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僕は貧乏騎士爵家の四男です。僕の夢はお腹一杯美味しい物を食べる事です。  作者: きすぎあゆみ
1 エルシード・バルディア・ヴァルロッティー
24/47

24・初めてのテイムはミノタウロス?

続きです。

宜しくお願い致します。

皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。

「フー、フー、フー!」


「…!出てきました!小さいですけど子供ですか?」


「………」


「…フー、フー、フー!」


「…パルウスミノタウロスの子供ですか?」


「………」


 そして現れたルウスは全身が傷まみれで汚れていたけれど、それでも一生懸命に生きようとしていてその目は死んでいなかった。逆にどうにかしてでも生きようとしている執念と気迫の様なが宿っていたのかな?


「フー、フー、フー!」


「…子供でも迫力が有りますね、ちょっと怖いです…」


「………」


 でもルウスはまだまだ子供で背丈も僕よりも少し大きいくらいで、素手だったので魔獣や魔物を狩る事も出来ずお腹を空かせて森の中をさ迷って居たんだって。何でそんな事をしたのか今でも知らないけれど多分その内に教えてくれるよね?


 その時は完全に気紛れだったのかな?僕はチャージボアの肉の塊をルウスに向かって投げてみたんだ。


「フー、フー、フー!」


「この肉をあげたら、何処かに行ってくれるのかな?」


「………」


 僕か投げたチャージボアの肉に最初ルウスは見向きもしなかった。僕を警戒しているって言うのも有ったんだと思うけど、人を見るのも初めてみたいだったので僕の事を観察していた。


「…フー…フー…フー…」


「…何か見られて居ます…落ち着かない…襲って来ませんよね?」


「………」


 チャージボアを解体し終えると、僕は食事の支度を始めた。木の枝に肉を刺して串焼きにするために、肉の部位毎に何本か串焼き用の串刺し肉を作ったり、鉄の鍋を無限収納から取り出してウリケルさんの前世に有った豚汁じゃ無くて猪汁っていう料理を作ったりしていた。


「ゴクッ…フー…フー…フー…」


「…あんなに見られると気になるけど今は料理を作らないと、僕の御昼御飯が何時まで経っても食べられない…」


「………」


 僕がルウスに肉を投げて以来全く構うこと無く何かを始めてので次第にルウスの警戒心も薄れて来たのかそれとも空腹に耐えきれなかったのか、僕が料理に夢中になっている間に僕が投げたチャージボアの肉はすっかりルウスのお腹の中に消えてしまって居たんだ。


「ハグ、ハグ、ハグ、ゴクッ、ハグ、ハグ、ゴクッ」


「お肉も野菜も沢山有った方が美味しいよね!あっ、お米も炊かなくちゃ!」


「………」


 そして漂って来る初めて嗅ぐ空腹を刺激する匂い。僕はルウスの事を無視して料理を作っていたのだけど、いざ料理を作り終え御飯にしようかと思った時にはルウスの警戒心は美味しそうな匂いによって何処かに吹き飛ばされてしまっていた。その時のルウスの顔は口から涎を垂れ流し目は料理に釘付けで、これで御飯を分けてあげなかったら絶対に大暴れしていたよね?


「…ゴクッ…(ジー)」


「…何だか圧が凄い…これで御飯を分けてあげなかったら…絶対に暴れるヤツだよね…」


「………」


「…(ジー、涎ダラダラ)」


「…言葉が通じるか解らないけど、分けてあげるからもう少し待ってね?」


「………」


 僕は自分の御飯より先にルウスにあげる分の御飯を木のお皿によそった。串焼きは串から外し平皿に盛り猪汁は深皿によそって、食べるか解らないけど白米も別の深皿によそって僕とルウスの中間辺りに三つのお皿を並べて置いて、料理をしていた所に戻った。もしもルウスがお皿を強い力で扱ってお皿を壊しても、木製のお皿だから怪我とかはし難いよね?


「…ハグ、ウァグ、ムシャ、ムシャ、ハグ、ゴクッ、ハグ、ウァグ、ムシャ、ムシャ、ハグ、ゴクッ…」


「これでお腹一杯になってくれれば良いけど…」


「………」


 料理をしていた所に戻った僕はルウスの方を見ない様にしながら、自分の御飯の準備を始めた。この現実の次元?空間?世界?ではウリケルさんは御飯を食べられないので、余った料理はウリケルさんの晩御飯用に無限収納に片付けたよ!だって折角作った料理なんだから、ウリケルさんにも食べて欲しいよね。


「…ハグ、ウァグ、ムシャ、ムシャ、ゴクッ…」


「頂きます!」


「………」


「…ムシャ、ムシャ、ゴクッ…」


「…美味しい!串焼きの焼き加減も味付けも絶妙で、猪汁に溶け出した脂がまろやかにしてくれている?」


「………」


 そして僕が自分の御飯の準備が出来て御飯を食べ始めた時には、僕の背後からルウスの食事の音と気配が無くなっていたんだ。きっとお腹一杯になったから、自分の塒に帰って行ったのかな?


「…」


「…ハム、ハム、ハム、ゴクン…?ミノタウロスの気配が離れた?帰って行ったのかな?」


「………」


 それからと言うもの森の中を僕が移動していると、その後をルウスが付いて来る様になった。昼間は当然だけど、夜になると僕は異空間に有るウリケルさんの家に帰るので、僕の気配が消えた辺りを見渡せる場所でルウスは夜を明かして居るみたいだった。


「あっおはよう!」


「………」


「…フー!」


 この一年間、僕は同年代の友達と遊んでいなかったからなのかな?ルウスを構って居ると何だか友達と遊んでいた時の懐かしさを感じる事も有った。これって里心って言うのだっけ?ホームシックだったかな?故郷を離れると故郷を懐かしく感じるって言う…身内や友達に会いたくなってくるって…そう言えばこの一年無我夢中だったからそんな事を考える余裕も無かったよ…。


「今日の御昼御飯は、野菜たっぷりの肉野菜炒めだよ!」


「………」


「…ゴクリッ…」


「頂きます!」


「………」


「フー、バフッ!」


 ウリケルさんと何時も一緒に居るから寂しさとかは感じた事は無かったけれど、ふと家族や友達やヴァルロッティー村の人達の事を考えてしまうと今は簡単には会えないって事に急に寂しくなってしまった。


「今日の御飯は、何と大きな肉の塊を焼いてみました!」


「………」


「グォー!」


「切り分けるから少し待っててね!」


「………」


「…ゴクリッ!」


 だからなのかな寂しさをまぎらわせるために無性にルウスに構ってしまいたくなって、何度も餌付けをしたからなのかな?すっかり懐かれてしまって、どこに行くにも一緒に行く様になってしまっていた。狩りをするのも一緒だし、果物とかキノコとか薬草を採る時だって一緒に行く様になった。


 そんな時に不意に誰かの声を聞いた気がした。


「(クンクン。チビ、こっちにも不味い草が有る!)」


「?!誰?チビ?それって僕の事?」


「………」


「(そう、チビだからチビ!)」


「?!誰だ僕を馬鹿にするのは?」


「………」


「(チビにチビって言って何が悪い?)」


「チヒチビ五月蝿いな、一体誰?」


「………」


 その声は子供の物でどこか舌足らずな所な有って発音も少し悪いかな?でも、耳で声を聞いてるって言うよりは頭の中に直接的声が届いてるみたいな感覚が有るんだよね?これってウリケルさんの声が聞こえている時と似ているよね!って言う事は…?


「(どうしたチビ?お腹が痛いのか?うんちでも出るのか?)」


「お腹は痛くないし、うんちも出ないよ!さっきから聞こえてくるこの声は、もしかして君の声?」


「………」


「(オレ以外に、誰が居る?)」


「えっ、本当に?何で?って何事なの?」


「………(エルおめでとう、テイムが成功したよ!)」


 そして僕が聞いていた声は予想通りルウスの声だった!でも、僕とウリケルさんとルウスしかここには居ないのだから、消去法で行くとルウスしか残っていないよね…。


「(五月蝿い奴だな…って、あれっ?オレもお前の言っている事が解る?)」


「…へっ?これがテイム出来たって事ですか?」


「………(そうだよ、初テイムおめでとうエル!)」


 これが僕が初めてテイムを成功させた瞬間だった。テイムって魔獣や魔物達と心を通わせる事で成功するんじゃ無かったのかな?僕の場合はひたすらに餌付けをしていた記憶しか無いのだけど…これじゃ御飯でつったみたいな事だよね?胃袋を掴んだ的な?


 確かに御飯は分けてあげてたけれど何の下心も無い全くの善意だったんだけど、まあ、確かに同情も少しは有ったけどね。ルウスはそれで良いの?何だか御飯に釣られるって、それってウリケルさんの言い方だと「チョロい」とか「チョロくない?」って言ってたかな?


 でも、そう言う事だよね?

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