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僕は貧乏騎士爵家の四男です。僕の夢はお腹一杯美味しい物を食べる事です。  作者: きすぎあゆみ
1 エルシード・バルディア・ヴァルロッティー
19/47

19・ある日森の中でオークさんに出会った

続きです。

宜しくお願い致します。

皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。

「ブヒ?」


 オークは僕を見詰めながら仕切りに鼻を引く付かせている。きっと僕が美味しそうなのか、匂いで判断しているんだよね…!ピンク色っぽい肌は全裸に近く腰にボロ布を巻いているだけで、手には太い木の棒を持っている。あんな棒で殴られたら、僕なんて一溜りも無いよね…。


「ブヒ、ブヒ、ブヒ、ブモォ?!」


 何故だか解らないけれど突然オークはむせて咳き込み出した。


「ブモォ、ブモォ、ブモォ…」


 強面の筈のオークがむせて咳き込んで涙目になっている。でも、何でむせたのかな?


「クン、クン、クン…」


「………」


 僕もオークがむせた原因を知りたかったので、オークを真似て辺りの匂いを嗅いでみた。森の中にいるので草木が放つ緑の匂いと僕が刈った藪の濃い緑の匂い、それに混ざる様に下草や腐葉土などの湿気をおびた少しすえた様な匂いに混ざり鼻にツーンと来る匂いがする。


「おえっ…くっ、臭っ!!」


「………」


 何でなのかは解らないけれどそのツーンと来る匂いを嗅ぐと、目の奥が痛くなったみたいに涙が出てきそうになる。僕はその匂いの出所が気になったので視線で匂いを辿って行くと、どうやら僕がその匂いの発生源は僕の下半身…僕がお漏らしをした部分からだった…。


「この匂い、とれるのかな?」


「………」


 余りの恐怖のために嗅覚がいつもより敏感になっているからなのか、それとも僕の恐怖から来る生存本能のために僕の粗相の匂いが近寄りたくなくなる程の嫌な匂いを放っているのか?どちらなのかな、僕には解らないや!…それに今はそんな呑気な事を考えている場合では無いしね。


「洗浄魔法と浄化魔法で大丈夫ですか?」


「………」


「それなら良かったです」


「………」


「ブフォ!」


 何故だかオークの表情が険しくその目付きも鋭く、視線だけで気の弱い人なら気絶してしまうか死んでしまいそうな気がする程の眼力で僕を睨み付けて来る。無いとは思うけど僕に無視されて怒っている訳じゃ無いよね?


「ひっ…」


「………」


「フー!」


 怒こらせてしまった?オークを恐る恐る見上げると目が合ってしまった…。その目を見ただけで自分が殺されてしまう未来しか見えない。その目付き顔付きそして何よりも鍛え上げられた肉体の前では、僕は何てひ弱な存在なんだろうって思えてならない。痩せっぽちで小さくて筋肉と呼べる物は殆ど無い、ただの子供だ。五歳児だから仕方が無いけれど、僕ももっと鍛えなければいけないよね!


「し、師匠、あのオークは何故か怒ってませんか?」


「………」


「フーフーフー!」


 豚面だからって訳じゃ無いとは思うけど、鼻息が物凄く荒くなっている…でもそんなに鼻息を荒くさせたら僕の粗相の匂いを沢山吸い込んでしまうんじゃ…?


「ブフォッ、ブフォッ、ブフォッ…」


 言わんこっちゃ無い…だから言ったのにって何も言って無いか…。オークって確か魔獣じゃ無くて魔物に分類されていると思うけど、身体は人族に近いから道具を使えば武器も防具も装備している者も居るらしい、そして頭が豚?猪?なので嗅覚も鋭いんじゃ無かったっけ?


「勝手に怒ってむせて咳き込んで、オークって良く解りませんね?」


「………」


「グフォッ、グフォッ、グフォッ…」


 何故かオークが可哀想に思えて来たのだけど、僕の勘違いなのかな?ってそんな風にオークを哀れんだからと言って、僕を見逃してくれるとは思わないし有り得ない。オークからすると人族の子供は大好物なんだって…そんな事知りたく無かったよ!


「えっ、普通のオークだからあまり頭は良くは無いのですか?」


「………」


「フー、フー、フー!」


 オークなんだけどその中でも、普通のオークなので頭はあまり良く無いらしい。オークでも知恵や技能や特殊能力を持った中位種や上位種になると、町や村が壊滅してもおかしくは無い被害が出る事も珍しくは無いそうだけど、特にオークキングとかオークエンペラーになると国が滅びるレベルなんだって…僕の目の前に居るのはあくまでも普通のオーク。


「でも、体力や力は人族よりも遥かに有ると…」


「………」


「…!」


 オークの怖さはなんと言ってもその鍛え上げられた肉体から繰り出される破壊力。全身を覆う鍛え上げられた筋肉と、更にその筋肉を守る様に覆われた分厚い脂肪。多少腕に覚えの有る程度の人の剣や弓矢なら脂肪で防がれてしまって、とても筋肉やその中に有る内蔵に傷を付ける事は出来ない。だから距離を稼げるし力も乗る槍で突く攻撃が有効だし、それか刃物よりは棍棒などの打撃が有効らしい。打撃なら少しづつだけど確実にダメージを蓄積させられるし、運が良ければ骨折もさせられるかも知れないよね。でもそれをやってしまうと肉が美味しく無くなるから、棍棒でオークを仕留める時には頭を狙って確実に…って今はそんな事を言っている時じゃ無いんだった。


「うわっ!」


「………」


「ブブー!」


 油断したつもりは…する余裕も無かったけど、突然オークが木の棒を振り上げて襲い掛かって来た。オークとの距離も有ったから普通に避けられたけどビックリした、まさかあの状態で突然襲い掛かって来るなんて思ってもみなかったよ。


「…大きいのに速い!あんなのに攻撃されたら…」


「………」


「フー、フー、フー!」


 まさか僕に避けられるとは思っていなかったのか、僕がオークの攻撃を避けた事で更に怒らせてしまったみたい…こ、怖いし、逃げ出したいよ…!


「し、師匠!怖すぎます、逃げても良いですよね?」


「………」


「ブヒィー!」


 僕がウリケルさんに逃げる事を提案したげれど、却下されてしまった。その理由は餌として認識されてしまったので例え逃げ出せたとしてもどこまでも追い掛けて来るので、今ここで倒してしまわなければ村まで追い掛けて来るからだそうだ。


「またっ!」


「………」


「ブブー!」


 呑気にじゃ無いけどウリケルさんと相談していたら、オークの二撃目が襲い掛かって来た。直線的な動きでの突進からの木の棒での攻撃。それも何とか避けられたと思った瞬間、オークが振り抜いた筈の木の棒が突然向きを変えて僕に襲い掛かって来た。僕はとっさに小剣を身体の前に構えて盾代わりにしたけれど、オークの物凄い腕力で吹き飛ばされてしまった。


「…ッ…!」


「………」


「ブブッ!」


 手には物凄い衝撃が走り小剣を手放しそうになり、それと同時に身体は浮遊感に包まれたと思った瞬間僕は数秒間だけど空中を移動していた。そして空中の移動が唐突に終わると共に、背中から何か硬い物にぶつかってしまった。


「グハッ!」


「………」


「ブフー」


 僕はオークに吹っ飛ばされて背中から木に衝突したみたいだった。手にはオークの攻撃を受けた衝撃と、そして全身には木に衝突した衝撃とでとても息が出来る状態では無かった…それを見たオークはここぞとばかりに止めを刺すために僕に近付いて来ていた。


「…?!」


「………」


「ブブー!」


 僕に止めを刺すためにオークが手に持った木の棒を振り上げた!


「…!」


「………」


「ブフフー!(ニヤリ!)」


 木に衝突した衝撃で息が出来なくなってしまって、状況を判断する事も出来なくなってしまった僕は…あれっ?息が普通に出来る?そして見上げた先には木の棒を振り上げニヤリと笑った様に見えるオークの顔が見えた。僕は咄嗟に横に転がる事でオークの止めの一撃を避ける事が出来た。


「…死ぬかと思った!」


「………」


「ブヒィ?」


 オークの攻撃は僕が居なくなってしまった事で地面に激しく衝突してしまっていた。…あんな一撃を喰らってしまったら僕なんて木っ端微塵になってしまうのでは?そうなってしまったら僕を食べる事は出来なくなるよね?そんな疑問が頭を過ってしまった。


「あ、危なかった…」


「………」


「ブモォ?」


 その瞬間オークの地面への一撃が止めになったのかは解らないけれど、僕が衝突してしまった木が折れてしまった。それもオークに向かって倒れて行った。僕に止めを刺す筈だった一撃が空振りに終わってしまい、転がって避けた僕に意識が向いていたオークはその事には気が付いていない。


「あ、わわわわ…!」


「………」


「ブキッ?」


 そして僕に向かって向き直ったオークはその時初めて木が折れる音に気が付いたのか、木の方を向いてしまった所に木が倒れ込んで来た。オークは自分に向かって倒れて来る僕の身長ほどの太さの有る木を抱っこしてしまい、その格好のまま後ろへと倒れてしまった。


「た、助かった、のかな?」


「………」


「ブキー、ブキー、ブキー!」


 オークは自身の上に載る木に抱き付いた格好なのに、木の下から抜け出そうと必死にもがいている。木から手を放せば良いのにって思っているのは僕だけなのかな?

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