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97.魔女様、錬金術で変装グッズを作る

「この卑怯者め!」


「田舎の辺境伯が何を言うか!」


「「ぐぬぬぬぬぬ」」



 とんでもない事態になったものだ。

 ローグ伯爵は婚約破棄を受け入れないと突っぱね、リリをどうしても連れていくとまで言っている。


 このままじゃ戦争が始まってもおかしくない。


 花嫁をめぐる戦争ってロマンチックに聞こえるけど、ローグ伯爵が主人公役じゃ、ぜんぜん惹かれないなぁ。



「伯爵も、父上も、ここは一度、おさめてください! 戦争など起こしてはなりません!」


 いがみ合う二人を必死に止めようとしているのがレーヴェさんだ。

 確かに戦争が一度起きてしまったら、ザスーラ連合国とリース王国の戦いとなる。

 場合によっては領地のほとんどが荒廃してしまう。


 一度、冷静になって考えることも大事なことだ。



「どうしたのだ? なにか楽しそうなのだ!」


 騒ぎを聞いたクレイモアが中に入ってくる。

 彼女はもしものときのために、護衛係として配置されたらしい。

 しかし、ぜんぜん、楽しくないよ。



「あれ?」


 私はわめき散らしているローグ伯爵の指に『あるもの』がはまっているのを見つける。


 それは指輪だった。

 それも、私がトビトカゲをやっつけたときに落ちてきたやつとまったく同じデザインだった。


 えーと、どうして、あの指輪をローグ伯爵も持ってるの?




「クエイク、これって何か知ってる?」


 私はそれを取り出すと、一緒に隠れているクエイクに見せてみる。

 彼女はメテオほどではないが道具には詳しいはず。



「こ、これは魔道具とちゃいますか? この文字は聖王国の古い文字やと思いますけど」


「聖王国? 聖王国ってあの、西にあるやつ?」


「たぶん、そうやと思います。モンスター使いの聖王国ですわ」


 クエイクの言う通り、聖王国と聞いて十中八九思い浮かぶのはモンスターを操る集団ってことだ。

 あんまりいい噂は聞かない国だったように記憶している。


 だけど、その国の指輪をどうしてローグ伯爵が持ってるのだろう?


 どうして、私がやっつけたトビトカゲからそれが出てきたのだろう?




「……あ、そっか、そういうことか」


 私の中で点と点が結びつく。


 あのトビトカゲを操っていたのはローグ伯爵であると。

 トビトカゲを操って街を汚したのはローグ伯爵であると。


 そして、あの腐ったトビトカゲを操って私のドレスを汚してくれたのは、ローグ伯爵であると!!




 ローグ伯爵、あんたが犯人かぁあ!!!



 メラメラと怒りが湧いてくる。


 さっきのドラゴンにもそりゃあ確かに怒りましたよ。


 でも、このオッサンにはそれ以上の怒りだった。

 



「ひぃいいい、魔女様、あかんで、それはあかん。髪が……」


 気づけば一人でヒートアップしていたらしい。

 私が血相変えているのを見たクエイクが小さく悲鳴を上げていた。

 おぉっといけない、不用意に怒るなんて絶対ダメだ。



「あっ、ごめんごめん」


 すぐさま出ていってやりたい自分をなんとか抑え込む。


 ここで私が出ていったら、話はもっとややこしくなるだろう。

 あまつさえ、ローグ伯爵はラインハルト家の名前を出しているわけだし。



 とはいえ、あのオッサンの悪事を暴いてやんなきゃ気がすまない。

 辺境伯たちだって、自分の街を汚されたやつなんかを部屋に招きたくもないだろう。


 ふーむ、何か、変装する手段ってないかなぁ。

 


「これ、いいかも」


 私は自分たちが隠れている場所に立っている甲冑に注目する。

 おあつらえむきにそれは兜をかぶっていた。

 これをかぶってローグ伯爵の悪事を暴いてやるのだ。



「重い……」


 しかし、それは信じられないぐらいに重かった。

 クレイモアはあんなのよくかぶってられるなぁ。信じらんないよ。

 

 うぅう、せっかくいいアイデアだと思ったんだけど、兜は却下。


 どうにか私の素顔が隠せる方法はないだろうか?

 人は目で印象が決まるって言うし、目だけでも隠せればいいんだけど。



「そうだ!」


 私は兜に手を置くと、熱を送り込む。

 数秒もたたないうちに、それは赤く光り始め、とろっとし始める。

 うん、いい感じ。



「えいっ」


 指先で兜の鉄を引っ張る。

 するとまるで粘土のように簡単に引き離すことができるのだ。

 なんていうか、これって錬金術じゃない!?

 魔法にも色々あるし、ひょっとしたら、こういう錬金術っていうのもあるのかもしれない。


 甲冑が壊れちゃって申し訳ないけど、非常事態だし、許してね。


 よぉし、これを、こうして……。



「ひぃいいいい、魔女様、やばいでほんま……」


 私が金属加工をしている間、クエイクがなにか言ってるけど、今はちょっと無視だ。

 はやいところ私が出ていかないと、本格的に戦争が始まってしまう。



「できたっ!」


 そんなわけでできあがったのが、鉄の目隠しだ。

 なんていうか、ちょっととんがってる感じ。

 思いの外、薄く軽い感じに仕上がっていて、上手く私の鼻にフィットする。

 これなら絶対にばれない……はず。


 ふふ、子供の頃に読んだ本で、こういう仮面をつけた英雄がいたんだよね。

 えーと、なんか仮面とかいうやつ。



 さぁ、ローグ伯爵、覚悟しなさい!

 

 あんたの悪事を全部、白日の下に晒してあげるわ!



【魔女様の発揮した能力】

錬金術:一般的な錬金術とは異なり、金属を高温に熱し、融解させ、それを素手で練って成形してしまう技術。もちろん、金の融解加工も可能。素材によっては粘土のように扱える。魔女様は手先がことのほか器用な部類である。料理は肉を焼く以外、苦手である。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「魔女様なら素手で鉄ぐらい溶かすよね……(慣れてきた)」


と思ったら


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― 新着の感想 ―
[良い点] 金属を練って加工する技術、すなわち錬金術ですね!
[良い点] 作者が楽しそうな印象が常に見受けられる [一言] 王道の僕なんかやっちゃいました?感がすごくいい教材レベル
[一言] 手のひらで肉を焼くスデヤキ
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