27・エルとルウスの一日
続きです。
宜しくお願い致します。
皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。
今日は朝から昨日テイムして友達になったルウスと、森の中を北を目指して歩きながら食べられる物を探している。
「(おいエル!これは食えるのか?)」
「キノコだね。ちょっと待ってね≪鑑定≫!残念、このキノコは毒が有るから食べられないよ」
「………」
「(毒キノコって言うヤツか?食ったらどうなるんだ?死ぬのか?)」
「身体中が痒くなって、火傷みたいに皮膚が剥がれるんだって!」
「………」
「(火傷?何だそれは?)」
「火傷って言うのはね…」
人族の常識はルウスには通じないの事が多いので何かある度にルウスに説明をしないといけないし、解らない事は何でも聞いてとルウスには言っている。だって何か有ってからでは遅いからね。
「…火や熱い物にさわったり触れたりした事で皮膚や粘膜が損傷した状態の事で、皮膚が膨れて剥がれたりして痛いけど痒いんだ!(で、良かったですか?僕も余り良く知りません)」
「………(まあ、そんな感じだよ!)」
だからって訳じゃ無いけど、ルウスは火傷を知らなかった。それはそうだよね。だってルウスは僕と出会うまで≪火≫を、見た事が無かったと思うから当然だよね。あっでも、山火事じゃ無くて森火事?とかで見た事が有るかも?
「(皮膚?何だそれは?)」
「ごめん、ルウスの場合は皮かな?」
「………」
「(えっ、皮が剥がれるのか?)」
「そうだよ!ルウス、もしかして触っちゃった?」
「………」
でも、昨日の夜は大変だった。ルウスは森生まれの森育ちなので、人族の家を見た事も無ければ当然入った事も無い。だから仕方が無いよね、家に入った初めの内は色々と驚いていたけれど、段々と驚かなくなったって言うか驚き過ぎて目が死んで僕の言いなりになっていた。
「(いや、触って無い。痛くて痒いとか嫌だな。触らなくて良かった!)」
「触ったかと思って驚いたよ。ビックリさせないで!」
「………」
「(済まん、エル。オレが驚きすぎた)」
「ルウスに怪我とか無かったから、良いよ」
「………」
それなのに御飯はしっかりと食べられるのだから、野生の本能って凄いよね。昨日のルウスは晩御飯を食べたら直ぐに寝てしまったけれど、今日は一緒にお風呂にも入ってみたいよね。昨日はルウスが寝た後に僕が、≪クリーン≫の魔法を掛けたから綺麗になっているけれど、今日はお風呂の良さを教えてあげたいんだ!
そして夜が明けて朝に目覚める時にも、ちょっとした事件が起きた。
ピピピピピッ…
「(うわっ…?なっ何だ?なんの音だ?)」
「…んーどうしたの…?」
ピピピピピッ…
「(エル、何か変な音が聞こえるぞ!敵か?)」
「あー!この音の事?」
ピピピピピッ…
「(そうだ、この変な音だ!)」
「これはこの目覚まし時計のアラームだよ!」
「(目覚まし時計?何だそれは)」
「えーと、目覚まし時計の説明をしようとすると…時計の説明からしないといけないよね…」
それは僕の部屋に置いて有る目覚まし時計のアラームの音だった。晩御飯を食べた後に直ぐ寝てしまったルウスを、初めての人族の家の部屋でそれも一人で寝かせるのは可哀想って事になったので、僕の部屋のベッドで一緒に寝たんだ。
「(…って、ここは何処だ?)」
「ここは、師匠のウリケルさんの家の僕の部屋」
「(師匠?ウリケル?家?部屋?)」
「あー、そこから説明をしないといけないの?」
朝、起きて早々色々な事をルウスに説明しないといけなかった。確かに昨日は途中から意識が無くなっていたから仕方が無いのかも?…でも、一度に色々と説明しても全部覚えられるのかな?まあ、少しずつ慣れて行けば良いよね。
「師匠おはようございます」
「エル、ルウス、おはよう、朝御飯の準備は出来ているよ」
「(オハヨウゴザイマス)」
借りてきた猫成らぬミノタウロスかな?何時も元気なルウスらしからぬ、スッゴい小声で挨拶をしていた。そう言えば魔物に挨拶の習慣って有ったのかな?僕はルウスをテイムしているので友達になれたけど、ウリケルさんは昨日の夕方に初めて会った人だから緊張か警戒しているのかな?
「頂きます」
「(い、いただきます…)」
「はい、召し上がれ」
「師匠、このふわトロの卵滅茶苦茶美味しいです!」
「(…本当だ…旨い…!)」
「そうか、ありがとう。言ってくれればお代わりを作るよ」
「師匠、お代わりが欲しいです!」
「(オ、オレも…お代わり…!)」
「了解、今から作るから少し待ってて!」
朝御飯の時も少し落ち着かなさそうにしていたけれど、御飯を食べ始めると何時ものルウスに戻ったから慣れれば大丈夫かもね?
それとウリケルさんの家の外でもウリケルさんの姿が見えて声が聞こえる様に、ルウスにウリケルさんが魔法を掛けていた。これで少しずつでも、ウリケルさんに慣れてくれれば良いよね。だってルウスが今後僕と一緒に居るって事は、必然的にウリケルさんとも一緒に居る事になるからね。
「あっ、あんな所にパスィーが!」
高い所に生った木の実を見付けた。ウリケルさんの前世でのカキとビワを合わせた様な果物で、種が大きいので食べられる部分は少ないけれど、果肉の程好い甘さと溢れ出る果汁の美味しさで僕のお気に入りの果物の一つだった。
何時もの様に身体強化の魔法を自分に掛けているので飛び上がって採ろうとしたら、ルウスに止められた。
「(エル、待て!)」
「何ルウス、どうかしたの?」
「………」
「(オレは今、良い事を思い付いたぞ!)」
「良い事?何それ?どんな事?」
「………」
「(それはな!)」
「…それは?」
「………」
ルウスが突然僕の背後に回ると、僕の股の下に頭を突っ込んだ。そしてその勢いのまま、立ち上がろうとしたんだ。
「(こうするんだ!)」
「わっ!何?えっ、ちょっと!」
「………」
それは世間一般で言う肩車だった。突然ルウスが立ち上がったので、ルウスの髪の毛?を掴んでしまったけど痛く無かったかな?僕の目線がルウスの肩までと僕の股下からの高さ分までに上がったのだけれど、それでもパスィーまでは届かない。んー残念!
「ごめんルウス、髪の毛引っ張っちゃったけど痛くなかった?」
「(オレは、このくらいの痛みは気にしないぞ!)」
「………」
「でも、痛みって言ってるよ…」
「(…いっ、痛くは無かったぞ!)」
「………」
「それなら良いけど…でも、パスィーまでは届かないよ!」
「(何?そんな事は無い筈だ!オレとお前…エルの背丈を足したんだぞ!)」
「………(いや足せて無いと思うよ)」
「僕も、そう思います!」
「(何!そんな事はない筈だ!)」
「………(エル、説明出来るかい?)」
「はい、説明します!」
「(…?)」
「………」
僕はルウスに肩車をした時の目線の高さを、ウリケルさんに変わって説明してみた。で、ルウスはと言うと、単純に肩車をしたら身長が倍になると思っていたみたい。まあ、僕も今までそこまでは深く考えた事は無かったけど、でも咄嗟にそんな事を考え付く事は凄いと思った。
やっぱり一人で森の中で生活していたから、何か有った時には身の回りに有る物で対処しなくてはいけなかったから、柔軟に物事を考えられるのかな?それとも発想が豊かなのかも知れないよね?
そのお陰かな?僕も良い事を思い付いたよ!
「ルウス、少し動かないでね!」
「(何だ?解ったぞ!)」
「………」
「≪身体強化≫!」
「(エル!何をしたんだ?身体が軽くなった気がする!それに力が湧いて来る?)」
「………」
それはね、ルウスに≪身体強化≫の魔法を掛けたんだ。ただでさえ力持ちのミノタウロスのルウスだけど、≪身体強化≫の魔法を掛けるとその力も数倍以上になるからね。強化し過ぎても危ないから、今回は大体二倍くらいの力になったのかな?
それに、この一年で強化魔法を何回使ったのか解らないくらい使ったから、一度に筋力以外に体力や素早さや精神力とかも一度で強化出来る様にもなったよ。
「ルウス、軽く上に跳んでみて!」
「(ああ、解った。行くぞ!)」
「………」
「うん、お願い」
「(エイッ!)」
「………」
「っと、採れた!けど、跳び過ぎ!」
「(軽く跳んだだけなのに!凄いなエルの魔法は!)」
「………」
「でもやっぱり、ルウスの力も凄いね!軽く跳んだだけなのに、あんなに高く跳べるなんて!」
「(エルの魔法も凄いぞ!オレもあんなに高く跳べるとは思って無かったからな!)」
「………」
「ルウス、パスィーの実がまだ有るからもう少し手伝ってね、」
「(おう、了解だ!)」
「………」
ルウスに肩車して貰いパスィーの実を採る事が出来たのだけど、運悪く索敵魔法が僕に敵意を持った存在が近付いて来ている事を知らせてくれた。
「ルウス下ろして、魔獣か魔物が近付いて来ている!」
「(何!本当か!)」
「………」
「そう、だから下ろして」
「(いや待て!今のオレは物凄く力が漲っている!)」
「………」
なんだかとっても嫌な予感がするのだけど僕の気のせいでは無いよね?無いよね?
でも、肩車をされたのっていつ以来かな?父様と父様の従兄弟のグルトルさんに時々して貰っていたけれど、修行の旅?に出からは当然だけど二人にも会えて無いんだよね。
続きが気になる方、応援をお願い致します。
出来ればブックマークして下さると、モチベーションが上がります。
評価や感想も、お聞かせ下さいませ。
誤字脱字の報告も合わせてお願い致します。




