33・ツキ?それとも…
感想とレビューを頂きました。
ありがとうございます。
続きです。
宜しくお願い致します。
皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。
僕の全身を強い衝撃が襲い、僕はその場に倒れ込んだ…。
いや、地面に叩き付けられた?…不味い早く立ち上がらないと…そう思って身体を動かそうとするけれど、身体が思う様に動かない…そうじゃ無い、動かせない!
「あっ…くっ…逃げ…なきゃ…」
「………」
そして上から僕に何かがのし掛かり、押さえ付けてくる。ゴワゴとした毛むくじゃらで、汗と皮脂が混ざり合った様に鼻にツンと来るキツい臭い。でも、それは今では嗅ぎ慣れた臭い、獣臭だ。
「重過ぎて…動けない!」
「………」
僕が抜け出そうと足掻いているその間も、僕の全身を押さえ付ける様に圧力が掛けられる。そして、それが放つ臭いを嗅いでいると自然と、涙が零れてくる。この獣臭は、とても目に染みる臭いだった。
「重いし、臭い…早く抜け出さないと…」
「………」
でも、何かが可怪しい。その後の攻撃?追撃?が無い?何で…?でも、今はそれ処じゃ無い。早く抜け出さないと、今度こそモルダルシェリュースに殺されてしまうかも…。それにこのままでも、圧殺されてしまうかも…。
「くっ、はっ、うっ、ううっ!」
「………」
僕は必死になって僕にのし掛かる何かから、何とか這い出した。そこで僕が目にしたのは、力無く横たわるモルダルシェリュースの首だった。
そうじゃ無いかとは思ってはいたけれど、確認するまでは気を抜けないから仕方無いよね。
「もしかして、窒息死したとか?」
「………(さあ、それはどうだろうね?)」
ウリケルさんが何か知ってそうだけど教えてはくれないと思う。「気になる事が有ったら先ずは自分で調べてみて、それで解決出来ないのなら聞きに来なさい」そう言う教育方針?なので、先ずは自分で調べないと…。
「えっ…まさか…?…都合良過ぎない?」
「………(ぷっくくくっ…)」
タイミング良く窒息死したのかと思ったけれど、そうじゃ無かった。モルダルシェリュースのコメカミの辺りに、弾き飛ばされた筈の小剣が突き立ち、それは鍔本まで深く突き刺さっていた。
「倒しちゃった…のかな?」
「………(くくくっ…)」
ウリケルさんが必死になって笑いを堪えている理由が、解った気がする。今にも吹き出しそうで、そんな事なら我慢しないで笑ってくれてもも良いのに、と思わずには居られなかった…。
「…助かったけど…何か…納得出来ません…」
「………(まあ、そんな事も有るさ、それよりも…)」
「(モガモガモガ…)」
「!…何か聞こえる?」
「………(エル、何かを忘れていないかい?)」
「(モガモガモガ…)」
「…?モルダルシェリュースに止め?は刺しましたし、死んでいます…あっ血抜きをしないと、肉が臭くなってしまいますね!…後、皮も剥がないとですね!」
「………(エル、それ本気で言ってるのかい?)」
「(モガモガモガ…)」
「えっ…?…あっ!」
「………(何かとても大切な事を、忘れていないかい?)」
「(モガモガモガ…)」
「あっ…!そっそんな事有る訳無いじゃ無いですか!僕がお肉に気を取られて、ルウスの事を忘れるだなんて…」
「………(…で、ルウスの事を忘れていたのかい?)」
「(モガモガモガ…)」
そうだよね、僕が何のためにモルダルシェリュースみたいな森の強者と戦っていたのか。食料?おやつかな?として狙われていたのも有るけれど、ルウスを助けるために戦っていたんだよね。
何故ルウスを助けなくてはいけなく成ったのかは、僕のせいと言うよりはウリケルさんの仕業なんだけどね…。
「…はい…忘れていました…」
「………(それなら、早くルウスを助けてあげて、忘れていた事を謝りなさい)」
「(モガモガモガ…)」
「ル、ルウス、ごっご免なさい、お肉に気を取られて助けるのを忘れてしまって…ルウスを傷付けない様にって言うのは覚えていたのだけど…」
「………」
「(モガモガモガ…)」
「今、助けるからね!」
「………」
「(モガモガモガ…)」
僕はモルダルシェリュースの口に咥え込まれたルウスを助けるために、モルダルシェリュースの顔の前側に移動した。
「うわっ…!」
「………」
「(モガモガモガ…)」
悔しそうに目を見開き事切れたモルダルシェリュース。そして、その口に狙いすましたかの様に嵌まり込んだルウス。
ルウスの事を考えると一刻も早く助け出してあげたいのだけれど、モルダルシェリュースの顔…特に悔しさを滲ませる様に見開かれた目を見てしまうと、そのあまりの迫力で怖くてとても近寄り難いよ…。
「…ゴクリ…!」
「………」
「(モガモガモガ…)」
ルウスを見てみれば、モルダルシェリュースの血なのかな?全身が血にまみれてしまっていて、この状況を知らない人が見たら、ルウスがモルダルシェリュースに齧られて全身から血を流しているみたいに見えるよね。
「…ルウス大丈夫?怪我とかしていない?」
「………」
「(モガモガモガ…)」
でもそれよりも、今は一刻も早くルウスを助け出さないと…って、さっきも言ったかな?
とても大事な事なので二回言ってみました!
「ごめんルウス、今助けるからね!」
「………」
「(モガモガモガ…)」
…今の状況を確認してみよう…ルウスはモルダルシェリュースの口に咥え込まれている。そして、口に咥え込まれているって事は、当然鋭い牙で噛み付かれている。
モルダルシェリュースは死んでしまったので、今なら無理矢理口を開かせられるのかな?死後硬直が始まってしまうと肉体が固まって動かせなくなるから、早く口を開かせないとルウスを助け出せないよね。
あっ、でも死後硬直って死んでから一日後くらいから始まるのだったのかな?
確か?多分?そうだった様な?…。
「でも、どうやって口を開かせたら…」
「………」
「(モガモガモガ…)」
「…流石に素手であの牙を触れないよね…」
「………」
「(モガモガモガ…)」
モルダルシェリュースの口を開く事が出来たら、簡単にルウスを助けられるとは思うけど…あの鋭い牙を触るのはどうしても避けたいよね。
ウリケルさん製の手袋って有るのかな?それか、籠手とかになるのかな?
「…そうなると、小剣で下顎を切り離すとか?」
「………」
「(モガモガモガ…)」
「あっ、でもその前に頭に突き刺さった小剣を抜かないとだね…」
「………」
「(モガモガモガ…)」
そうだった、僕が使っている小剣はモルダルシェリュースのコメカミに突き立っていたんだった…。早く抜かないと、抜けなくなるかも?
取りあえず、先ずは小剣を回収しないと何も始まらないかも?でもその前に…。
「師匠済みません。モルダルシェリュースの牙に触れても大丈夫な、子供用の手袋って有りますか?」
「………(あれっ、エルに必要そうな物は一通り無限収納に入れていたのだけど、もしかして確認していないのかな?)」
「(モガモガモガ…)」
「…はい、あまりにも色々と入っていたものですから…」
「………(確かにそうだったけど、解り易い様にフォルダー分けしていたよね?)」
「(モガモガモガ…)」
と言う事は、僕用のヘルムとか帽子や盾なんかも有ったりして…これは時間が有る時に確認しないとだね。
「…はい…ですけど僕が適当に色々と入れたので、僕用のフォルダーがどこに行ったのか解らなくなってしまいました…」
「………(…今は良いけど、今度からこまめに整理整頓はしようね!)」
「(モガモガモガ…)」
この森に入ってからと言うもの、貴重な食材や珍しい食材の宝庫だった事も有り、手当たり次第に無限収納庫に入れていた。
本当なら種類別にフォルダー分けをしないといけないとは思いつつ先延ばしにしていた結果が今の状況です…。
「…はい、以後気を付けます…あっ!」
「………(?何か思い出したのかい?)」
「(モガモガモガ…)」
ウリケルさんのお陰で良い事を思い付いちゃった。そうだった、その手が有ったんだ!
「いえ、でも師匠のお陰で良い事を思い付きました!」
「………(ほう、それは楽しみだね!)」
「(モガモガモガ…)」
「はい。では、一度モルダルシェリュースを無限収納に収納します」
「………」
「(モガモガモガ…)」
「収納!」
「………」
声を出す必要は無いけど、雰囲気作り?その場のノリって有るよね?だから僕は声に出してみた。
そう、僕が思い付いたのはモルダルシェリュースを無限収納庫に入れる事だった。上手く行けば僕の思った通りになる筈なんだけど…。
あんなに大きかったモルダルシェリュースが一瞬で視界から消え去り、その代わり地面には二つの物が落ちる音がした。
「(ウゲッ!)」
一つは落ちるのと同時に声を響かせて、もう一つは腐葉土の上に硬質な物が落ちる音が微かに聞こえる程度だった。
続きが気になる方、応援をお願い致します。
出来ればブックマークして下さると、モチベーションが上がります。
評価や感想も、お聞かせ下さいませ。
誤字脱字の報告も合わせてお願い致します。




