第61話 ははは、変な顔!
唐鏡に着いてから
修学旅行らしく寺に行って
神聖な歴史あるようなものを見てレポートを書いたり
混雑した商店街で迷子になった紅葉さんを探したり
午前の時点で少し疲れた
「うへぇ〜〜疲れたねぇ〜」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「迷子になったのはごめんて!でもでも!午後からはフリーだよ!」
「そういやどこ行くんだっけ?」
「九十九さんが言ってた公園、見に行こ」
「あーあそこか、道覚えてるから行くか」
電車を何本か乗り継ぎながら
紅葉さんが質問してきた
そういえばここが思い出の地なら
何故県外であるこっちに引越ししてきたのか
九十九さんは母の実家がこっちで
小学校はその実家で暮らしていたけど
中学以降は父の仕事の都合で今の地域に住み出したらしい
小学卒業の時、九十九さんは私と離れることに泣いたらしいけど
あんまり覚えてない
「じゃあじゃあ愛華ちゃんは?」
「私は…中学の時に色々あったのは言ったよね。そこから逃げ出したくて…それをお母さんに言ったら、お母さんの教え子である二先生のいる高校を勧められて、二先生が親代わりとして面倒見てくれることになったんだ。今住んでる家も借りてるだけ」
「そっか!お母さん先生って呼ばれてたよね!教師なんだ!二先生の恩師だったりするのかな!?」
「らしいけど……あんまり教えてくれないんだよね。なんか親代わりするって話の時もまあまあ強引に決められたらしいし」
「なんか……愛華ちゃんのお母さんってもしかして強気な人なのかな?」
「……まあ、自分主体で放任主義、かな。でも私が悩んでたのすぐ気づいてくれたし、いいお母さんだよ、多分」
そんな話してたらようやく目的地に着いて
その公園に着いた
ブランコには口から煙とため息出してる可愛げのない女性しかいない
「お〜お前ら遅いぞ〜」
「二先生……なんでいるんですか」
「いんや〜生徒の行く場所を見回らんといかんだろ?仕事だよ仕事、サボってないサボってない」
「私達来たので、タバコの火消してください」
「ちぇっ、人いないからいっかなって思ったのにさぁ」
ここが昔九十九さんと遊んでた公園か……
所々さびれてるけど、当時のまま……な気がする
これだけ見ても、あまり思い出せない
「愛華、見てみろよ、あれ」
九十九さんが指さした所には柵があって
大きな穴が空いている
「あれウチらがサッカーボールで空けたんだぜ、懐かしいよな、まだ直してねえのかよ」
……覚えてる、隣が頑固な人で
雷みたいなレベルで怒鳴られて
2人して泣いた……
「お、紅葉〜あそこに良い肉まんあるぞ、奢るからこいよ」
「え?美味しそう!でも2人の思い出の地見たい〜!!」
「お、あんまんとかいっぱいあるぞ〜」
「食べたい!!!!」
「ほらこっちこっち」
いつの間にか紅葉さんと先生がいなくなり
九十九さんは「あ、あれ」とジャングルジムを指さして登り始めた
「ここ登っていつもいい景色見たよな、愛華も登ってこいよ」
ジャングルジムとか登るのいつぶりだろうと思い
子供の頃とは違う感覚に苦戦してしまう
「ほら、こっち」
九十九さんが手を差し伸ばす
昔も……こんな風に何回も頂上に登ったような…
と思い出しつつ、その手を掴んで引っ張られ
頂点に登り着いた先、見覚えのある景色が広がった
「……覚えてねえか?子供ん頃、あんたと一緒に見た景色だよ。ウチの家に絵があったろ」
『ウチ!うんと可愛くカッコよくなって、愛華ちゃんのお嫁さんにする!』
……あぁ…少しだけ、思い出したような……
なんで忘れてたんだろ……あんな思い出
「確かに、言ってたね、お嫁さんにするって」
「え?思い出したのか!?」
「……少しだけ……ねえ、今でもそうなりたいの?」
「は、はあ!?べ、別に今はいいよ!!!」
「そう……」
(なんで少しだけシュンってなるんだよ!!!)
私は何が何だか分からなくなり呆然とその景色を見つめてると
いきなり手を引っ張られて九十九さんと向き直る
「ごめん、今の撤回」
「え……?」
「ウチは今でも、愛華を嫁にしたいと思ってる。だからずっと自分を磨いてきた。こうして再会したからには、絶対にその夢を叶えたい」
そ、それって……そういうこと、だよね
「ただ、先生の返事も止めてんだろ?ウチもまだやること残ってるから返事は後で頼むぜ」
「え……いいの?」
「もう勢いで告ったからには、今度から覚悟するんだな」
九十九さんはそう言って私の左手を握って
薬指にキスをした
驚きすぎて少し強引に九十九さんから距離を取る
その反応を見て、見たことないほど満面の笑みを浮かべていた
「ははは、変な顔!」
その笑顔は昔の、あの元気で可愛い一色ちゃんまんまだった
クリスマスの日にこんな回を持ってくる私素敵……!
とまあ冗談はさておき、ついに一色が告りましたね
一色はもうちょっとギャル寄りに初期設定固めてたはずなんですけど
いつの間にか、見た目はギャルだけど男口調でかっこいいというのが板についちゃいましたね
麗奈や先生とはまた違うかっこよさを持っていて
なんだかんだ皆に世話焼いてる所を見ると
つい応援したくなっちゃいますね
最初の登場シーンからここまでの変わりようは1番かもしれません
紅葉……あとはお前だけだぞ……
1話目の顔を張った力を見せる時だ……!




