第16話 影に咲く華は愛を得て芽吹く
仕事に弓道に小説にバカ忙しい日々を送ってます
ストック貯めといてよかった……
球技大会当日
私は結局補欠という形で体育館にいた
早乙女さんも九十九さんもレギュラーで頑張っている
隅っこでバスケの試合をボーッと見ていると
「隣いいかな?」と忍先輩が隣に座る
「2人とも凄い活躍だね、負けてられないなぁ」
そういえば、この前忍先輩はバスケ部だと言っていたな
球技大会とはいえ、負けられない気持ちがあるんだな
「次、麗奈と試合だから見ててくれるかな?」
「言われなくても見ますよ」
「そっか!じゃあ頑張ってくるね!」
少ししか時間なかったのに
わざわざ私に声かけるなんて
忍先輩は優しいな……
確かに、ここで私がまたやらかしても
何も言ってこない気はする
「無口ちゃーーーーーん!!!見てた!?あたしの3ポイントシュートー!」
「ごめん見てなかった」
「ガガーーン!もう!見ててって言ったじゃん!」
試合後だっていうのに元気だな早乙女さん
と思ってるとそれなりに疲れてそうな九十九さんも私の隣に座る
「あづい」
「スポドリあるよ」
「さんきゅ」
なんかマネージャーみたいになっちゃった
すっごい汗かいてるけど、熱中症とか気をつけてほしいな
そんなやり取りしてる間にも
忍先輩は豪快にダンクシュートを決めている
あんな大人しく優しい性格してるのに、ギャップがすごい
麗奈先輩も、着実なパス等で援護している
2人とも、上手いな……
と思ってると、先輩のチームの2人がおもむろにバターン!と衝突して倒れる
少しザワついたが、2人とも軽傷で済んだみたいだ
でも、足を痛めて出来そうにない
忍先輩が困った表情でチラッと、私に目を合わせてきた
ま、まさか……
「愛華ちゃんごめん!先輩だけど、チームに入ってくれない!?」
「え、いや、あの「いいですね!あたしも入りたい!」」
私の言葉を遮って早乙女さんが割り込む
たしかに怪我したのは2人だから早乙女さんも入れる
助けを求めて九十九さんを見るけど
諦めな、と言いたげに首を横に振る
や、やるしかないのか……
「分かりました……ただ期待しないでくださいね」
バスケは何年ぶりだろう……
何とか手を抜きつつ、忍先輩達の役に立たないと
そう思ってると、ポンと麗奈先輩に背中を叩かれる
「緊張しなくていいぞ、私がカバーしてみせるさ」
「ありがとうございます……」
「だいじょーぶ!あたしが入ったからには負けないよ!」
「早乙女さんはどこからその自信出てくるの」
試合再開のホイッスルと共に早速私にボールが渡る
マジか、と思ってると2人に囲まれて前に進めなくなる
咄嗟に背中にボールを回して片手で横にボールを投げる
麗奈先輩がそのボールを受け取って見事にシュートが入る
「ナイスパス!やっぱり上手いな!」
麗奈先輩が手を挙げてくるので
思わずハイタッチをしてしまう
「麗奈ってば喜びすぎ」という忍先輩に
「う、うるさいな!」と返している
ハイタッチなんてしたことなかったから
変な感情になってる気がする
本当にこの人たちなら……大丈夫なのかな……
『あんた1人でやってれば?』
……いや、調子に乗るな私
そんなこと、ありえないから
「無口ちゃん!」
早乙女さんの声で我に返り、咄嗟に来たボールを受け取る
パスしようにも、全て防がれてしまっている
「無口ちゃんなら抜けるって!」という早乙女さんの声が聞こえてくる
私は一瞬左に抜けると見せかけて右にドリブルをして意表を突き
ゴール前まで進む
『あんたがいると面白くないんだけど』
『お前なぁ少しチームとスポーツをしてくれないか』
『はっきり言って邪魔なんだよね』
くっ……!やっぱり私は……
「無口ちゃん!」
早乙女さんの声で我に返った頃にはボールを取られて
いつの間にかシュートが決められてしまう
思わず棒立ちになってしまった所に早乙女さんがかけつける
「惜しかったね〜!もうちょっと決めれそうだったのに!」
「あ……うん……」
「どうしたの?具合悪い?」
「なんでもない……」
「なんでもない人はそんな顔しません!」
「放っといて」
「紅葉の辞書に放っておくという言葉はないよ!そんな辛そうな無口ちゃん初めて見たもん!」
私、そんな顔してたのか
「……ごめん」とだけ呟くと
早乙女さんは私の手を握る
「大丈夫、怖くなったらあたしを頼って!あたしはいつでも無口ちゃんの味方だよ!」
味方……?
信用してもいいのか。本当に
試合中、ずっと頭の中でぐるぐるその思考が回る
ボールが私に周り、また1人で抜かないといけない状況になる
まだ戸惑ってる私を見て、忍先輩が咄嗟に1人で走り出した
麗奈先輩がすぐに忍先輩をマークしてた相手を抑え
忍先輩が完全フリーになった
「私に投げて!」
咄嗟に投げたパスは見事に通り
忍先輩はシュートを決める
「一緒に背負わせてよ、私達は友達だよ!」
友達……
私の視界に、二先生が見える
先生はこくりと頷いてくれた
……大丈夫なんだね
「ありがとう皆……私、少しだけやってみる」
ボールを持ち、またもや1対1の場面
私はすぐに相手の股下にボールを投げて突破
すぐに2人に塞がれるけど、すぐに背中を向ける
「何してんだ?」という相手の声が聞こえるけど
背中を向けたまま頭上にボールを投げる
「おいおい、どこに投げてんだ?」という声を尻目に
私は持ち場に戻るタイミングでゴールにガポン!と入る音がした
そう、適当に投げたように見えたボールはシュートなのだ
私のプレイに見てた人達がザワついている
あ……や、やりすぎた……
と思ってると試合終了のホイッスルがなる
いつの間にか試合が終わってしまっていたけど、勝てたらしい
「すっっっっっっっっっっっっっっごかったね!!!!無口ちゃん最強!!!!」
「え、引かないの?」
「引く?いやいやいや!かっこよすぎて惚れ直しちゃったよ!」
惚れ直した……?というワードに少し引っかかったけど
早乙女さんは目をキラキラさせて私の手を掴む
麗奈先輩もすぐ来て「素晴らしい活躍だったな!」と褒めてくれる
忍先輩に至っては感動してるのか泣いている
「すごすぎるよ〜〜」
「ちょっ泣かないでください」
3人に囲まれて永遠に褒められる中
先生がいた場所を見ると
少しだけ微笑んでからタバコを持って外に出ていってしまった
……私の事、気にかけてくれてたのかな
「皆……ありがとう」
私は素直に少しだけ微笑んでお礼を言うと
3人ともキョトンとしたが
すぐに「どういたしまして!」と笑顔で返してくれた
今回の話、当初はシンプルに
神楽愛華、というタイトルにして、ここでようやくこの子も登場人物として輝けるようになったよ
という意味をいれようと思ってたんですが
ちょっとかっこよくしてみました
結構お気に入りの回です




