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僕は貧乏騎士爵家の四男です。僕の夢はお腹一杯美味しい物を食べる事です。  作者: きすぎあゆみ
1 エルシード・バルディア・ヴァルロッティー
18/47

18・エル、森の中で…

続きです。

宜しくお願い致します。

皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。

「…はあ、はあ、はあ、はあ…」


「………」


「…はあ、はあ、はあ…解りました少し休みます」


 初めての実戦?狩り?を経験した僕はウリケルさんの勧めも有って、小休止する事にした。精神力強化の魔法を使っていたのでそれ程疲れてはいないと思っていたけれど、魔法を解除すると途端に緊張や身体が強張ってしまい、魔法の有り難さを痛感した。


「………」


「…そうですね…そうします…」


 ウリケルさんの指摘も有り、心と身体を落ち着かせるために甘い物を摂る事にした。ウリケルさん曰く、疲れた時には甘い物が良いんだって。僕はウリケルさんから受け継いだ無限収納から、お皿に載せられた甘い焼き菓子とカップに注がれた暖かいお茶を取り出して、それと森を歩いて居る時に見つけた果物も取り出した。そこで僕は簡単な食事を始めた。


 森の中奥に行くに従い人が頻繁に出入りする事が無いので、果物や木の実そして薬草の宝庫だった。僕は森を進みながらもウリケルさんの実地での指導を受けながら、果物や木の実や野草の採取も行っていた。


「………」


「…魔法の恩恵は偉大ですね…魔法無しではとても…魔獣を倒す事なんて…無理な気しかしません…」


 甘いサクサクとふわりとした相反する食感が楽しめる焼き菓子を一口噛り、ゆっくりと咀嚼する。焼き菓子が崩れる度に口の中に甘さとサクサクとふわりとした食感が広がって行く。焼き菓子を飲み込むとそれを更にお茶で流す。


「…甘い…美味しい…落ち着く…」


「………」


 そしてもう一口焼き菓子を噛る。そして咀嚼して飲み込むと、更にそれをお茶で流す。焼き菓子とお茶が無くなるまで数回繰り返した頃には、すっかりと心は落ち着きを取り戻し緊張や身体の強張りもどこかに行ってしまっていた。


「師匠ありがとうございました、何とか緊張が解れたと思います」


「………」


 その間周囲をウリケルさんが警戒してくれていたので、少しの時間だけどゆっくりと過ごす事が出来た。


「貴重な食料だから無駄には出来ませんね。それに殺してしまった命は無駄無く頂かないとバチが当たってしまいます」


「………」


 食べ終わったお皿とカップとそれと僕が狩ったコッケ鳥三羽を無限収納に入れて、僕は出発の準備を整えた。自分に身体強化の魔法(体力と筋力と反射神経と精神力)を掛ける。今回は始めから、反射神経強化精神力強化も掛ける事にした。


「さっきは肉体の強化の事しか考えていなかったけど、同じ失敗はしないぞ!」


「………」


 それと忘れてはいけないのが索敵の魔法だ。この魔法は付近(半径が僕の歩数で約四十歩くらいかな?)に居るもしくは近付いて来る相手の数と僕に敵意の有る無しが解るしそれと大まかな敵意の有る存在の強さと、敵意が有れば赤く頭の中に(僕の感覚として)?表示されるし敵意が無ければ青く表示される。強敵なら赤色がより濃く、そして敵意や強さが弱くなるに連れて赤色が薄く表示される便利な魔法だ。もしも黒く表示される様で有れば絶対に近付いてはいけない存在って事らしいので気を付けないといけない。それと僕に無関心ならグレーで表示されるらしい。


 でも索敵範囲が円で僕の頭の中に表示されて居るのだけど、これってどうにかしたら地形とか僕が居る場所が解る様に…例えば地図とかにならないのかな?


「今のところ…近くには僕に敵意を持った存在は…居ない…みたい?」


「………」


 自分に魔法を掛け終わり手に持った剣の状態も確認する。これは鑑定魔法って呼ばれる便利な魔法が有って、例えば僕が持っている剣なら≪両手持ちの小剣(子供用)≫と僕の頭の中?に表示される。更に集中して見てみると(状態 良好)って頭の中?に浮かんだので問題無くまだまだ使える事を示していた。


「準備も出来ましたので、師匠、探索を再開しますね!」


「………」


 僕とウリケルさんは再び森の奥へと向かって歩き出した。歩き易い様に藪を切り払い森の奥へと進んで行く。向かう先はヴァルロッティー村を拡張しても当面は人が足を踏入れる可能性が低い場所。


「まだまだ奥に行かないと駄目ですか?」


「………」


 本当は空から地形や目標物や目的地とかが見れたら良かったのだけど、その辺に居る普通の鳥をテイムして空に放ったとしても、森に住む鳥形の魔獣に食べられておしまいって事になる可能性しか見えない。


「大分進んだと思いますけど?」


「………」


 ウリケルさんの魔法で鳥を強化したり、鳥を襲う魔獣や魔物にテイムをし替えたりすれば良いのだけど、それだと僕の修行にならないので駄目なんだって。僕がテイムを出来たら良かったのだけど、先ず鳥を捕まえる時点で断念してしまった。


「解りました、進めるだけ進んでみます!」


「………」


 だって僕の姿を見付けると直ぐに逃げ出してしまうんだよ…それをどうしろって言うんだよ…。それにテイムをした事が無いから、テイムの仕方も知らないしね…。これは時間が出来た時に練習するしか無いよね。


「藪が深くなってきて、だんだん進み難くなって来ました!」


「………」


 だから自分の足で森の中を進むしか無いのだけど、森の奥へ向かって進むにつれて僕の行く手を阻む藪が深くなっていく。幸い僕に身体強化の魔法を掛けているのと僕が手にしている小剣はウリケルさんお手製の品で、剣の材料、剣の造り、剣の使い勝手とかがとても良い物なんだけどそれに加えて、刀身の強化、切れ味強化、魔法付与、研ぎ不要、状態保存など数多くの魔法が付与されているんだって!


 それに僕が今着ている衣服も、僕が普段着ている服やズボンよりも品質が良い…いや、とーーーっても良い物でこれもウリケルさんのお手製なんだって。特殊な生地で作られた服やズボンは、それだけでも破れにくかったり防刃効果が有るみたいだけど、更に体力上昇、魔力上昇、物理防御力強化、魔法防御力強化、汚れ防止、状態保存の魔法が付与されているだなんて凄すぎてもう何が何やら解らなくなってしまって、驚くのにも疲れたよ。


 だから藪や木の小枝などで服やズボンを引っ掛けてしまっても、布のほつれどころか引っ掻き傷すらも見当たらない。


「強化魔法と師匠の剣と服のお陰で全く苦になりませんけど、まだまだ奥に行くんですよね?」


「………」


 僕の鑑定魔法の熟練度が低いので何の魔法が付与されているのかは見られないけれど、いくら藪を切り払っても切れ味が落ちる事は無く、先程のコッケ鳥を狩った時に骨を斬ったと思うけど小剣には何の影響も無かったと思う。僕なんかがこんなに上等な剣を持っていても良いのかな?でも安全第一を考えると絶対に必要だよね。


「深い藪も抵抗無く簡単に斬る事が出来ますし、ほらこの細い木だって一振で斬れてしまいます!」


「………」


 ウリケルさん製の小剣で密度が濃くなってきた藪を切り払いながら進んでいると、索敵の魔法に反応が現れた。僕の索敵の魔法はこれも熟練度が低いので索敵出来る範囲は広くは無いのだけど、ウリケルさんは多分随分前から気が付いて居たと思う。


「師匠…何だが物凄く強そうなのが向かって来ています…」


「………」


 数は一つだけど色は真っ赤を通り越して赤黒い?その反応は一直線に僕へ向かって突き進んで来ている。僕の索敵範囲に入って来たと思った時には、もう目の前にそれは姿を現していた。


「ひっ…オ、オーク?!」


「………」


 それはこの世界では有名な魔物の一つで、オークと呼ばれる魔物だった。身体つきは人族と同じ様な二足歩行なんだけど身長も人族と同じくらいで全身が筋肉と脂肪に覆われていた。ウリケルさんの前世の異世界で有名なスポーツ、相撲の力士やプロレスラーを彷彿とさせる大きな身体に豚や猪の頭部がくっついた様な見た目をしていた。


「し、し、し、師匠…に、に、に、逃げても…い、い、い、良い…ですよ…ね?」


「………」


 皮膚の色も種族?によって違うのかな?薄ピンク色や黒や茶や黒と白の斑模様とか皮膚の色も個体によって様々らしい。何故らしいって言うのか、それは僕がオークを実際に見た事が有るのは数える程、それも狩られた後の死体だけどね。父様達が森に狩りに行った時に年に一匹?一頭?一人?狩れるかどうかって確率だから知恵も有って人里には余り近付かないのかも?


「か、か、か、狩れって…む、む、む、無理…ですって…」


「………」


 見た目通り筋肉と脂肪に覆われた身体は刃物で切りつけても表面の皮膚と脂肪で刃物を止めてしまって、そして鍛えられた筋肉から繰り出される攻撃は非常に強力で一匹を大勢で囲んで倒すしかない、村の近くに現れる魔物では一番の強敵だった。幸いと言って良いのかは解らないけれど怪我人は出るけど、死者が出る事が無かったみたいで良かったけれど。


「オ、オ、オ、オーク、で、で、で、ですよ…!」


「………」


 もし攻撃魔法が使える魔法使いが居たとしたら全く状況は変わって来るみたいだけど、この辺境のど田舎に魔法使いが訪れるなんて聞いた事も無いし、そもそも魔法使いなら都会に行けば仕事が沢山有るみたいなのでわざわざこんな田舎には来ないよね。


「むっ村の、大人の人達でさえ、よってたかって、一匹を倒すのが、やっと、なんですよ!」


「………」


 そのオークは主に食用にされるんだ。肉はどんな料理にしても美味しいし、保存食用に加工される事も有るし、内蔵も煮たり焼いたりして食べられる。脂肪は料理用の脂としても使われるし、スープの具になったり、脂身をそのまま焼いて食べたりもする。


「そっそれを、僕一人で、狩るだなんて…」


「………」


 オークが狩れた時は村人総出でその日の内に食べ尽くす肉の日にするのが、ヴァルロッティー村では恒例の行事になっていた。


「殺れって…そんな、他人事、みたいに、言わないで、下さい、よ…!」


「………」


「ブヒィーーー!」


 しかしオークの生きている個体は初めて見たのだけど…迫力が凄すぎて…オークの雄叫びを聞いただけで…笑わないでよ…漏らしちゃった…。だけど言い分けをさせて貰うけど大じゃ無くて小の方だからね!


 …グスン…。

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