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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

桜姫

作者: しいず

この小説はPixivに投稿した物です。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19676484


桜の精と少女の話です。

 わたしは春にだけ会える子がいる。

それはわたしが5歳の時に、地元にある樹齢数百年桜の下で出会った少女。

ただ、その子は私にしか見えていなかった。

両親がわたしが何もない所に話しかけていたそうだけど、女の子がいると言ってもわたしの空想だと思われた。

嘘じゃないとわたしが言っても、他に見えないのだから誰も信じない。

でも、わたしには見えてるし、話が出来る。

ただ、その子は桜の花が散ると姿が消えた。


その翌年も、さらにその翌年も桜が満開になるころにその子が現れて、花が散ると姿を消した。

本人が言うには桜の精だそうだけだ。

かつては[[rb:桜姫 > さくらのひめ]]と呼ばれて神として崇められていた時もあり神社もあったそうだ。

その神社は管理する人がいなくなったこともあり、50年前に他の神社と統合合祀された。

今も神社の代わりに桜の脇に小さい祠があるが、昔の様に儀式がおこなれる事もなくなった。

さらに、桜に自体が弱っていて、桜姫の姿が見える人も段々と減りいまではわたしにしか見えないみたい。


 何故わたしにだけ見えるのかは不思議だけど、おばあちゃんがわたし同様見えたらと話してくれた。

ただ、16歳になったら何故か見えなくなってしまったが理由はわからない。

今わたしは15歳で誕生日は5月10日。

なので、桜姫と会えるのも今年の春が最後になるかもしれない。

しかし、桜は去年の台風で幹が折れてしまった。

周辺は畑なので人的被害はなかったが、全体の4分の3を失ってしまった。

これをきっかけに木の状態を調べたら所、かなり木が腐り始めておりこのままでは次の台風で倒木してしまうそうだ。

なので地主さんは仕方がなく、伐採する事にしたのだが伐採しようとしたけど作業員がチェーンソーが壊れたり

天気がいいのに作業をしようとしたら大風や大雨になって作業ができなく、冬に雪が積もってしまいひとまず中止された。


 そして雪が解けて、今年も桜の咲く時期が近付いた。

地主さんは桜を切る予定であるが、花が咲くかわからないが今年も花見のため解放されるとの事。

花が咲くか心配だったが、わずかに残っている枝は今年も花をつけてて満開になった。


「今年は桜姫に会えるかな・・・」


桜が満開になったので学校帰りに桜を見に行った。

周辺は薄暗くなっているが、ライトアップの為のライトが設置されているが平日だけあって他に人はいない。

わたしとしては人がいない方が桜姫と話しがしやすくていいけど、桜姫は姿をみせるのだろうか。


「姫、希です、いますか?」


木に向かって話しかけると


「希・・・も来てくれましたね・・・」


とかなり弱々しい声がした。


「姫、大丈夫ですか?」

「大丈夫ではありません・・・。この木もかなり年老いてましたが・・・このような姿なってしまいました・・・。

希・・・わたくしが姿を見せられるのも・・・今日はが最期となります・・・」

「やはりそうなんですね・・・」

「寂しいです・・・これは仕方がありません・・・。桜の精は・・・桜の生命力となければ・・・存在できません・・・」

「でも、こうしてお話で来てよかった。わたしもあと少しで16歳になるから」

「そうでしたね・・・。希とあるのは今年で最期でした・・・」

「でも、なんで16歳になると姫に会えないの?」

「それは・・・わたくしが人だった時に15歳で死んだため・・・。だから・・・16歳のわたくしの姿はないのです・・・」


桜姫の姿はわたしが成長していくと同じ様に変わっていたけど、そういうことだったのね。


「わたしは訳あって・・・この桜の下で死にました。訳は悲しいので言いませんが・・・それを見た神様が・・・わたしを桜の精にしてくれました・・・」


桜姫に関する伝承があるのは知っていたけど、その伝承は

『 かつてあった長者の家で働いていた奉公人の15歳の少女が長者の大切な皿を割った事を責められたが

その少女は割っていないから堅くない否定したが、長者は怒り認めるまで長い事花が咲かなくなった桜の大木に縛り付けた。

少女を桜の木に縛り付けた日の夜から、大雨と大風が吹き辺りは洪水になり村の人は高台にある長者の家に逃げて無事であった。

しかし、少し低い所にあった桜の木に縛り付けられた少女は身動きできなず、そのまま水に飲まれてしまった。

水が引いた後、長者は桜の木に縛った少女を思い出し、慌てて見にいったが少女の姿はあったが息が絶えていた。

さらに、皿を割ったのは自分の子供である事もわかり、長者は少女を死なせてしまった事を悔いて

桜の木の下で3日3晩泣いていると。権現様が現れて「その悔いが本当ならばここに社を建てて娘を神として祀りなさい。そうすれば其方の罪も消えるであろう」とお告げを残して消えた。

長者はすぐに社を建立し、少女を神様して祀ると、今まで長い事花が咲かなかった桜が毎年咲くようになり

いつしか少女の神様を桜姫と呼ぶようになった』

というもの。

よくある昔ばなしと思っていたけど、洪水で亡くなったのかはわからないけど、桜の木の下で亡くなった事だけは本当みたい。


「もともと弱っていましたが、大風で大半が折れてしまい・・・この木も寿命が来ました・・・。しかし・・・希との最後の春を迎えるため・・・最期の力を振り絞り・・・切り倒すのを防ぎました・・・」


切り倒すときに故障とかがあったのは偶然ではなくて、桜姫の力だったんだ。


「ただ・・・力を使いすぎてしまいました・・・。幸い・・・わずかに残った枝の花が咲いてくれましたが・・・わたくしが・・・希と話すのはこれが最期です・・・。なので、最期姿を・・・お見せしたいです・・・」


桜の木が光りだしたと思ったら、桜姫の姿を現したがその身体は透けていた。


「残された力では・・・これが限界です・・・。しかし・・・希に会えてうれしいです・・・」


桜姫は私に近づいてきので手を伸ばすが、触れる事は出来なかった。

以前は触れる事もできので、どれだけ弱っているかがわかる。


「桜姫・・・無理をしなくてもいいのに」

「無理をしないと・・・希に会う事も・・・話す事も出来ないのです・・・。最期にせめて別れを言わせてください・・・」


桜姫はそういうと、わたしに口づけをしたが、わずかに桜姫の唇の感触とぬくもりががあった。


「わたくしの姿を見えるのは・・・わたくしが・・・恋しいと思った方だけ・・・。希は・・・お婆様の面影があります・・・」


つまり、わたしもおばあちゃんも桜姫が好きになったって事だったんだ。

桜姫の姿が他の人に見えないのはこういう事だったのね・・・。


「わたくしは今は神、人と結ばれる事は出来ませんし・・・16歳になると見えなくなってしまいます・・・。

叶わない恋でもありましたが・・・最期に希に会えてよかったです・・・。では、最後にこれを見てください・・・」


そうすると、桜の木が淡い光につつまれるとどうじに、折れた幹が去年の台風で折れる姿・・・いえ、それより大きい姿になり、満開の花を咲かせた。


「これは・・・この桜がもっとも立派で美しかった頃の姿です・・・。最期にこの姿をお見せしたかったです・・・。しかし、これでわたくしの力は無くなりました・・・。最期に希にあえて良かったです・・・では、さようなら・・・」

「桜姫!」


 桜の花びらが舞い散る中、わたしは桜姫に抱きつこうとしたが・・・それと同時桜姫の姿は消えてしまい、桜の木に抱きついたていたが桜の木は元の姿に戻っていた。。


「せめて、わたしにもお別れを言ってから消えて・・・、わたしも好きだったよ・・・桜姫」


わたしは桜の木に抱きついたそういうと。


「希・・・ありがとう・・・」


と声が聞こえた。


 桜姫が消えた翌日以降、桜の木に行っても桜姫の姿は見えなく本当に消えてしまった。

桜の花が散って葉桜になった頃、地主さんは再び桜の木の伐採をする事にした。

こんどは事前にお祓いをして作業に取り掛かったが、今度は問題なく伐採された。

伐採されたあと、桜の切り株が残ったが、根があまりにも大きく、思った以上に大工事になり

費用も手間もかかるので、祠と一緒にこのままにするそうだ。

そして、かつて桜があった事を示す立て看板を写真と桜姫の伝承と共に残す事にした。


「こんなもん作っても誰も見にこんかもしれんが、地区の歴史と伝承だかな。あと、隣に桜を植えておいたで、小さい桜だが今度は姫さんに住んでもらうべ」


地主さんは笑いながらそう言うが、桜姫と桜がみんなに愛された証だろう。

今は切り株だけになった桜であったが、あの立派な姿を桜の花が咲き誇り美しい姿は

桜姫ともにわたしは忘れる事はないだろう。

そしてわたしは帰り際、また振り返ると一瞬だけ桜姫が笑って姿が見えた気がしたがそこには新しく植えた桜の木があった。

お読みいただきありがとうございます。


ちょっとした奇譚という感じに書きました。

また、作中に出てくる伝承は昔ばなしにありそうなを考えてみました。

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