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53・悪意ある実験

「きっひひひひけけこぽぽぽぽぽっ!」


「あっはっはっはっはっはっ」


 スキンヘッドの少女とバイクに跨がる少年達の嘲笑が同時に響く駐車場。ひとたび足を止めれば、それを待ち望んでいたかのように少女は体に巻き付けられた爆弾で自爆し、修助を追いつめていく。


 人質をかばいながら逃亡を図るのはとにかく無理があった。まず駐車場の入り口と出口の二カ所にはマイクロバスが停められており、そこから何人乗っているんだと突っ込みを入れたくなるほどの勢いで、爆弾を体中に巻き付けたスキンヘッドの少女が降りてくるのだ。


 それに加え、駐車場自体高いフェンスで覆われている。登って逃げようと思えば出来るのだが、そんな悠長な事をしていれば自爆してくる少女の餌食になるのは明らかだ。


 さらに追い打ちをかけるのは、フェンスの外側で修助とクラスメイトの少女を笑う少年達だった。爆発する度に腹を抱えて笑い、フェンスをガシャガシャと揺らす。これではタダでさえ登れないフェンスが、その揺れのせいで振り落とされてしまう。そこへスキンヘッドの少女が自爆すれば、修助はともかく助けようとしている少女は助からない。


(参ったな……執行者側の人質を殺す基準が解らなかったから、この状況を双葉と一に報告する為の物を持ってきていない。持ってきたのは、今し方車の中に放り込んだ一千万だけだ。どうする? 考えろ、何とかなる方法があるはずだ)


 修助はなおもクラスメイトをかばいながら、爆発の炎を受ける。離れていた為に爆風で吹き飛ぶ事は無かったが、あまりの熱量に、服へ燃え移る。


「な、棗君! 服!」


「燃え移っているのは解ってる! 俺の心配はするな! とにかく逃げ回れ!」


 服に引火しているのを見て動揺するクラスメイトに怒鳴りつけると、修助はスキンヘッドの少女を見てある事に気づく。


(こいつら、俺だけを執拗に追いかけて、俺が居るところでしか爆発しない……なら!)


 一度クラスメイトと二手に分かれると、スキンヘッドの少女は一見狂った様子で無差別に自爆しているように見えて、修助だけを狙って自爆しているのがわかった。


 ならばと、修助は自らその少女が出入りしているバスに近づく。スキンヘッドの少女をつかんで投げる事は出来ないが、マイクロバスを巻き添えにすれば脱出の糸口が見えるかもしれない。


 どんな傷を負っても痛みを感じず、死にもしない事を自覚していたから、修助はこんな馬鹿げた行動に出れたのだ。


「けひひひひゃ」


 マイクロバスに近づくと、新たに降りようとしたスキンヘッドの少女の目が修助と合う。そう言う命令なのかは解らないが、その瞬間に自爆スイッチを押した。


 まだ中に大量のスキンヘッドの少女と爆弾を乗せているのか、マイクロバスが少しだけ宙を浮くほどの大爆発を起こし、その余波で修助を吹き飛ばす。


 灰になったマイクロバスの残骸から、新たに誰かが降りてくる様子は無い。もう一つの出口でもこれを実行すれば、外にいる少年達が何をしてくるかの懸念があるが、とりあえず駐車場から脱出は出来る。


 修助は服が燃えてしまった関係でほぼパンツ一丁の格好で走り、もう一大のマイクロバスに近づく。


「えひゃひゃひゃ」


 先ほどと同じように、狂った笑い声をあげながら、スキンヘッドの少女がバスから降りようとすると、修助と目が合い、自爆する。


 またも大爆発を起こし、今度はバランスを崩して横転する。自分とクラスメイトの少女が余裕を持って脱出出来る隙間が出来たのだ。


「怪我はないか? とにかくここを出るぞ!」


「う、うん」


 そこらじゅうに散らばる、スキンヘッドの少女のバラバラ死体に恐怖したクラスメイトの少女は、かろうじて修助の言葉が聞こえたようで、彼の格好を気にする事無くその手を掴んで先ほど出来た隙間から脱出しようとする。


 だが外へ出たら出たで、また新たな問題が発生した。


「そう簡単に逃がすと思うなよ!」


 鉄パイプをがりがりとコンクリートにこすりつけながら、バイクを乗り回す少年達に取り囲まれてしまう。前世の修助なら萎縮してしまう反社会勢力の恫喝。しかし転生した今はとても強いバックがいる。こんなチンピラ程度で怖じ気付く修助ではない。


「強がりはやめておけ、それとおまえのバイクを借りていくぞ」


 言うと修助はクラスメイトの手を繋いだまま走り出し、彼の行く手を阻む、バイクに跨がる少年の一人に跳び蹴りをかます。


 吹き飛び、転倒した少年が起きあがる前に、修助は誰も乗っていないバイクを起こして少女を乗せると、蹴り倒した少年をバイクではねて走り去る。


「棗君バイク運転できるの!?」


 こんな突飛な事をやり始めたのだから、クラスメイトの少女は動揺した声で訊ねる。


 質問された修助としては、自動車教習所で原付運転教習を受けたので、このバイクもその程度だろうと思いアクセルをひねっている。だからこう答えた。


「実は教習所行ってて、今仮免持ってんだ」


・・・


「へー。あいつ逃げ切ったか。律儀に一千万置いてって、バカな奴だ」


 数キロ離れた先のビルの屋上に、小隊を束ねる少女がバイザーで修助の様子を覗き見していた。


「良いのですか? 潮賀隊長。あいつをこのまま逃がして」


「良いも何も、さっきのあいつを見て何も思わなかったのか? 爆発に巻き込まれて服が破けるだけのふざけたチンカス野郎追っかけ回しても、弾の無駄遣いになるだけだぞ」


 部下の進言に対して不機嫌そうに答える、潮賀隊長と呼ばれた少女。以前エレナに埠頭での取引の最中に頭を吹き飛ばされ、その遺体を揺りかごに回収された彼女が、どういう訳か執行者の兵隊と同じ機械のスーツを身にまとっている。その頭半分はエレナの狙撃の影響か、機械にされていた。


「それにあたし等の目的は、修助の耐久性実験だ。良いデータが取れたし、金だって稼げた。ウェルクの腰巾着の女は良い顔をしないだろうが、上等だろ。帰るぞ」


「りょ、了解です」


 潮賀は嬉しそうに言うと、立ち上がり、部下達をまとめ、帰って行った。


 彼女はウェルクに何らかの方法で蘇生してもらい、その見返りとして修助の体がどれほどの物かを確認する為だけにクラスメイトを誘拐し、さらに処分に困っていた実験に失敗し廃人になってしまった少女達の活用法もこの為に彼女が考えたのだった。


「おいガキども、車にあるカネを持ってこい。一円でもパクったらぶっ殺すからな」


 ビルから執行者の隠された施設へ戻る最中、彼女の下っ端の少年達に無線でお使いを頼むと、他の隊員とどうよう、ふっとスイッチ一つで消えていった。

こんばんは、水です。


今回修助が襲われていたのは、執行者に誘拐され、揺りかごの救助が間に合わず実験されすぎて廃人になってしまった少女を使用して、修助がどの程度頑丈なのかをウェルクの手によって蘇生された潮賀 歩実が実験します。


人の心を持ち合わせていない、自己中心的な歩実は、動くけど使い道が思いつかない廃人少女達に爆弾を巻き付けて自爆させるよう命令させることで不要な実験体の処分と修助のタフさを試す事にしたのです。彼女にとって誰の良心も痛まない計画なのは言うまでもありません。


次週は何とか歩実からの手紙を持ち帰る事に成功した修助が、揺りかごに報告、その対策を丑三つ時に兄である遼平を交えて話し合います。


それではまた来週、よい夢を。

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