才女との出会い
最終回になります。
イヴの寝室を出ると俺は早速掃除に取り掛かる。
片付けといっても服や散らばった工具品を片付けるだけ。
基本魔法陣が書いてある用紙には一切触れない
理由は以前、大惨事になったからだ。
魔道具はいくつもの魔法陣を組み合わせて作る。
イヴは研究所で魔道具を作るのだが、書いた魔法陣は床に落ちたままにしてしまうことがある。
以前誤って触れてしまい床が水浸しになったり、魔法陣の書かれた用紙を重ねて魔法が起動してしまい火事になる寸前になったことがある。
だから、基本触れずにいる。
触れてはいけないものを確認しながら見渡すと……とある設計図が目に入った。
「……これが原因かぁぁぁ」
台座に置かれた一つの魔道具の設計図を見て頭を抱える。
おかしいと思ったんだ。
普段生活力が壊滅的なイヴ。
だが、1日も寝ずに作業するのはよほど過集中をしている証拠。
そのものは俺の前世で見覚えのあるものだった。
たこ焼き機。
「そういえば言ったなぁ……まさかそれを」
しくったと思った。
実は俺が私用で出かける前日、イヴとこんな会話をした。
『ねぇ、レイくん』
『どうした?』
『たこ焼き食べたい』
『いや、道具がなきゃ無理だよ。そもそもこの世界には機械がない』
『どういうやつなの?』
……とこんな会話をして言葉だけで軽く特徴を教えたことがあった。
実は前世の記憶があることはイヴには教えてある。
イヴは天才だ。
前世での科学機械に興味が強く抽象的な説明だけでそれを魔道具としての設計図として書き上げてしまう。
それを元に工房にお願いして作ってもらい、いくつか商品化したこともある。
「まさかずっとこの設計図を書いていたのか……散らばってる魔法陣の用紙もこのための……」
イヴは容姿端麗で才女だ。だが、天は二ぶつを与えない。
服を着る、ご飯を食べるなど基本的なことは指示があればできるが、それ以外はできない。
だが、誰かが生活を管理しなければ彼女は1人では生きられない。
魔法研究や勉強の分野だけに特化しすぎた天才。
誰にも理解されない孤高の才女は1人では生活できない。
俺はイヴの世話係みたいな立場にある。
いや、詳しくは婚約者だ。
俺も貴族であり、わずかだが魔法の才能があったため魔法学院に入学でした。
ちなみにイヴとは幼馴染でも親同士が仲が良いわけではない。
出会ったのは学院、もしかしたら運命だったのかもしれない。
前世がある俺と才能溢れる少女は神が意図的に会わせたのだろうと思う。
俺は自分の才能のなさに無気力で過ごしていた。
俺のフルネームはレイモンド=セージ、賢者の末裔と言われる魔法使いの名家だ。
そんな家に俺は3男として生まれた。
もちろん初級魔法しか使えない才能のない俺は落ちこぼれだ。
そのせいで家族から見限られた。
卒業したら家を出て行けと勘当を言い渡された。
まだ恵まれたほうだ。見限った俺を魔法学院に入れてくれたのだ。
公の場で家名を名乗ることを禁止されて貴族であるが平民みたいな立場。
まぁ、前世があり、貴族の面倒なしがらみから逃げられ、別にこんなものだと自分に言い聞かせて入学した。
ちなみに入学前から初級魔法の無詠唱、マルチマジックは使えた。
それしかすることがなかったからだ。
俺がイヴを知ったのは入学式の代表挨拶。
まぁ、それは次席の人が代わりにやったんだが、入学式をばっくれて名前だけ呼ばれたのでなんとなく覚えた。
それから式が終わってオリエンテーションを終わらせると俺はクラスメイトに関わることなく、学院の図書館に向かった。
やはり俺を見下す連中と過ごすのは嫌だった。
また、何か特別な才能がないかと……もしかしたら名門家出身なのに魔法の才能がないのは、俺だけしか使えない魔法があるのでは……もしかしたら古代魔法が使えるかもと淡い期待をした。
学院には本館にある新品の魔導書が多くある図書館の他に古い本を集めた古図書室がある。
もう滅んでしまった分野の魔法の本など誰も読まない。利用する人は少ない。
今は最新の魔法知識を求め新しい本ばかり集まる図書館に行く学生が多いので、古図書館に行く人は少ない。
1人になりたかったのでちょうど良いと思い向かった。
……だが、入った時制服を着ていたイヴがいたんだ。
つまらなそうだった。女の子座りで目に正気がなくただひたすら機械のように本を捲るだけの彼女。
本が大量に積み上がっていた。
机ではなく、床にだ。
初めはなんだよこの人と思うも、放っておいた。
目的の本はイヴのいる場所から少し離れた本棚にあった。
そのまま目的の古代魔法について書かれている本を取り出して読み始めた。
それから俺は終業時間まで入り浸ったが、成果は得られず。
利用時間終了までわずかだったので帰ることにした。
そして、図書室を出るときにふとイヴが視界に映る。
……積み上げられた本は入った時の倍近くになっていた。
だが、延々と本を読み続ける。
これ、大丈夫かよ。
そう思い観察をつづける。
だが、時間は経ち続けて終了間際になったので、お節介で俺は声をかけた。
「もう終了時間だよ」
そう声をかけるとイヴは床に座ったままゆっくりと俺の方を見た。
「……何?」
イヴはキョトンとした顔をして首を右に少し傾ける。
「だから、時間。片付けないと」
「……わかった」
俺がそう言うと読んでいた本を閉じて立ち上がろうとして……前へ倒れた。
ガラガラ……とイヴが倒れたことにより積み上げられた本が崩れ、下敷きになってしまう。
「……痛い」
「大丈夫かよ」
そう言いつつ、俺はサイキックでイヴの上にある本をどかしてやる。
そのまま手を差し出したのだが。
「……足がビリビリする」
「痺れたのか、何時間いたんだよ」
「……わかんない」
おかしなやつだなぁ……それがイヴの第一印象だった。
声をかけてしまった手前、放っておくことができず、痺れて動けないイヴを放置して本は全て片付けた。
「……ありがと」
「どういたしまして」
終わった後声をかけるとイヴに表情を変えないまま礼を言われた。
これが俺とイヴとの出会いだった。
その日を境に前世でのお菓子や蜂蜜レモンを作って差し入れたり、世話を焼いたりした。
イヴが「もうレイくんなしでは生きられない」「毎日レイくんを感じてる」と親を勘違いさせ激怒するような手紙を送られ呼び出しをくらい、誤解を1時間にわたって解いたり。
ニコラ家にはイヴ以外後継がいないということで急展開で婿入りが決まり婚約者となったりと。
色々な過程を得て現在に至る。
今では婚約者兼世話係である。
イヴは尽くしている俺に依存をしている。
「あ、お部屋もう綺麗になったんだ」
「まだ1時間も経ってないぞ」
サイキックで片付けて終わり、散らばった洋服を洗って干し終わったタイミングでイヴが寝ぼけたまま右手で掛け布団を引きずってきた。
まだ右手で目を擦っているので眠そうだ。
「なんで……せっかく寝たのに」
「レイくん成分が足りない……膝枕して」
「……わかったよ」
眠そうな声でそう言われたので、俺はイヴの願いを叶えることにする。
そのまま、この部屋にある魔法で掃除したばかりの綺麗なソファに移動する。
俺がソファーの端に座るとイヴはトタトタと歩き俺の太腿に後頭部をおき枕がわりにする。
イヴの深みのある綺麗な瞳は俺を見続け、ゆっくりと目を閉じていく。
俺は頭をゆっくりと優しく撫でる。
「……おやすみ」
「ゆっくり休むように」
「うん」
端的なやりとりをしてイヴは目を閉じた。
「レイくん……今度たこ焼きしようね」
「わかったよ」
最後にイヴはそう言葉を発して眠りについた。
俺もイヴに依存してしまっているのかもしれない。
イヴがいたから俺は誇れること(初級魔法)ができた。
イヴがいたから毎日が楽しいと思うようになった。
大変なことが多いけど、俺はイヴとのやりとりを気に入っている。
「イヴ、ゆっくりおやすみ」
「……ん」
そんなイヴが大好きだ。
起きたら美味しい晩飯を作ろう。
明日は規則正しい生活のため買い物に一緒に出かけよう。
たまには外に出ないと暗い気持ちなってしまう。
人は陽に浴びると肌の免疫も高まるし、ずっと部屋に引きこもってたイヴにはぴったりだ。
そう決意を改めると、気持ちよさそうに眠るイヴを見て気がつけば俺も、うとうとし気づいたら座ったまま寝てしまっていた。
「……レイくん」
目が覚めると目の前には大好きなレイくんの顔があった。
規則正しい寝息を立てている。
「かわいい」
普段は男らしいレイくんは寝顔がかわいい。
まつ毛結構長いんだな。
少し癖っ毛の茶髪はよく見ると艶があるし。
レイくんは恥ずかしがり屋なので顔を間近で見るのはこの機会しかない。
私に膝枕をするとすぐに釣られて寝てしまうレイくん。
こうなると大抵起きるのは私が先。
だから、レイくんの顔を見るために膝枕をお願いした。実を言うと1時間で起きたのはレイくんが掃除を終わらせる時間を見計らってのこと。
レイくんは中途半端が嫌いだ。だから、キリがいいタイミングを狙って起きてきた。
「こりゃたまらんなぁ」
思わずニヤけてしまう。
そんなことを思いながら、私は再び目を閉じる。
今は2人で過ごす時間を大切にしたい。
二度寝は私の得意分野、レイくんの規則正しい寝息を子守唄にすれば10秒で眠れてしまう。
「おやすみレイくん」
レイくんは私の人生を華やかにしてくれた。
私の知らないを教えてくれた。
……灰色だった私の人生がまさか色とりどりになるとは思わなかった。
私はレイくんなしでは生きていけない。
こんな何もできない私に尽くしてくれるこんないい人はもう二度と現れない。
「……だい……すき」
意識が遠のくとき、私は最後に気持ちを伝えたのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今回はポンコツヒロインと面倒見のいい主人公のとある日常でした。
この物語は次回作の連載版候補です。
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