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28・超展開☆執行者VSトンデモ夫婦前哨戦

 家にあがる直前に話を聞くと、学校でまともに会話が出来るのは修助だけ、それもつい最近の事だと言う。


 雪江の交友関係は皆無であり、両親も居ない中で役所職員以外の人間と関わったことが無いという有様だ。あまりにも他人に関わらないものだから、歩実の友人のギャル達が歩道橋で彼女を突き落として遊ぶ為の道具として、不幸な事に適役となってしまった。その証拠である片足のギプスが、現在も彼女に不自由な生活を強いている。


 修助は初めて女の子の家へお邪魔する緊張で心臓が破裂しそうなのをこらえながら、病院でそうしていたように、雪江の為に色々とサポートする。それに加え、もっと修助の事を知りたいと、告白のような言葉を言われ、修助はこれまで以上に無いほどの冷や汗をかいていた。


「僕は産まれた時からずっと一人だし、これからもずっと一人で生きていくものだと思ってた。でも修助君がそれを変えてくれた。もっと頼っても良いって、気づいたら修助君は色んな人を巻き込んで僕に手をさしのべてくれた。教えてよ。どうしてそこまでしてくれるの? 歩道橋で突き落とされた時、救急車を呼んで一生懸命僕を助けてくれた。あの時から君に興味が沸いて仕方ないんだ」


「それは……えっと……」


 お互い対面する形で椅子に座る二人。動きこそ無いが、雪江がもし片足にギプスというハンデを背負っていなかったら身体を乗り出しそうな勢いで修助に質問する。その質問にきちんと答えなければと、真面目に修助は考え、その回答を必死にさがす。


 これが兄やその知り合いが書いたライトノベルの主人公なら、さらりと格好良く、そして納得のいく回答を提示出来るのだが、作り物と現実は違う。ましてや修助の立ち位置は一という主人公の親友、つまり脇役だ。そう簡単に答が出てくる訳がない。


 それでも修助は意地を張って、彼女の質問に答えた。


「北沢さんが歩道橋から落とされる所に出くわしたのは本当に偶然なんだ。受け止めて、少しでも衝撃を抑えようと咄嗟に手が出ちまった。救急車を呼んで、乗せた段階で北沢さんに両親が居ないのを知って、そこからお見舞いに行くようになったんだ。なんだか偽善者の言い訳みたいになっちまった。気を悪くしたら謝るよ」


 言っていて段々自分が嫌いになっていく修助。彼は前世での経験からかなり卑屈になっており、世の中を良くしようと一生懸命になっている人間を見ると虫唾が走るようになっていた。


 お前一人の仕事で、世の中がどう変わる? 変わったところでそれが新しい犠牲を産む一歩になっている事に気づいているのか? そればかりが彼の心を支配し、悪い所ばかり見てしまう癖が付いていた。


 本音では、ショートボブの髪型にスレンダーな体型に一目惚れし、さらに一人称は僕と来て、好みの欲張りセットだったから、己の欲に従って助けたのだが、それをストレートに言える度胸は無い。


 まるで予防線を張るような回答だったが、雪江は首を横に振り、彼を受け入れる。


「そんな事を言わないで。気を悪くするどころか、色々助けて貰えてすごく嬉しいんだ。その、ちょっと恥ずかしいんだけど、これからも棗君の事を頼っても良いかな?」


 修助の欲望さえも受け入れるかのような懇願。雪江は自分の容姿が修助の好みだと知らずに、さらに踏み込んだ関係を築きたいと考えていた。その結果、修助の醜態を目の当たりにしても、それも含めて修助を頼りたいという願いが込められている。


 そこまで純粋に頼まれては、断るなんて言語道断。前世で偽善者をバカにしていた自分が、まさに偽善者になろうとしているのに、それを避ける事が出来ない。その一方でそうしてまで自分を貫き通す必要も無いと感じている自分がささやき始める。


 雪江ともっと深い関係になれるきっかけが出来たじゃないか、と。


「もちろん。タダでも喜んでやるぜ」


「良かったぁ。これでおしまいだなんて、嫌だなって思っている僕がどこかに居たんだ。棗君と居ると楽しくて、今まで一人の方が気が楽だと思っていたのが嘘みたいで」


「人の気分なんてそんなもんだろ。その時その時でころころ変わるものだよ。きっかけは解らないし、いつそう言う変化が起こるかも解らない。ただ解るのは、変わるという事実だけは、生きていく上で絶対に避けられないって事だ」


「棗君、なんだか教師みたいな事言っている」


「その通りかもな」


 どんどんやりとりが砕けてきている。それだけ雪江が心を開いてくれたのかもしれない。そう思っていた時、外が少し騒がしい事に修助は気づく。


「なんだか外がやけに騒がしいな。北沢さん、ちょっと見てくるから、そこを動かないで。何かあったら呼んでくれ」


 言いながら立ち上がった修助は、テーブルのあるリビングから少し歩いたベランダへ向かう。その瞬間、ベランダにミサイルが撃ち込まれ、修助はかろうじて飛び退く事で瓦礫の下敷きになる事は免れた。


「な、何だぁ!? どいつもこいつも執行者の処理装置(バイブル)で武装したハイレグ女共が、どうしてこんなに?」


 彼が目にした光景は、作中で一や異能を持つ少女達が幾度と無く交戦を行った処理装置(バイブル)の超人的な力を持つ女性達。皆何かしらの被験者であり、一度つけたら入れ墨と同じで一生外す事が出来ない処理装置(バイブル)をつけており、持っているSFチックなライフルは雪江の住むアパートに向けられていた。


「ごきげんよう、棗 修助君」


「その声……オズワルド・ウェルク!? 一に殺された筈じゃ……」


「おや? 君のような一般人はその事を本来なら知らないはずでは……」


「質問を質問で返すな! こんな大所帯ひっさげて、アパートの住民まで巻き込んで、一体何するつもりだ!?」


 立ち上がり、修助は叫ぶ。しかしウェルクは気にする素振りを見せず、ゆっくりと雪江の借りている部屋に土足で上がり込み、置いてある本棚に手を伸ばす。


 その本は文庫本サイズ。表紙には抱き合っている男女の一枚絵に”散華”のタイトルが書かれていた。


 ウェルクはその表紙と背表紙に書かれた著者名をゆっくり指でなぞりあげながら、ねっとりとした声音で修助に目的を伝える。


「簡単だよ、私の目的はそこで座っている少女。北沢 雪江に用事がある。或いは……雪歌 都子(せつか みやこ)先生と呼んだ方が、面白いかな?」


「っ!?」


 雪歌 都子、そうウェルクが呼んだ瞬間、雪江は狼狽して焦りの表情を浮かべる。さらに雪江の喉元には、別の女性がレーザーナイフを突きつけていた。


 刺されてはいない為、出血はしていないが、こちらの動き次第では躊躇い無しに刺してくるのは明白だった。


「まぁそう構えないでくれたまえ。我々の目的は、君達二人だ。運命操作ディスティニー・コントロールが通じない君達に興味が沸いてね。だが生憎一人の少年に組織を壊滅させられてからは気の遠くなるような苦労を重ね、ようやくここまでたどり着いた」


「てめぇの苦労なんて知った事じゃねぇ。今すぐここから出て行って貰おうかい」


「あまり時間はかけないよ。でなければ、揺りかごという邪魔が入ってしまうからね」


 兄が執筆した作品のラスボスと対峙しているというのに、修助は微塵も恐怖を感じなかった。意識している女の子の、孤独な一面を知って、さらに不幸な追い打ちをかけるそのやり口に怒りが沸いており、さらに自分は何をしても死なない身体。雪江をこの場で守れるのは自分しかいない、援軍の到着までは持ちこたえなければと必死に時間稼ぎの方法を頭の中で模索する。


 その一方で、雪江は喉元にレーザーナイフを突きつけられた恐怖に加え、ウェルクが雪歌 都子の名を口にした時からずっと冷や汗をかいていた。


 まるで修助にはその名前を聞いて欲しくなかったとでも言わんばかりだが、幸い修助はそれの意味が分かっておらず、向いている方向もウェルクに釘付けだった為、彼女の懸念は杞憂に終わっている。


 だがそんな膠着状態も長くは続かなかった。ウェルクは突撃の合図を出すと、明らかに人間離れした力で修助を押さえつけ、手錠をはめる。


 同じように雪江にも手錠がはめられ、片足が不自由だというのにその扱いは乱暴そのものだった。


 修助が逃げる策を考える間も無く、雪江と共に拘束され、ウェルクは引き上げのサインを出す。二人はこれから執行者の隠された研究施設で色々と調べられるに違いない。そう確信させる言葉を、ウェルクが薄気味悪い口調でささやいたからだ。


「かつて本橋 茜から頂いた異能を行使しても、君達二人だけは何も見えてこなかった。これを解明すれば、揺りかごは滅び、再び世界は我々の手に落ちるというもの……」


 ウェルクが撤収の合図を出して、直ぐに彼が率いる女性達は修助と雪江を連れて、メタトロンの回収装置のような早さで姿を消す。彼らの組織もまた、メタトロン以上の性能を持つ機動要塞”ディアボロmkⅡ”を開発し、運用していたからだ。


・・・


 修助と雪江が誘拐されてから間もない時間。その事をまだ知らない圭一郎は、仕事を全て片づけ、定時の時間にならないかとそわそわしていた。


 無理もない。家に帰れば幼くなってしまったとはいえ、妻が出迎えてくれ、ついでに自分を慕っている女性も、真琴直伝の食事を用意して待っている。


 何より一緒に死んでしまった息子と一緒の時間を過ごせるのだ。一度全てを諦めてしまった身、それが形こそ違えど、有る程度は戻ってきたのだから、こんなに嬉しい事は無い。


 そんな時、彼のポケットに入っているスマートフォンが着信を知らせる。私用の携帯の為、仕事の電話はまず入ってこない。そして誰が発信しているかのディスプレイは当然真琴だろうと浮かれていた。


 周囲の社員も、娘として見られている真琴に対する溺愛ぶりはちょっと異常だし、真琴と一緒に居る所を見たという別の社員も、その相思相愛ぶりは親子のそれではないとひそひそ話をする中、圭一郎は微笑みながらスマートフォンの画面を見る。


 しかし、画面に映っていたのは真琴の名前ではなく、その親友の双葉の名前だった。普段掛けてこない人物からの電話に、年齢を重ねた者だけが感じ取れる悪い予感を感じながらも、彼は着信に応じた。


「もしもし。双葉ちゃん。どうしたんだい?」


 その優しい声音に、一部の事情を知る社員が冷や汗を流す。揺りかごの司令官で上司に当たる人物をちゃんづけで呼ぶだなんて恐れ多すぎて出来ないのに、この男はさらっとやってのけてしまった事に恐怖を覚えていたのだ。


 そんな反応も気にせず、慌てた様子の双葉の話をじっくりと聞く。話を聞き終えた彼はゆっくりと口を開いた。


「わかった。私が以前頼んだ一台の車がしまってあるガレージがあるだろう? 君の作戦を聞いた後、そこへ連れて行ってくれ。私が二人を安全な場所へ送り届ける。少なくともメタトロンに保護してむやみに空中戦を繰り広げるよりは、良いと思うがね」

こんばんは、水です。


性癖ドストレートな貧乳ショートボブボクッ娘の心を開いた修助は、その全てを満たしている雪江の自宅であるアパートに招かれ、話をします。そこで二人は少しのお話と約束を結びますが、それを破壊する存在、オズワルド・ウェルクがやってきて彼らを誘拐してしまいます。


修助と雪江は抵抗する前に取り押さえられてしまい、そのまま連れ去らわれてしまいましたが、そんな二人を連れ去って黙っている親が居るはずありません。


これは一番キレさせてはいけない奴をキレさせてしまった間抜けが立ち上がるきっかけとなる話です。次回は圭一郎、真琴、エレナの三人を中心に、修助と雪江が捕えられている執行者の拠点へ直接殴り込みに向かう話になります。


それではまた来週。よい夢を。

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