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僕は貧乏騎士爵家の四男です。僕の夢はお腹一杯美味しい物を食べる事です。  作者: きすぎあゆみ
1 エルシード・バルディア・ヴァルロッティー
43/47

43・美味しそうだからがんばる

続きです。

宜しくお願い致します。

皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。

 視力強化の魔法を使った僕は一度目をつむると、ゆっくりと少しだけ瞼を開いた。そう、薄目で見るってやつだよ。


 薄目で森の中を見渡す。視界の変化に馴れたので少しずつさらにゆっくりと瞼を開いていった。完全に開いた僕の目に映ったのはルウスの言う通り確かに遥か遠くの方の木々の隙間から、黄色い木の実がいくつか見えた。柑橘類の大きな実が木の枝からぶら下がるように沢山生っていた。ウリケルさんの前世だとグレープフルーツって言ってたかな?その果物に似ていると思う。


「あっ見えた。あの黄色い木の実が沢山生っているところだよね」


 僕は木の実が見えた方向を指差しながらルウスに確認する。もし違っていたら、いけないから確認は必要だよね。


「(そうだ、あの木の実が生っている木に小さい奴がいるのは見えるか?)」


「小さいの?さっき言ってた小さい奴?」


「(ああ、木の実を取ろうと木に登っている奴がいるだろう)」


 あれが見えるってルウスの視力って良すぎるよね。双眼鏡とか望遠鏡は必要ないかも?それとも無意識で目に身体強化を使っていたりして?でも可能性はあるよね。野生の生き物は住んでいる環境に合わせて進化?適応するために身体強化の魔法を使う事もあるみたいだからね。その点で言えば少し前まではルウスも野生の生き物だったんだよね?


「あっ確かに、何匹か木に登っているね。あの木の実を食べようとしているの?」


「(だろうな、この森の中で甘い木の実は贅沢な御馳走だからな!)」


 だからルウスも無意識の内に筋力強化や防御力強化を使っているかもしれないのかな?この前僕が身体強化の魔法をルウスに掛けてあげたらものすごく驚いていたからどうなんだろう?それとも火事場の馬鹿力が必要な場面なら無意識に身体強化の魔法を使っているかも?


「ルウスはあの木の実は好きなの?」


「(うーん、微妙だな。外は苦いけど当たりだったら中はものすごく甘いんだが、外れだった時は滅茶苦茶酸っぱいけどな)」


「そうなんだ、でも当たりを採れば美味しいんだよね?」


「(当たりを引けばだけどな!)」


 そんな事を聞くと食べたくなってくるよね。森の中では何種類かの果物を見付けているし、食べきれなかった分は無限収納に入れてあるから果物もだけど、実は食料にはあまり困って無かったりして…ウリケルさんが現役の時から(今も現役?どうなのかな僕の中ではウリケルさんは今もバリバリの現役だよ!)色々と無限収納の中に入れていたからね。でも、無限収納の中をあてにしすぎるのもいけないから、森の中では?出来るだけ食材を確保するようにしている。まあウリケルさんの経験なのかな?この先に何が起きるかわからないからそのための備えなんだけどね。何て言ったっけ?防災対策とか避難用の準備とかってやつだよね。


「果物と小さい動物はわかったけど、それからどうするの?」


「(もちろん木の実を食いたい、だがそこには小さい奴がいる。そして小さい奴も食べたいけどエルにも食わせてやりたい)」


 無限収納の中を確認してみたけどこの果物は無限収納の中に入っていないみたいだから、採っておいて損は無いよね。柑橘類の似たような果物なら沢山入っているけれど、それはルウスには秘密だよ!


「…要約すると、どっちも食べたいって事だよね?」


「(要約?何か難しいことを言ってるけど、そうとも言う!)」


 特に何かの名言を言っているわけじゃ無いから別に胸を張って言う事でもないのにね…。まあ自分の欲望に忠実なところ、そこがルウスの良いところなのかな?


「それで、どうするの?」


「(木に登って木の実を採って、ついでに小さい奴も捕まえる)」


「…うん、今からそうするのだけれどそのための注意事項とか作戦は?」


「(オレは難しい事を考えるのは苦手だからな、エルが考えてくれ!)」


 そうなるんじゃ無いかとは思っては居たのだけれど…やっぱりそうなったか。うん、わかってるよ。ルウスは考えるよりも先に行動してしまう人だって事をね…。困ったなどうしよう?


「…そうなるのかなとは思ったけど、そうなっちゃった…」


「(エル、頑張れ!)」


「いや、ルウスが僕に振ったんだから一緒に考えようよ」


「(しょうがない奴だな、そんなに言うなら手伝ってやるよ!)」


 何でルウスはそんなに他人事になれるの?確かに僕も食べたいとは言ったのだけれど、元々はルウスが食べたいって言っていたのが原因だよね?なのに僕が作戦を考えないといけないの?何故なの?完全に丸投げだよね!


「うん…お願いするね…」


「(おう、任せろ!)」


 本当に釈然としないよね心の奥底にモヤモヤした物が湧き上がって来るのは気のせいじゃ無いよね!ルウスの底抜けの明るさって本当にうらやましい…ポジティブで悩み事が無さそうで、それにいつの間にか僕が言い出しっぺみたいになっているし…僕もポジティブにならないといけないのかな?いや、ポジティブって言うよりルウスのは人任せだよね。


「で、あの小さいのを捕まえる時に気を付けたらいい事とかアドバイスみたいなのはあるの?」


「(うーん、アドバイスか…)」


「うん、捕まえ方とかのね」


「(捕まえ方だったら、静かに気付かれない様に後ろから近付いて、気付かれる前に素早く捕まえるってところだな!)」


 って、それって普通だよね?生き物を捕まえる時には普通にやっているよね!僕もヴァルロッティー村にいた時に虫やトカゲを捕まえる時にそうやっていたよ…なのにルウスのアドバイスはそのままんまその通りって…確かにそうかも知れないけど、もうちょっと何か言う事が有るんじゃ無いのかな?


「…へーそうなんだ…」


「(他に知りたい事はあるのか?)」


 例えばもの凄くすばしっこいとか見た目に反して毒を持っているとか、実は肉食で果物を採ろうとしている時にわざと襲われようとして逆に大勢で襲い返して、大きな獲物を餌にしているとか…何かあるよね?


「…そうだね、すばしっこい以外に何か無いの?」


「(そうだな…小さいくせに意外と大食らいとか、他には…)」


「他には?」


「(爪が長いから引っ掻かれたら痛いかも?)」


「痛いかも?」


「(オレは皮が厚いからたいして痛くなかったけど、エルの場合はな…)」


 ああ、そうだった。ルウスは僕が着ている服の事とか詳しくは知らなかったんだよね。ルウスの場合は自前の厚い毛皮で全身を覆われているから、いくら鋭いって言っても小動物の引っ掻きや噛み付きなんて大した事は無いのだろうね。その点僕の皮膚は薄く柔らかいから、直ぐに怪我をしてしまうからね。でもウリケルさんの作ってくれた服やズボン手袋や帽子で、肌の露出は顔だけで極力少なくしているから顔以外なら少々の攻撃でも耐えられると思うよ?


「心配してくれてありがとう、でも大丈夫だよ」


「(何でだ?そんな薄っぺらい服とエルの皮であの攻撃に耐えられるのか?)」


 ルウスと行動するようになってずいぶん経つけど、そう言えば大きな怪我とかってした事は無かったよね。油断して獲物の一撃を食らったり足を滑らせて高い所から落ちたりとか、大怪我をしてもおかしく無い場面はたくさん有ったよね。でも何とも無かったから、ラッキーって事ですましていたのだけど…。


「うん、大丈夫。この服はウリケルさんが作ってくれた特別製だし、それに僕に防御力強化の魔法を掛けたら多分問題無いと思うよ!」


「(ふーん、そういう時には魔法って便利なんだな…使い勝手が良いのか悪いのか良くわからんけど?)」


 それは使い勝手の問題じゃ無くて使い手である僕の未熟さなのだけど、それなのにルウスに対してなんと無く信用していないみたいに感じるのだけど僕の気のせいじゃ無いよね?


「そうだね僕もそう思うけど、僕たちの役にはたっているからやっぱり便利だとは思うよ!」


「(そうか…エルが言うのならそうかもな?そうすると、オレも魔法を少し習ってみたくなってくるな!)」


「本当に!だったらルウスも僕と一緒に魔法の勉強をしようよ」


「(あー…そうだな…オレがその気になったらな)」


 狩りと採取の打ち合わせのはずが途中から魔法の話になっちゃったけど、ルウスが魔法に感じている不信感を少しでも軽くできるのなら結果オーライなのかな?多分そうなのかな?

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