30・狩る者、狩られる者
続きです。
宜しくお願い致します。
皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。
「………(ルウス爆弾投下!)」
「師匠!爆弾って…?」
ウリケルさんがそんな事を言っていた…爆弾?爆弾って多分…いや絶対にアレだよね!
ウリケルさんの前世に有った、鉄の筒?とかの中に火薬とか信管?とかを入れて爆発させて、熱とか衝撃波で人を怪我させたり殺したり家とかを壊しちゃう、異世界の戦争の道具?武器?兵器だよね!
「あの爆弾ですか?」
「………(在る意味、爆弾だよ!)」
「そっそんな!ルウス!」
ルウスが爆発しちゃうの?そして木っ端微塵のバラバラになっちゃうの?そんな事を想像してしまうだけでも怖いのに、そんなの嫌だよ!初めてのテイムで、初めての森の中で出来た友達なのに…そんなルウスとの突然の別れに僕は泣きそうに…いや…自然と涙が溢れ出て来ていた。
「………(エル、私の言い方が不味かったね。爆弾って言うのは物の例えだよ。上から目標を狙って落とすから、爆弾って表現しただけだよ!)」
「良かった、ルウスは爆発しないんですね!」
「………(そうだよ。ただ高さと重さと硬さで、モルダルシェリュースにぶつけるだけだよ!)」
「良く無いですよ!結局はルウスを落とすんじゃ無いですか!」
確かにウリケルさんの昔の冒険話を聞くといざと言う時には手当たり次第、回りに在る有る物を武器や身を隠す盾として使ったり、時にはそれが人や野獣や魔獣や魔物に変わる事も有ったんだけれど…だけどそれが僕の友達ってあんまりだと思うんだ!
「………(そうだね…そうなるね!ただし、既にもう現在進行形だけどね…)」
「ルウスが…もし、ルウスが死んじゃったり大怪我をしたらどうするんですか?」
「………(それは大丈夫!例え子供と言えどもルウスはれっきとしたミノタウロス種、この程度で怪我なんてしないさ!)」
えっ?何それ?人や野獣に比べると魔獣や魔物が強くて身体が丈夫なのは知っているし、この一年間いやと言う程経験してきたんだけど、それなのにミノタウロスは更に頑丈って…それってやっぱり魔物でも上位者だからってって事だよね。ルウスはそのミノタウロスの子供だから、大人程では無いけれど、やっぱり丈夫で頑丈なんだよね?
「だから、この高さから落としてもこの程度なんですか?」
「………(そうだよ、ミノタウロス種の強靭な肉体と、エルが幾重にも施した≪身体強化≫で、もしルウスが怪我をしてもかすり傷程度だと思うよ)」
「師匠がそう言うのならそうかも知れませんけど…でも僕はルウスの事が心配です!」
でも、丈夫なお陰で怪我をしない可能性が有るのだけれど…それが良かったとは思えない。むしろそのせいで、臨機応変の行き当たりばったりで状況が好転するのなら何でも有なウリケルさんに爆弾扱いされているのだから…。
「………(まぁ、ルウスの事は心配いらないよ…それよりも…)」
心配いらないって…ルウスは僕の大切な友達なんですけど…でも、そうだよね…今はそれどころじゃ無いよね、だって今現在僕とルウスは自由落下中でしかも≪身体強化≫で素早さを強化しているから、とても体感時間が長く感じられて恐怖の時間も長く感じられるから、とてもまともなの精神状態じゃ無いのかも?
「モルダルシェリュースですか?」
「………(そうだね。ルウスにエルの≪身体強化≫と、更に私の≪重力増加≫そして止めが高い所からの自由落下。はっきり言って並みの生物なら木っ端微塵になると思うが…)」
「えっ、ならモルダルシェリュースは…?」
「………(奴なら大丈夫。奴はしぶといから、致命傷に成れば御の字かな?)」
確かにそうだったのかも?モルダルシェリュースはこの森では狩る側の生き物だったよね。魔獣や魔物は人や動物と比べると、体内に魔力を持っているもしくは魔力の扱いに生まれつき長けている、有る意味反則的な生き物でそれらを纏めて魔獣や魔物と呼んでいた。それ以外にも更に別の種族も居るけれど、今では伝説や物語にしか登場していないのかな?
「並みの生物なら木っ端微塵ってそれはそれで嫌ですけど…なのに致命傷に成るか成らないかって…どれだけ化け物ですか?」
「………(そうでも無いよ。この程度の魔獣や魔物ならこの森には掃いて捨てる程居るよ!)」
「えっ!…確かに…そうでしたよね…」
ウリケルさんから得た知識では確かにそうだった様な気がしたような…こんな事になるとは思って居なかったので、そこまで真面目に魔獣や魔物の事は調べて無かったとは今更言えないよね…。
「………(もっと奥に行けば行く程、強くて狂暴だけど、美味しい魔獣や魔物が沢山出てくるさ!)」
「そっそんな恐ろしい森に僕は居るんですか?」
「………(それは今更じゃ無いかな?エルがもう少し修行をして強くなれば、モルダルシェリュース程度には勝てる様になるよ!)」
「モルダルシェリュースが、程度ですか…」
ウリケルさんがこの森に入ったのって遥か昔で、ヴァルロッティー村どころかカレディア王国さえ無かったんだよ。それだけの永い年月の間に新種や変異種が現れて、生態系や生息域が変わったりしても可怪しくは無いとは思うけど…でも確かに、モルダルシェリュースはこの広大な森を自由に駆け回っていた筈だった様な気が…?
「………(そうそう、モルダルシェリュースを倒せて初めて強者の仲間入りの第一歩だね!)」
「…強者ですか、でも僕は未だ子供なんですけど…」
「グルルルル!」
「ガゴッ!」
「………(おっ、命中した!たーまやー!)」
僕達が呑気に?話をしているととても聞き慣れない異様な音がした。ウリケルさんと音のした方を見てみると、異様な音の正体が判明した。でも、「たーまやー!」ってこの状況で使う言葉じゃ無かったよね!…でも、ウリケルさんからしてみればこの状況も楽しまなければ損なのかも?
「グッ、グルッグッグッ!」
大きく開けた口に運良く?それとも狙い通りに?ルウスが足からスッポリと填まってしまい、モルダルシェリュースは苦しそうにルウスを吐き出そうと踠いているけど上手く吐き出せずに居る。それならばと鋭い牙でルウスを噛み砕こうと口を閉じようとしても、思いの外ルウスが硬くてそれこそウリケルさんが言った通りルウスには掠り傷も付いていないみたい?
「ルウス今助けるからね!」
「………(待つんだ、エル!)」
「でも、ルウスが…」
僕がモルダルシェリュースに駆け寄ろうとしたらウリケルさんに止められてしまった。苦しそうに踠くモルダルシェリュースに近付くのは確かに危険かも知れないけれど、それよりも一刻も早くルウスを助け出さないと…。
「………(ルウスは≪身体強化≫で大丈夫!それよりももう少し待てば奴は窒息するから、その時にルウスの救出と奴へ止めを刺すんだ!)」
「窒息って…苦しそうですね。いくら僕達を苦しめた魔獣と言っても可哀想です!」
「………(エル、何度も言っているけどこの森は弱肉強食の世界なんだ、この森に一歩足を踏み入れた瞬間から食うか食われるかになるんだよ)」
…そうだった?そもそも偶然?必然?の遭遇から?モルダルシェリュースに食糧として認識されてしまったのだけれど、逆にモルダルシェリュースを狩るのが目的になったのだったよね。
「はい師匠それは解っていますけど…」
「………(だから、奴を狩って美味しく頂くのが勝った者の使命なんだよ!)」
それはモルダルシェリュースのお肉がとても美味しいから。そのためには、使える手段は使わないとだよね?そんな事を思っていたのだけど…次第に踠いていた筈のモルダルシェリュースの動きが緩慢になって行き、しばらくするとその動きは完全に止まった。
「…!しっ、死んだのかな?」
「………(そこは教えたと思うけど、確認までが狩りだよ…)」
「そうでした、魔獣や魔物は確実に死んだのを確認するまでは、油断大敵でした!」
「………(そう言う事、ここで油断して逆に奴らのご飯にはなりたく無いのなら最後まで気を抜いたら駄目だよ!)」
もしかして、窒息死したのかな?もし本当にそうだとしたらルウスを助け出せるから、僕としては願ったりなのだけれど…でも、相手は強力な魔獣だから死んだのを確認するまでは油断出来ないよね!
続きが気になる方、応援をお願い致します。
出来ればブックマークして下さると、モチベーションが上がります。
評価や感想も、お聞かせ下さいませ。
誤字脱字の報告も合わせてお願い致します。




