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僕は貧乏騎士爵家の四男です。僕の夢はお腹一杯美味しい物を食べる事です。  作者: きすぎあゆみ
1 エルシード・バルディア・ヴァルロッティー
10/47

10 僕は貧乏騎士爵家の四男です。

続きです。

宜しくお願い致します。

 僕の名前はエルシード・バルディア・ヴァルロッティー、五歳、ヴァルロッティー騎士爵家の四男です。家族や親しい人達は僕の事を≪エル≫って呼びます。長い名前なので僕は名前を名乗る時には、ゆっくりとキチンと発音して名乗る様にしています。


 僕の家は騎士爵家と言う爵位持ちの貴族で、ヴァルロッティーと言う家名と同じ名が付けられた、ヴァルロッティー村を治める領主をしています。


 しかし、騎士爵家と言うのは世襲と呼ばれる子供が親の爵位を継ぐ事が出来る貴族の中でも一番低い爵位だそうです。貴族には大公・公爵・侯爵、辺境伯・伯爵・子爵・男爵・準男爵・騎士爵・士爵と有りこの中で言えば下から二番目だけど、士爵と言うのは一代限りの名誉貴族と呼ばれる爵位で、騎士爵と同等の爵位だけども子供が親の爵位を継ぐ事が出来ないそうです。


 僕の家が治めているヴァルロッティー村は村人が約三百人で家も約六十軒建っています。村人と言ったけど正確にはヴァルロッティー村の住人はヴァルロッティー騎士爵領の領民と言うのが正解だそうです。僕はこの村以外を知らないので解らないけど、父や母や兄達が言うにはここヴァルロッティー村は村の中ではそこそこ大きな村なのだそうです。


 主な産業は農業で、麦と芋類と野菜を作っています。僕の家は領主だけど、僕の家にも畑が有るので家族皆で畑に出て朝から夕方まで働いています。今のところ産業は農業だけだけど今は農業と開墾に力を入れていて、少しずつ畑を広げて行って収穫量を増やして行くのが我ヴァルロッティー家とこの村の目標って皆が言っていました。畑での収穫量を増やして村人全員に食べ物が行き渡る様にすると、新たに入植者を募集して村人を増やす事が出来るし、その他の産業にも力を入れる事が出来るからだそうです。


 それに今住んでいる農家の次男や三男やそれより下の子供達にも家や畑を持たせる事が出来る様になれば、ヴァルロッティー村に残って農家を継ぐ事になるので、そうなると更に収穫量と人口も増やせるのでそれがヴァルロッティー領の発展に繋がるそうです。


 何故こんな辺境のど田舎に僕達が住んでいるのかなんだけど、大体百年くらい昔になるのかな?他国との戦争などで武勲や功績を挙げた二十数名の下級貴族家の次男以下に、褒賞と共にこの土地を開墾するための資金と合わせて下賜された。数家はこの土地の過酷さを知っていたので辞退して、入植せずに褒賞だけを受け取って領地無しの騎士爵家として王国内の各地に配属されたそうです。


 しかし、実家が準男爵や騎士爵家、士爵家などの下級貴族で有ったためコネの無い若者達は、渋々ながらも王家や各貴族家や商人達が集めた入植希望者達と共にこの広大な自然の中に入植して行った。一応王家からの資金や物資の援助は有ったとは言え、それらは無限に有る訳では当然無くそれらは明らかに年々少なくなって行ったみたいです。


 新興の騎士爵家二十数家で約五千人規模の入植者達は、街道と森を結ぶ森の入り口に造られた町から順次森の中へと分け入って行った。事前に王家が調査して水場に程近い場所に村を作る様に各家に場所を指定されていたが、道無き道を進むために人々の移動速度は遅く長く掛かった所などは、村の予定地に到着するまでに一年以上を費やした騎士爵家も、数家出る程だったらしいです。


 村の建設予定地に向かう途中の障害は、何も森の木々だけでは無かったそうで、今までここは人があまり足を踏み入れる事の無かった土地だったので、見た事も無い人を襲う野獣や虫などは奥に進めば進むほど多くなるし、食虫植物ならぬ食人植物としか表現のしようが無い植物なども生息していたみたいです。


 森の中を進む速度も遅く、疲労と苛立ちで人々の心は次第に蝕まれていった。それでも引き返す事の危険さを考えると、前に進むしか選択肢は残されていなかった様です。


 常に危険と隣り合わせの行軍の末やっとの事で村を建設する予定地に到着しても、それからが更なる過酷な日々の始まりだった。森の野獣や害虫、食人植物を警戒しながら毎日少しずつ下草を刈り木々を切り倒し、木の根を掘り起こし岩なども掘り起こして、少しずつ平らな土地を広げていった。入植した村民達全員の家が建つまで三年以上かかり、畑を造り村が形になるまで十年以上、それから本格的に農業が始まり村人全員分の食料が賄える収穫量になるまでに約二十年が経過していたそうです。


 この頃になると早い所では既に世代交代が行われ、二代目に代替わりしている家も出てきていた。森の中での生活のあまりの過酷さに、途中で諦めて森の入り口の町に引き返して、入り口の町や他の町や村で生活する村人も出ていたし、爵位と土地を返上して他の町や村で平民として生活する元貴族も現れ出した。


 野獣などの被害も多く、大型の野獣の群れに襲われて村の半分近くの人が死んでしまった村も有った。人口が大きく減ってしまった村は放棄され、住人は近隣の村へ引っ越すか森を出るしか残された道は無かった。もし野獣に襲われた村に少なくなってしまった住人達が残っていて、次に襲われてしまった場合には全滅の可能性が有ったからだ。


 広大な森の中に最終的に残ったのは、四家にまで減ってしまっていた。今では他の騎士爵家よりは年金額が多いとは言え、村を維持するだけで手一杯な状態だった。入植から続く開墾作業と、農作業、森の野獣や害虫や食人植物への警戒や駆除、それは毎日休む事無く行われ少しずつだが、入植当初と比べると大分ましな生活を送れるようにはなっていた。


 …ここまでが僕が生まれるまでのヴァルロッティー家の歴史かな?何で僕はそんな事を知っているのだろうね?




 …そして僕は目を覚ました…。


「……」


 木窓から射し込む陽射しが僕の顔を直撃して凄く眩しい。


「…ここは、どこだろう?」


 陽射しから顔を背けて回りを見てみた。見た事が有るけど、どこか記憶と違う部屋だ。何故だろう?


「あれっ?僕は何をしていたんだったっけ?」


 頭がボーッとしていて靄がかかっているみたい。寝起きみたいだからね。だってベッドに寝ているから。


「あっ、ウリケルさんじゃなくて、師匠おはようございます!」


 ベッドの横にウリケルさんが座っていたので、師匠に挨拶をした。師匠や目上は敬わないといけないって教わったからね。誰に教わったかって?それは当然、師匠からだけどね。


「…」


「えっ、もう夕方ですか?」


 夕方って…そう言えば今日の記憶が無い。朝起きてからって言うより、今の今までの記憶が無いってどう言う事なのかな?


「…」


「でも、何で僕はこんな所で寝ているのかな?」


 ここはどう見ても僕の家の納屋だよね。納屋の中に有る休憩用の小部屋。何でこんな所にベッドを置いて寝ているのかな?うーんさっぱり覚えていないや!


「……」


「えっ…僕は倒れたんですか?」


 そう言う事らしい。師匠の話では僕は何時もの畑のお手伝いで石拾いをしていたのだけど、師匠が教えてくれる場所を掘ると必ず石が出てくるので、それが楽しくなって師匠と一緒になって沢山石を沢山掘り出していたんだった。


 その時に師匠が教えてくれた場所から不思議な半透明の丸い玉みたいな物が出てきた。それは≪叡知の結晶≫や≪理の実≫って言われる物で、それには不思議な力が有ったんだ。


 それは師匠の知識を封じ込めた物で、僕は師匠に言われるがままそれを吸収した事で倒れてしまったと言う事みたいだった。それから約四十日くらい経っているみたいだけど…って約四十日も僕は寝ていたの?その間のご飯は?トイレは?


「……」


「えっ…≪理の実≫を吸収した事で寝ていた間、食事も排泄も必要の無い状態になっていた?…って」


 僕は半ば混乱していたけれど、師匠の説明だとそう言う事らしい?


 …でも、寝ていたけど寝ていなかった様な?それとも夢を見ていたのかな?なんだが思い出せそうで思い出せない、モヤモヤした感覚が有るんだよね…。

続きが気になる方、応援をお願い致します。

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