23・エルです!
冷えますね。
霜も降りていますし…冬支度をしなくては…。
続きです。
宜しくお願い致します。
皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。
「師匠、ここはどうですか?」
「………」
エルです…あれから一年、僕は六歳になりました。身長も少し伸びたし体重も少し増えたました。
「師匠、ここでも駄目ですか?」
「………」
だけどね…僕とウリケルさんはずーーーっとずーーーっと森の中を北に向かって歩いているんだ…一年間もだよ!なんでーーー?って、それはウリケルさんが「うん」って首を縦に振らないからなんだ!「もう少し北に行こう」ってその繰り返しだったんだ。
「では、もっと北に行きますね!」
「………」
そもそも僕とウリケルさんは修行をする場所を探すためにヴァルロッティー村の北側の森で、尚且つ村人達に見付かり難い場所を探していた筈なのに気が付いたら一年も森を北に向かって歩いている。
「えいっ!、とうっ!、やー!」
「………」
「やったー!お肉ゲツト!」
「………」
だけどね、そのお陰で色々な魔獣や魔物と戦って美味しいお肉を手に入れたり、ヴァルロッティー村では見た事も無い果物や薬草やキノコや香辛料なんかも手に入れたんだ。
「あれは…美味しそうな食材?発見!採って来ますね!」
「………」
それと魔獣や魔物の解体の仕方もウリケルさんに習ったし、料理も簡単な物なら自分でも作れる様になったよ。小剣の手入れも自分で出来る様になったし、簡単な裁縫とかも今では出来るよ。
「何か他に珍しい食材は無いですかね?」
「………」
流石に一年間も森の中を歩き続けて魔獣や魔物と戦ったり、色々な食材や素材を集めたりしていたから、体力も付いたと思うしなんだが身体も丈夫になったみたい。だって最近では魔法を使っても疲れ難くなったし、魔獣や魔物と身体強化を使えば剣だけでも戦える様になったんだ。だから自分でも逞しくなったと思うんだ…と思うよ?の筈だよ!
「あっ!また、魔物が近付いて来ます。倒して来ますね!」
「………」
相変わらず森の中の移動は快適で、毎日三食温かくて美味しい御飯と小休止の時にはお茶やジュースとお茶菓子が食べられるし、夜になるとウリケルさんの家に帰って晩御飯食べてお風呂に入ってベッドで寝られるからとっても過ごし易いんだ。
「師匠、今日も一日色々とありがとうございました」
「うん、エルも強くそして逞しくなったね。魔法を使っても疲れ難くなったみたいだし身体が魔法に慣れて来たのだと思うけど無理は禁物だよ!」
不満を挙げるとしたら、家族や友人や知り合いに、そうヴァルロッティー村の人達に会えない事かな。でもね、村で有った出来事や家族の情報や僕の友達の情報や近況は、影武者スライムから逐一報告が有るからヴァルロッティー村から物凄く遠く離れて居るけど、りあるたいむでたいむりーな情報を知る事が出来るから何時ヴァルロッティー村に帰っても話題に付いて行けるし、皆との会話にも困らないと思うよ?
「はい、ありがとうございます」
「今みたいに傲らずに、今後も何事にも手を抜かず頑張ろう!」
そして影武者スライムなんだけど、僕が成長するのに合わせて影武者スライムの外見も変わっているってウリケルさんが言っていたんだ。それはそうだよね、いくら僕が同年代の中で村で一番の痩せっぽちのチビでも一年間も成長しなかったら、病気とかの可能性を疑われるよね。
「はい、解りました!」
「北に行けば行く程魔物達は強くそしてズル賢くなって来るけど、今のエルならきっと大丈夫だろう」
「そ、そうなんですか…何だか怖いですね…」
「気を抜かず油断せず魔物に先手を打たせず、エルが先手を取れれば多分大丈夫と思うよ」
「…多分なんですね」
「何か有ったその時には、私が控えて居るからそこまで気にしなくても大丈夫!」
「そっそうですよね、師匠が居ますから大丈夫ですよね!」
「その時は私に任せなさい!」
「ははははは…」
「わっはっはっはっはっ…」
そう言う事なので明日からも引き続き、森の中を北に進むそうです…。
そうそう忘れるところだった。影武者スライムって言えば僕も遂に魔物をテイムする事が出来たんだよ!影武者スライムはウリケルさんがテイムしているスライムなんだけど、僕も魔獣や魔物をテイムしたいとずっと思っていたんだ。だって、僕は虫や蜥蜴を捕まえてから家来にしてそしてそれを大きく育てて、姉様と一緒に家来にした虫や蜥蜴に乗るのが一年前までの夢の一つだったんだからね。
「森の中の魔獣や魔虫は村の中の蜥蜴や虫と比べると、物凄く大きいですね!」
「………」
「でも、普通に蜥蜴や虫も居ますし、食物連鎖でしたっけ?弱い者の全てが食べられる訳じゃ無いんですね!」
「………」
だけど僕が捕まえた虫や蜥蜴は大きく育たないって、姉様から聞かされた時にはどんなに衝撃的だった事か…だって父様や村の大人達が月に一度軍事訓練も兼ねて森の中に狩りに行くのだけど、その時に狩って帰ってくる虫や蜥蜴は子供が乗れるくらい大きいし、年に数度は大人でも乗る事が出来るくらい大きな虫や蜥蜴も狩れるんだよ。なのに普通に村に居る虫や蜥蜴は小さいままなんだって、普通の生き物と魔獣や魔虫の違いなんて小さな子供には解りっこ無いよね。
「だけど、魔獣や魔虫はテイム出来ませんでした…」
「………」
「家来にして姉様と一緒に蜥蜴や虫に乗るのは、未だ叶わない夢ですね…」
「………」
そして僕がテイムした魔物はパルウスミノタウロスって言うミノタウロスなんだけど、物語りとかに出てくるミノタウロスって大人の背丈の倍近い大きさで筋骨隆々の力持ちで、迷宮の番人とかってイメージが有るのだけどそれとは違い森とか山に住む野良?野生の小さなミノタウロスなんだ。
パルウスって言うのが小さなとか小さいって意味なんだけど、その名の通り小さなミノタウロスって言ってもそれは有名なミノタウロスが大きいからで、そのミノタウロスと比べると全然小さくて本当に同じ種なのかと思ってしまうけれど、それでも人の大人の背丈くらいにはなるのだけどね。
「…何かが近付いて来ていますね…」
「………」
「気配を消していませんけらバレバレですけど、殺気は有りませんね…」
「………」
そして僕がテイムしたのはパルウスミノタウロスの子供で群れからはぐれたもしくは捨てられた、はぐれミノタウロスだったんだ。
「索敵魔法でも危険は無さそうですね…」
「………」
「回りに他には魔獣や魔物は居ませんね…」
「………」
「…解りました、今は無視の方向で…」
「………」
僕とウリケルさんが何時もの様に森の中を歩いて居たのだけど、時々ウリケルさんが課題とか宿題を出す事が有ってそんな時にルウスと出会ったんだ。あっ「ルウス」って言うのか僕がテイムしたパルウスミノタウロスの子供の名前だよ!
「ミノタウロス?ですかね?」
「………」
「パルウスミノタウロスですか?」
「………」
ルウスと出会った時にウリケルさんから出されていた課題は、魔獣や魔物を狩ってその狩った魔獣や魔物を処理して素材毎に解体して、更に食べられる部位で食事を作る事だった。但し全ては森の中で行う事、ウリケルさんの家や家に有る道具や器具は仕様使用禁止、魔法は使っても良いの三つの条件付きのウリケルさんの言い方だと「縛りプレイ」?だった。
「今の所危険は無さそうですし、師匠の課題に集中しますね!」
「………」
「この辺りに魔物の反応が有りませんから移動します!」
「………」
全然厳しい条件じゃ無かったけど、これはきっとウリケルさんなりの優しさなのかなとは思ったけどね。
「あっ、何か他にこっちに向かって来ている魔獣ですかね?がいます」
「………」
「チャージボアか…今の僕だったら、上手く魔法を使えば狩れる相手ですね!」
「………」
「ふうっ、何とか狩れました!」
「………」
そして課題を順調に進めて居る時にルウスが更に近付いて来たんだ。それは、僕が若い猪の魔獣のチャージボアを魔法で牽制しつつ小剣と身体強化で倒して、そのチャージボアを解体している時に不意に森の中から現れたんだ。ルウスが近付いている事は索敵魔法で気が付いていたし、何よりも敵意が無かったので警戒はしていたけれどこちらからは威嚇とかは特にしていなかった。
「…今日は美味しいお肉が食べられるぞ!」
「………」
「早く血抜きをしないと、折角のお肉をが駄目になってしまう」
「………」
森の木に身を隠しながら少しずつ近寄って来るルウス。索敵魔法ではグレーだったから放置して、僕はチャージボアの解体に勤しんでいた。身体強化の魔法で木の枝にチャージボアを吊るして血抜きをして、抜けきらなかった血は生活魔法のウォッシュで洗い流してから解体して行った。
「若いチャージボアですから、脂身が少ないですね」
「………」
「でも、赤身は食べごたえが有りそうですね」
「………」
森の中で魔獣や魔物を解体していると、獲物の血の匂いで他の魔獣や魔物を引き寄せてしまう事って良く有るから、風の魔法で血の匂いを無臭化したり遠くに飛ばしたりと色々と工夫はしていたよ。
「…牙とか毛皮の素材関係は消毒して取り敢えず無限収納に入れて…」
「………」
「…スープの材料になりますから、骨も消毒して無限収納に入れますね…」
それなのにルウスは獲物を解体している僕に近付いて来たんだ。僕がチャージボアを倒す所を見ていたのも有るのかも知れないけれど、もしかしたら僕が狩ったチャージボアはルウスが狩ろうとして狙っていた獲物なのに、僕がその獲物を横取りしてしまったのかな?
もしそうだとしたら、悪い事をしちゃったのかな?
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