11 魂砕刑
翌日、バーコードンとワタルが一緒に出勤し、仕事の準備をしていると、始業のチャイムと同時にセミロンが滑り込んできた。
「お、ぎりぎりセーフだな」
「あぶないところでした! エレベータが混んでたんで、階段を駆け上がってきました」
「10階までですか? すごいですね!」
などと庶務係のデスクで3人が笑っていると、突然、軍服のような服を着た数名の男女が会計課に入ってきた。施設管理係の席まで足早に向かい、座っていた男性を取り囲む。男性が慌てた様子で立ち上がった。
「な、なんだ、君たちは」
軍服のような服を着た男女のうち、黒い指揮杖のようなものを持った薄青色のマントを着けた男が、懐から紙を出した。
「スピイ主任だね? 憲兵隊だ。利敵行為の疑いで軍法会議から令状が出ている」
スピイ主任と呼ばれた男性職員は、その場を逃げだそうとしたが、すぐに取り押さえられた。薄青色のマントを着た男が、黒い指揮杖の上端にあるダイヤモンドのような宝石を、スピイ主任の額に当てた。
ダイヤモンドのような宝石は、どす黒い色に変わった。
「なんと醜い魂だ。私利私欲のため庁舎情報を売ったのか?」
薄青色のマントの男の問いかけに、スピイ主任は何も答えず、頭をうなだれた。
「副隊長、スピイ主任の机の引き出しから例の書類が出てきました」
机を捜索していた憲兵の1人から報告を受けると、副隊長と呼ばれた薄青色のマントの男が頷いた。
「もはや審理の必要はないな。記録!」
副隊長の指示を受けて、憲兵の一人がタブレットを取り出した。
「第36区長官官房会計課施設管理係スピイ主任の利敵行為の事実を確認。審理を省略し即決処分。叛乱罪で当該主任を魂砕刑に処する」
そう言うと、薄青色のマントの男は、指揮杖を逆さまにして、ダイヤモンドのような宝石を床に打ちつけた。
パリン、と音を立ててダイヤモンドのような宝石が砕け散った。それと同時にスピイ主任は動かなくなった。
† † †
憲兵隊がスピイ主任の身体を引きずって会計課の外に出た後、ワタルたちは庶務係の隣にある小さな会議室に移動した。
会議室のドアを閉めるなり、ワタルが声を震わせながらセミロンに聞いた。
「あ、あ、あれ、一体何なんですか?」
セミロンが長机向かいの椅子に座った。暗い顔で答える。
「あれが魂砕刑ですよ。あの指揮杖の上端にある魂引石で魂の一部を身体から引っ張り出すんです。その後、魂引石を砕けば、魂も砕けます。魂は繊細ですから、一部が砕けたら全部が粉々になるんです」
「と、ということは、あのスピイ主任という方は亡くなったのですか」
「亡くなっただけではありません。魂自体が壊されたのです。あの世にも行けず、消されてしまいました」
今回の裏金作りがバレたら、あんな目に遭うのか……ワタルの震えは中々おさまらなかった。
「さすがに我々のやっていることについて憲兵隊が出てくることはないと思うが、気をつけなければいけないな」
セミロンの隣の椅子に座ったバーコードンが呟いた。ワタルとセミロンが頷いた。
続きは明日投稿予定です。




