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83.魔女様、決してとけない氷柱を力技でねじ伏せて城に洪水を引き起こす


「ふん……、あんたからはなんの魔力も感じられないわ。さっさと吠え面をかくがいい」


 目の前には大きな氷の塊。

 辺境伯からのお題はそれを溶かしきってしまうこと。


 彼女は私に魔力がないことを看破しているようだ。

 さすがは優秀な魔法使いというべきなんだろう。


 だけど、別に魔法じゃなくても氷ぐらい溶かせる。


 本当は爆発させる方が得意なんだけど、破片がみんなにあたると危険だからね。

 それに、ララからの言いつけには続きがあるのだ。


 ・感情に流されず理知的に行動すること

 ・相手に気圧されず眉毛一本動かしてはならないこと


 ・(NEW!)いざとなったら力を惜しまずにみせつけること


 そう、持っている力は出し惜しみをしないってことだ。

 ララはこうなることを予見していたのかもしれない。



「魔女様、ほんまにここで一発かましてくださいよ。でなきゃ、うちら縛り首ですわ」


 クエイクは青い顔をして、シュガーショックの中に潜り込む。

 ううむ、私のかわいい商人をここまで怯えさせるなんて!

 

 ちょっとムカッと来た私なのである。




「ユオ様! 頑張ってください!」


 リリの声援を皮切りに私は精神を統一させる。

 色んな手があると思うけど、まずは熱視線でぶった切ってみよう。


 目の前にある氷柱をじぃっと見つめて、深く息を吐く。

 建物や観客に届かない範囲に赤い一筋の熱の光を発動させる。



「えいやっ」


 ……ずずずずず。



「おぉおおおお!? 切れ目が入ったぞ!?」


 兵士の誰かが声を漏らす。

 赤い光を氷の中に通すと、切れ目が入っていく。

 普通ならバターみたいに抵抗なく両断できるはず。


 だけど、切れ目がはいったままで再び凍り付いてしまった。


 なるほど、溶かしたそばから凍っていくってわけね。

 道理でクレイモアが殴っても破壊されずに、すぐに修復されたのだろう。



「な、なんだ、灼熱の魔女とやら、それで終わりか?」


「ははっ、そんなもんだろう」


 シルビアの勝利宣言ともいえる言葉が広間に響き、兵士たちの乾いた笑いもそれに続く。

 この氷、明らかに普通じゃない。

 確かに打撃じゃ歯が立たないのも頷ける。



 うーむ、どうしてくれよう?


 熱視線でぶったぎるのはやっぱり無理だったわけだし、そもそも、お題は「溶かせ」って話だ。

 手を付けて爆発させるっていう手もあるけど、溶かしたことにはならないよね。




「これはどうだっ」


 今度は直線じゃなく、高熱の平面をイメージする。

 私の生みだした熱の四角形が氷の塊を通過することで穴をあけるイメージだ。


「な、なんだあれは!?」


「あんな魔法陣見たことないぞ!?」


 辺境伯のまわりの兵士たちが声をあげているようだ。

 それもそのはず、私の目の前には30センチ四方ぐらいの四角形が現れたのだ。


「あの女の目から現れたぞ!?」


 しかも、どういうわけか、私の目から現れる。

 いい加減、指先からかっこよくしゅばっと発現してほしいんだけどなぁ。



「それじゃ、やっちゃいます」


 とはいえ、この四角形なら溶かしてくれるだろう。

 多少は蒸発しちゃうと思うけど、この際、しょうがないよね。

 みなさんに見えるように、ゆっくりゆっくり氷にぶつける。



 じゅじゅじゅじゅじゅ………


 へんてこな音をたてながら、氷の腹に四角い穴が開き始める。

 おぉ、いい感じ。




「おぉおおおお、なんだ、これは!?」


「とけ始めてるぞ!?」


「いや、まだだっ! まだ氷は溶けちゃいない!」


 兵士の皆さんからまたしても大きな声があがる。

 だけど、氷はまだ完全にはとけないでいる。


 いや、私がとかした部分から大量の水が噴き出して、空中で凍ってしまったのだ。

 うーむ、新たな氷のオブジェを作るだけに終わってしまうとは。




 ————あぁ、なるほど。


 ここで私はからくりを理解する。

 溶かしたそばから凍らせるだけじゃなくて、水を魔法で追加することで氷をどんどん補充しているのだ。

 どうりで蒸発させたにもかかわらず、体積が増すなんてことが起きてしまうわけだ。



 この氷柱を完全に溶かすには、かなりの出力で一気にやらなきゃいけないんだな。

 なんせ一瞬で全部を溶かさなきゃいけないから。

 いっそのこと爆破させたり、蒸発させられたら楽なんだけどなぁ。




「……くっ、どうだ! 私の魔法の恐ろしさがわかっただろう! お前もいい加減、あきらめたらどうだ!」


 シルビアはちょっと苦しそうな表情で、はぁはぁ息をしている。

 彼女は彼女でかなりの魔力を使っているのだろうか。



「しょうがない、これでいくか」


 私のするべきことは彼女の魔法の容量=魔力を超えてしまうこと。

 人間の魔力には限度があるって言うし、こうなったら我慢比べだ。

 さきほどは熱の平面であの氷の塊に穴を開けた。


 今度は熱の立方体を出して、その中に入れてみよう。

 みんなに見せるためにゆっくり発動させるなんてことはせずに、一瞬でかたを付けなきゃいけないけど。




「えいっ!」


 私の眼前に熱の立方体が現れる。

 おそらくはかなりの熱量を持っているはず。


 それは氷の塊を囲い込み、その空間にストックされているすべての氷が溶けるように執拗に熱を送り続ける。

 



 結果、何が起こったのかというと————


 どばしゃあああぁああああん!


 大量の水、水、水!


 ぬるい水がどばぁっとが溢れ出し、腰まで水浸しになってしまったのだ。


 あっちゃあ、多少は蒸発するようにすればよかった。



「あわわ、やりすぎたかも! もっと手加減すればよかった!」


 自分で言っておいてなんだけど、「やりすぎたかも」ではなく、「やりすぎた」のは間違いない。

 だって突然の大洪水だもの。

 兵士の皆さんも「死ぬぅうう」なんて声をあげて、たいそう驚いている。



「う、うそだぁあああ……、ぶくぶく」


「シ、シルビア様、しっかりなさってください!!?」


 シルビアは膝をがくっと折って、その場に卒倒してしまっていた。

 魔力が尽きてしまったのだろうけど、あやうく溺れる事態。

 悪いことをしたと反省する私。

 あっちゃあ、絶対、怒られる。


「にゃははっ、温かい水なのだ! まるで温泉みたいなのだ!」


「やったぁああ! 魔女様、大好きや!」


 クレイモアとクエイクの無邪気な声だけが大広間に響くのだった。




【魔女様の発揮した能力】

・熱平面:おびただしい熱を発する平面を出現させる能力。大きさはある程度、自由に変えることができる。低温から高温まで温度調整も可能。高温時には対象を跡形もなく燃やす。即死技。


・熱空間:一定の熱を発する空間を出現させる能力。直方体ほか、球形も可能。その中に対象を取り込み、おびただしい熱を与えることができる。敵が動く場合には自動追尾する。高温時には対象を跡形もなく燃やし尽くす。即死技。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「魔女様の掛け声が気合入ってなさすぎ……」


と思ったら


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― 新着の感想 ―
[気になる点] これは国王にまで話が行きそうなんだよなー。 それで討伐だーってなったとしても灼熱の魔女って寝てる時に不意打ちしかできなくない?仲間さえいなければ爆発で一帯吹き飛ばすだけで不意打ちされな…
[気になる点] そういえば持ってきた塩って大丈夫? 水に溶けてない?
[一言] 仕掛けたのはお嬢だけど、余計な事を仕出かしてたのは向こうも同じだし相殺でイケるイケる!(無責任発言)
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