61.魔女様、白昼の剣聖クレイモアの剣を盛大に溶断する
「す、すごいね、あの人たち、本当に人間なの?」
剣聖同士の戦いというのはこうもハイレベルなのか。
まさに舌を巻くとはこのことだ。
白昼の剣聖であるクレイモアと黄昏の剣聖である村長さんの戦いはもはや人間同士の戦いとは言えなかった。
どっかん、どっかんと地面に穴が開くし、幻影を見せて相手を混乱させるし、はっきり言って人外といって差し支えない。
「そ、村長さん、分裂したよ!?」
「はい、あれは十滑という技です。 おじいちゃんが温泉で滑った勢いで思い出したって言ってました!」
ハンナはそう言って胸をはる。
温泉で滑って技を思い出すなんて、さすがは村長さん!
……っていうか、温泉にはお年寄りのために滑り止めを用意しなきゃいけないね。
「ひぃいい、なんやあの攻撃! クレイモアは人間なんか、あれ!?」
しかし、それでもクレイモアは倒せない。
見てみれば、クレイモアが剣を振るうと岩が真っ二つに切断され、地響きをあげて崩れ落ちる。
す、すごい。
あんなのとは絶対に戦いたくない。
「ほんま、あんなのできるのユオ様ぐらいやで。あれは人外やぁあああ」
クエイクもそう言って、がくがくと震える。
「せやな。人外なんはユオ様ぐらいで十分や……」
メテオはそう言って、妹のクエイクの肩を抱きしめる。
はためには妹思いの姉に見えるだろう。
しかし、私にはちょっと腑に落ちないことがある。
……あれ?
ちょっとまって?
その言い方だと、私も人外ってことにならない?
あんな風に岩や地面をばっかばっか破壊するのと一緒にされたくないんだけど。
私はそこまで破壊活動してないと思うんだけど。
「さすがは黄昏の剣聖ですね。しかし、相手は白昼の剣聖……。一進一退です」
私の困惑をよそに、ララはそう言って神妙な顔をする。
うぅ、こういう状況じゃ、メテオとクエイクに抗議することができないじゃん!
「黄昏の剣聖とか、白昼の剣聖とかって、称号には意味があるの?」
「おおありです!」
いぶかしげな顔をしている私にララが大きな声で突っ込んでくる。
「クレイモアの『白昼の剣聖』というのは力押しの剣技、村長さんの『黄昏の剣聖』というのは変幻自在の柔軟な剣技という風に分かれてるんです! スキル学の初歩ですよ!」
ララが早口で言うところによると、剣聖にも色んな種類がいるってことらしい。
他にも暁の剣聖とか、宵闇の剣聖とか、あるらしい。
ララ、博識すぎるぞ、あんた。
「村長さん、頑張れぇえええ!」
「村長さん、ファイトです!」
「村長さん、フェイントからの目潰しいったれぇえええ!」
状況は一進一退。
手に汗握る戦い。
私たちもがぜん、応援に力が入る。
だが、しかし。
「村長さん!? 危ないよ!?」
村長さんのカウンターが不発に終わってしまったのだ。
白い兜は宙を舞い、緩やかに地面に落ちる。
渾身の一撃に失敗した村長さんは体力の限界が近いのか、身動きが取れないでいた。
「……白昼の剣聖よ、一思いに斬るがいい。ここがわしの散り際じゃ」
しかも、あろうことか村長さんはここで自分の命を奪えなんてクレイモアに言っている。
ちょっとぉおお、必ず生きて帰ってくるように言ったじゃない!?
「サンライズ、あんたのことは忘れない!」
女騎士は大きな剣を頭上に掲げて、村長さんを一刀両断にしようとする。
今から態勢をもとに戻すのは間に合わない。
高々とあげられた大剣は村長さんを簡単に寸断するだろう。
「おじいちゃん!!!」
ハンナが急いで駆け付けようとする。
だけど、一秒で駆けつけられる間合いじゃない。
誰もが村長さんの命を諦めたかもしれない。
村長さん本人も諦めている。
だけど、私は絶対にそんなこと許さない。
村長さんにはお世話になりっぱなしだし、まだまだ全然、恩返しできてないんだから!
「間に合って!」
私は先日からずっと鍛えていた熱視線を女騎士の両手剣に向かって放つ。
距離にして100メートル以上。
はっきり言ってこれまでに試したことのない距離だ。
それでも、私がやらなきゃ村長さんは死んじゃう!
お願い、とどいて!
次の瞬間、私の放った熱視線は女騎士の両手剣を真っ二つに溶断していた。
どたっと崩れ落ちる、両手剣。
よかったぁー!
なんとか間に合った!
「ひえぇえ、あたしのクレイモア(両手剣)が折れたのだぁああ!?」
私が剣を溶かし斬ってしまったので、クレイモアは驚き焦る。
よぉし、このすきにハンナと二人で村長さんを回収しよう。
私とハンナは剣を失って嘆いている女騎士のもとに急行する。
「村長さん、諦めちゃダメでしょ! あんたもこれ以上、やるって言うなら私が相手になるわ」
私は彼女の前に立ちふさがり、時間稼ぎに出ることにした。
ハンナはなんとか村長さんを回収する。
村長さんには後でお説教をしなきゃだけど。
「あたしの剣を破壊するなんて、やっていいことと悪いことがあるのだぞ!? ものすごい大切なものが入ってたのだぞ!」
クレイモアはものすごい剣幕で私をにらみつけてくる。
どうやら大切なものだったらしいけど、こっちだって村長さんの命がかかっているのだ。
しょうがなく、溶かし切ってしまったのだから、許してほしい。
っていうか、私の熱視線が人に当たったときのことは想像したくない。
たぶん、きっと、嫌な光景になっちゃうだろうし。
「……貴様、ぜったいに許さないのだ!」
さっきまでの戦いを見ていたから、相手がすごいのは知っている。
正直、めっちゃくちゃ怖い。
彼女の髪の色はハンナによく似た金色で、瞳の色も同じだった。
身長も高いし、簡単に言えば美人、それも圧倒的な。
「……黒髪の蛮族おんな、名前は何という?」
冷静さを取り戻した彼女は私に向かって、名前を名乗るように言う。
よぉし、ここは名乗ってやろうじゃないの。
禁断の大地の領主、ユオ・ラインハルト様ってね!
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「村長さん、風呂で転んじゃ危ないよ……」
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