど、2人には悪いし私だけ行くね」
「えー!なんで!あたしたちも会いたい!」
「つれないこというなよ」
「そう?分かった」
大学入ってかなり広い廊下や大学生達が見え
懐かしくも感じつつ、記憶を頼りにお母さんがいつもいた
準備室に入った
すると何故か二先生が座ってて
機械から煙を吸って吐いてる
煙草……?じゃないな、なんだあれ
「お、やっときたか〜」
「毎度毎度ウチらの所にいすぎじゃねあんた」
「母校に遊びに来てるだけだって〜サボってないサボってない」
「遊びに来てるのかサボってんのかどっちだよ。つか先生もここ出身か」
「そりゃそーだろー。超優秀なの〜」
「先生いつもの煙草じゃない!」
「あーこれ?iQOSつって臭いしないタバコ」
「へー!そんなのあるんですね!」
普通の煙草よりは体にいいやつか
多分ここに来た時にお母さんに怒られたんだろうな……
でも最近、吸ってる頻度少なくなってる印象はあるな
「翠、生徒来たんだからそれ吸うのやめなさい」
後ろから聞き馴染みの声がして、すぐに振り向く
やっぱりお母さんだ
「久しぶり愛華、本当に来たのね」
「久しぶり、お母さん」
お母さんはスーツ姿が良く似合うボブショートの数学教師だ
高校に行く前と何も変わってない姿に安堵する
「わ、身長伸びたわね。ズバリ6センチ!」
「すご、よくわかったね」
「ふふん、やっぱりね。伊達に母親やってないわよ」
「うわ、病弱と引きこもりを私に投げた癖になんか言ってら」
「あら〜そんなこと言うのはこの口かしら〜?」
「あででででギブギブギブ」
ボソッと何か言った二先生を羽交い締めするお母さん
いつもはヘラヘラしてる二先生もどことなく嬉しそう
2人とも楽しそうにしてる辺り、仲良いんだろうな
教え子と先生であんなに距離感近いのは少し羨ましい
……何が羨ましいんだ私…?
二先生が?お母さんが?……????
「はいはい!お母様!あたし!愛華ちゃんの親友の紅葉です!よろしくお願いします!」
「あら、随分元気な子が友達なのね。意外」
「ウチは覚えてます?一色です」
「……あー!九十九さん家の娘さん!最初分からなかったわ!」
今度は私の友達2人と話し始めて
私は二人の間に割り込んで軽くお母さんお腹をポコっとパンチする
「あのさ……………私が会いに来たんだけど」
少しだけ沈黙が起きてから
「あはは!もー!相変わらず寂しがり屋ね〜!」
とハグからの頭わしゃわしゃ撫で回される
嬉しいけど、イラつきが勝つ
(愛華ちゃん可愛い……)
(なんか愛華の扱い方が紅葉とちょっと似てんなこの人……)
「あ、そうだ。愛華が来たついでにこれ渡しとこうと思ってさ」
お母さんから渡されたのはパンフレットだ
体験入学…?ここの……?
「どうせ卒業したら帰ってくるでしょ?うちの大学興味無い?」
「ちょちょちょっと待ってください!それってつまり、愛華ちゃん県外行くんですか!?」
「それは愛華次第よ。どうする?」
「…えと……考えとく」
「そういえば、愛華の学校から一人入学希望来てたわね。青木さん?だったかしら」
麗奈先輩、ここ受けるんだ
大学か、まだ考えなくていいと思ったけど
これもありなのかな
「応援したい気持ちと行かないでって気持ち両方あるよぉ〜」
「紅葉さん落ち着いて、もしそうなってもちゃんと遊ぶ機会あるから」
「ほんと!?約束だよぉ!!?」
(愛華こっち受けんのか……ウチも考えねぇとな…)
「んで、翠はどうすんのよ…ってもういないし」
「二先生に何かあるんですか?」
「あぁ知らないわよね、あの子本当はここの大学の教授受けようとしてたんだけど、落ちちゃってね。こんまま高校教師続けんの?って聞こうと思ったんだけど」
初耳の話が出てきて、思わず二先生を見つめる
この大学、教師になるだけでもかなり難しいみたいなのは聞いた事ある
高校教師から大学教授になるのは
ほぼ無理みたいなことを聞いたことがある
二先生もなにか抱えてるんだな……
「愛華、翠の様子見に行ってやんなさい。きっと喜ぶから」
「え?……分かった」
【愛華が出た後】
「さて、と、紅葉ちゃんに一色ちゃんだっけ?貴方たち愛華が好きなんでしょ?」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「紅葉驚きすぎだろ……でもよく分かりましたね」
「まあ長年この仕事してるとわかるのよね。応援してるわ。今度私の家に挨拶しに来るの楽しみにしてる」
「ま、任せてくださいお母様!」
「まずお前は告白しろ」
「ふぁい……」
「あら?まだだったの。じゃあいいこと教えたげる。遊園地でとあるスポットでキスをした相手と結ばれるんですって」
「何それロマンチック!!!」
「まじか、やるしかねぇ……」
「……愛華は誰を選ぶのか、楽しみね…」
もはやラスボスの雰囲気すらある母登場
母はなんでもお見通しですが
二先生も言ってる通り、病弱と引きこもりの娘を県外の人間に押し付けた人なので
言うほどいい人じゃないですw
 




