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第1章 殺戮同居 - 5

 しばらくたって、明宏は外へ出て公園を歩いた。死体は相変わらずそこにあった。人気のない公園だから発見が遅れているようだ。明宏は近くのマンホールを開けて死体をその中に投げ込んだ。


 できれば関わりたくなかったが、殺人魔と同居するからには仕方なく警察の捜査網を気にしなければならない。死体を確実に処理するには近くの裏山に埋めるのがいいだろう、でも今は時間が無いからマンホールの中に隠すしかない。


 明宏はそうやって現場を処理して家に戻った。玄関を開けると髪を乾かしている咲花にでくわした。


「どこに行ってたの?」

「おまえの後始末さ」

「えらいじゃん」

「ほんとなら おまえがすることだろ?」

「あ、あたしはもともとそんなことしないの、せっかく殺しといて隠したら面白くないしね?」


 ドライをし終えた咲花がすっきりした表情で話し続けた。


「あたしの服は濡れたから着たくない、余分に着るのはないの?」

「俺の部屋に子供用の服があるわけないだろ?」

「じゃあ裸で過ごすから、いいでしょ?」


 そして長いあくびをしてベッドに這って行った。


「一週間ずっと寝てないから、ちょっと寝るね」


 あまりにも平気な反応なので、却って緊張してるかのようにも見えた。

 咲花は横向きに丸く横たわった。自然と明宏に背を向ける格好になったが、挑発するためにわざと背を向けたのか日頃の寝ぐせなのかはわからない。明宏はクッションを抱える格好で椅子に座っていた。そして視線をベッドの上に固定した。スリルを求めて同居をしようと言ったのは咲花の方だ。それならその期待に応えてやろうか?


 何分もたたないうちにすやすやと寝息が聞こえてきた。明宏は咲花の演技を思い起こしながら、もう少し待つことにした。そうして頭の中で咲花を どうやって始末するか悩んだ。咲花が寝始めて2時間が経った。包丁を持った明宏がベッドに近づいた。


 明宏は人を殺したことがなかった。それは殺しても特に得るものがないからだ。わざわざ人を殺さなくても欲しいものを得ることができた。殺人すればかえって多くのリスクを負うだけだ。でも今度の場合はちょっと違う。この先どんな厄介なことになるかもしれない奴だ。甘く見て油断して危険な目に合うぐらいなら、さっさと始末したほうが賢いかもしれない。


 明宏は静かに咲花に近づいた。明かりが消えた暗い部屋で包丁が青白く揺らめいた。見ると布団の中からカッターナイフがはみ出ていた。


「寝てないのか?」

「寝てるときに狙うなんて、明宏はルール違反じゃん?」


 椅子に戻った明宏は冷ややかにベッドを睨んだ。


「そんなに睨まないでよ、気になって寝られないから」

「こういう感じがいいとおまえが言ったんだぞ?」

「それはそうだけどね。こんな風にずっと楽しく行けたらいいな。お互いに楽しむのなら、ある程度はギブアンドテイクじゃないとね?」


 明宏もその言葉には同意した。


「じゃ、休戦タイムを持とうってこと?」

「まあね、その時だけは互いにちょっかい出さないってのはどう?」


 明宏はにんまりと目を細めた。


「だったらまずカッターナイフをどけろよ」


 咲花が気まずそうにカッターナイフをしまった。そして数分後にすやすやと寝始めた。


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