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2 任期付召喚職員

「これから順を追って説明しますが、まずは、あなたのお名前を教えていただけますか?」


 女性がニッコリと笑って聞いてきた。ワタルが答える。


松本(マツモト)(ワタル)です」


 名前を聞いた途端、女性が赤面して手で顔を覆った。男性が苦笑いしながらワタルに言った。


「す、すまん。今キミが発音した単語の前半部分は、この世界ではとても口にできない恥ずかしい言葉に聞こえるんだ。後半の『トワタル』とだけ呼んでもいいかな?」


「あ、そうであれば『ワタル』と呼んでいただければ」


 自分の氏名でこうも恥ずかしがられると複雑な気分だったが、ワタルはそう答えた。「マツモ」ってどんな意味なんだろう。


 まだ若干顔を赤らめている女性が、気を取り直して話し始めた。


「あ、ありがとうございます。それではワタルさんの状況についてご説明させていただきます。単刀直入に申し上げますと、ワタルさんは、どこかの世界でお亡くなりになりました」


「えっ?!」


 ワタルは目を丸くした。あの宙に浮いている夢は、臨死体験みたいなものだったのだろうか。


 そういえば、小さい頃、祖父からそういった話を聞いたような気がする。

 元自衛官で厳しい一面はあったが、ワタルのことをいつも本気で考えてくれた、大好きなおじいちゃん。

 ここが死後の世界だとすると、昨年他界したおじいちゃんに会えるのかな……


 女性が説明を続ける。


「通常、お亡くなりになった魂は『あの世』に向かわれるのですが、我々の世界の技術を駆使すれば、魂の承諾を条件に、一定期間、あの世に行くのを止めて我々の世界に召喚することができるのです」


「そ、そうすると、僕はすでに死んでいて、あの世に行くはずが、ここに留められているってこと?」


「そのとおりです。ご理解が早いですね。ワタルさんがいらっしゃった世界でも、すでに魂の制御法が確立されているのでしょうか」


「え、いや、そういう技術は無いんですが……」


「あら、そうなんですか。この世界の役所では、高度なスキルをお持ちの魂について、承諾を得て、1年間「任期付(にんきつき)召喚(しょうかん)職員(しょくいん)」として仕事してもらっているんです」


「そ、そうですか……って僕は承諾なんてしましたっけ?」


「はい。そうでなければ召喚できません」


 ワタルは、あの夢の中で「何か助けになるなら、そっちへ行く」と言ったのを思い出した。言わなければ良かった……


「次に、ワタルさんの身体の件なんですが、魂を召喚するときは、身体の年齢や容姿と関係なく、魂そのものを反映した姿で顕現(けんげん)するんです。ピュアで可愛らしい魂ですね」


 女性が微笑んだ。ワタルは何となくバカにされた気分になったが、女性に他意はないようだ。まあ汚く醜いよりはマシか。


 ワタルは、もう一つ疑問になったことを聞いた。


「あ、あと『高度なスキル』と仰いましたが、僕は普通の公務員で、これといった特技はないのですが。何かの間違いではないですか?」


「いえ、そんなことありません。今回、我々は召喚の際に条件付けをしておりますので、間違いなく、あなたは高度なスキルを持っています」


「身に覚えがなくて……何のスキルなんですか?」


 ワタルが聞くと、女性が笑顔で答えた。


「裏金作りです」


 ワタルは、血の気が引くのを感じた。

続きは明日投稿予定です。

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