第48話 恋バナ
今週から火、木、日曜固定投稿になります。応援してくれよな…!
【今回は一色視点です】
海の出来事から一日が経ち
ウチは何故かデパートに来させられた
その原因は……
「あ、一色ちゃーん!お待たせ!」
紅葉に会えない?と呼ばれたからだ
昨日の衝撃的事実が頭から離れないから
多分その事だと思うが……
「ウチも今来たとこ」
「そか!じゃー行こっか!デート!」
予期せぬワードが聞こえて
「は?」と声を漏らす
紅葉は呆けた顔で振り向く
「どうしたの?」
「いや、デートってなんだよ」
「あーごめん!実はね、愛華ちゃんが告白されたって聞いてから思ったの。あたし達が愛華ちゃんに振り向いてもらうには、デートをするしかないなって!だから経験を積みたいんだ!」
「経験って……確かに積極的にしないと、先生に意識向いてるだろうからな。合理的ではあるけど…」
「でしょでしょ!今日一日だけ!お願〜い」
「…はぁ、まあいいぞ」
「やったー!!」
はしゃぐ紅葉を見ながら少し考える
確かにウチらは愛華に好意があることに気づかれてない
でもお互いは愛華のこと好きだって気づいてる
こういうことするのは信頼してるから、なんだろうか
ウチはずっとこいつに素っ気ない態度取ってんのに
相変わらず頭は花畑だな
「んで?どこ行くんだよ」
「もうすぐ夏祭りでしょ?浴衣選ぼ!」
浴衣選びか……たしかにまだ選んでなかったな
と思ってると紅葉が手を差し出してくる
「デートだから、手繋ご?」
「そこまで本格的にする必要あるかよ」
「あるの!」
「断る」
紅葉の手を払いのけて先に進むと
むすくれながらも隣を歩く紅葉
こいつさぁ…そういうのは愛華にしろよな
そしてやっと着いた浴衣コーナー
色んな人だかりが出来てるから
流石もうすぐ夏祭りなだけあるなと思う
「どの色の浴衣が似合うかな?」
「名前と髪色に因んで紅葉柄でいいんじゃね?」
「夏なのにおかしくない?それを言うなら一色ちゃんは金色かな!」
「ウチの金髪は染めてるだけだぞ。てかそれどこぞのサンバ歌いそうだから嫌」
「えぇ!?地毛じゃないのそれ!!?」
「むしろお前のカラフルな髪色が地毛なのが怖いわ」
適当にその辺の浴衣をとるけど
中々しっくりくるのが無い
紅葉が合いそうなのは何となくあるんだけど…
「一色ちゃんはこれいいんじゃない?」
紅葉が持ってきたのはピンクの楓の花がある白メインの浴衣だ
え、めっちゃ可愛い……
「いいかも」
「だよね!めっちゃ似合うと思う!」
「じゃあ……あんたはこれ」
ウチが取り出したのはカラフルな紫陽花がある紺色ベースの浴衣だ
紫陽花の花言葉に元気な女性ってあったはずだから
こいつにピッタリな気がする
「え〜超可愛い!ありがと一色ちゃん!」
「じゃあ買うか」
2人とも会計を済ませて店を出る
忍先輩の時と違って即決で終わるのは
流石紅葉ってとこか……
てことはもう終わりか?
「お昼何食べたい?」
そんなことなかったわ
「別になんでも」「何でもは困る!」
とか親子かってレベルの会話を繰り広げ
結局適当なカフェに入ってウチはメロンソーダとカルビ定食
紅葉はカルピスとハンバーグを頼んだ
「一色ちゃんって炭酸飲めるの!?あたし飲めないんだよねー」
「へ〜弟達とか飲まねえの?」
「よく残り物飲んであげていつの間にか苦手になってて……」
「お姉ちゃんしてんのな、意外」
「あ、そんなこと言う!?愛華ちゃんにも言われたけど、あたしってそんなお姉ちゃん感ない!?」
今更かよ、とは思いつつメロンソーダを飲む
てか、こんな2人きりでいることあまりないから
何話していいか分かんねぇな
「あのさ〜先生にあってあたしにないものってなんだと思う?」
「大人の色気、冷静で頭いい、化け物級の観察眼」
即答で答えると
「そーゆーこという!?」と身を乗り出してくる
それを何とか抑えつつ
「ライバルは先生だけじゃねぇだろ」
と伝えると
「あ、そうだね!あたし、運動なら誰にも負けない自信あるよ!!」
「好きになる要素ねぇだろそれ」
「えーあるよーー疲れてる愛華ちゃんにおんぶするとかぁ、タオル渡してあげるとかぁ」
「少女漫画かよ」
「もー文句ばっかり!そーゆぅ一色ちゃんはどうなのさ!」
「ウチは……あれだよ、こう……壁ドンとか?」
「それも少女漫画じゃん!」
なんだかんだ紅葉のおかげでずっと恋バナが続いた
流石陽キャだ。おかげで助かった
その後もメイクをしてみるーだとか
あたしもそろそろバイトしないと金ない!とか
若干どーでもいい話が延々と続いた
そんな話聞いてたら、いつの間にか夕方になっていた
「ありがと一色ちゃん、あたしのために色々してくれて、これで告白頑張れると思う!」
「そりゃよかったな……って、まさか夏祭りで告る気か?」
「じゃないと先生に取られそうだもん!一色ちゃんはどうするの?」
「あー…………………………」
告白か……したい気持ちはあるけど
あいつ、まだウチの事ちゃんと思い出してる訳じゃないんだよな
それに、同時に告ったら混乱しそうだしな
「ウチはやめとくよ」
「そう?分かった!抜けがけしても怒らないでよね!またね一色ちゃん!」
笑顔満点で走り去る紅葉を後ろから眺めて
少しため息をつく
愛華、大変だろうけど、ウチはどうするのが正解なのかな……
なんだかんだこの2人仲良いよね……




