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56.ラインハルト家の受難:ミラージュはユオの村が魔石を流通させていることに気づき、驚愕する


「ミラージュ様、魔石の出どころについて、とんでもないことがわかりました!」


 王都には今、高級魔石とされる高品質な魔石が出回り始めている。

 そのおかげでこれまで魔石の流通を担っていたラインハルト家は経済的にダメージを受けていた。

 いや、ダメージどころの騒ぎではない。


 この件についてはしっかりと対処しなければ、存亡の危機にすらひんするほどだ。


 ミラージュは魔石の取り引きを洗いだすべく、様々な国に部下を密偵として送っていた。

 そして、ある日のこと、ザスーラ連合国におくっていた部下がかけこんできた。


「何ごとだ! 騒々しい」


「ははっ、申し訳ございません! しかし、魔石の出どころについて有益な情報を掴みました」


「ほぉ、よくやった。それで、誰が裏で汚い真似をしてるんだ?」


「そ、それが魔石の出どころは辺境の禁断の大地。それもユオ様の治める村です!」


「ぶはっ!?」


 部下の言葉を聞いた ミラージュは酒を吹き出してしまう。

 件の魔石はあの辺境の禁断の大地から出てきているというのだ。


 しかも、よりにもよってユオの村が出どころだと言う。


「ユオの村が魔石を流しているだと!!? 貴様、私をからかっているのではあるまいな!?」


「ははっ、これはサジタリアスに滞在している冒険者から聞き出した情報です! 禁断の大地から高品質な魔石がどんどん出荷されております。そして、禁断の大地には村は一つしかありません」


 ミラージュの脳裏にはユオの姿が浮かんでくる。

 ユオは魔法の才能がないことから、いつもバカにしてきた相手だ。


 そもそもユオにはラインハルト家の血は一滴も入っていない。 


 ある日のこと、先代のラインハルト公、つまりミラージュの祖父がどこからか連れて帰ってきたのだ。

 普通であれば、下女にでもすればいいはずなのに、なんとラインハルト家の養女として育てよと命じたのだ。

 

 しかし、所詮は魔力ゼロの平民にしかすぎない。

 最終的には家から追放され、辺境の土地で野垂れ死ぬ運命だったはずだ。


「うぬぬぬ、ユオのやつ……! 魔力ゼロのくせに生意気な」


 先日、慈悲をもって王都に戻るように伝えたにもかかわらず、ユオはその命令を無下にした。

 まさしく、礼儀知らずの女。


 あの女は何があっても許さないと心に決めたばかりだった。



「そもそも、どうして、あの無能にそんなことができるのだ?」


 ミラージュはふぅーっと息を吐いて心を落ち着かせる。

 想定外の出来事が起きたときこそ、冷静にならねばならない。 



「はい。新進気鋭の猫人商会と手を組んで、高級魔石の売買を請け負っているようです」


「ね、猫人商会だと!?」


「はい、あの猫人商会です。まだ未確定ですが、ザスーラ連合国の南部とつながっているかもしれません」


 部下の話ではユオは有能な商売人と手を組んでいるとのこと。

 しかも、その手を組んでいる相手がザスーラの猫人商会と聞いて、ミラージュは眉間にシワを寄せる。


「猫人商会といえば、ビビッド商会が関わっているというのか?」


「はっ。悪名高い、あのビビッド商会ということになるでしょう」

 

 ザスーラ連合国の南部には商都と呼ばれる巨大な商業都市がある。

 この世界のありとあらゆるものが取引され、ありとあらゆるものが流通する街。

 その都市には様々な商会があるが、そこに君臨しているのが、猫人の運営するビビッド商会だ。


「ちっ、厄介なやつがしゃしゃり出てきたな」

 

 その商会はザスーラ連合国の深部にまでネットワークを持ち、構成員は数千人とも言われている。

 強固な団結力や私兵を抱え、国を左右する力を持っているといわれている。


 リース王国の魔石の流通を預かるラインハルト家はその商会と交渉することもある。

 

 いや、時にはぶつかることもあり、散々、煮え湯を飲まされてきた相手だ。


 ミラージュはユオが厄介な勢力を味方につけた可能性もあると知り、舌打ちをする。



「ザスーラも禁断の大地の開拓に本腰を入れているということか?」

 

「まだ、現状ではどうとも言えませんが……。可能性はあります。あのキャットピープルは利にさとい連中です。禁断の大地に子女を送り込むこともありえるでしょう」


「ふむ……空白地帯というのが裏目に出たというのか」


 禁断の大地は危険すぎるという名目で、どの国も領有を主張してない。

 いわば、空白地帯だ。


 その理由は簡単なもので、開拓したところですぐに魔物に蹂躙されるからだ。

 あるいは、魔族が攻めてくる可能性もあり、その場合には最前線になってしまう。


 最前線になった場合、その勢力が魔族と戦わなければならない。

 つまり、戦争になったときに最も大きな損害を被るのは、禁断の大地を有している勢力なのだ。


 禁断の大地とは、経済的に見ればいくらその土地に投資をしたところで、水の泡になることが確定している土地なのだった。

 そのため、敢えて空白地帯になっていたのである。


 先代のラインハルト公は開拓団を結成し、村を開拓したが、あくまで『趣味』と片付けられていた。

 実際に、膨大な土地は手つかずのままになっており、先代亡き後は村はほぼ放置されていた。


 しかし、そんな空白地帯にユオを送り込んだ結果、このような異常事態が起きている。

 


「ミラージュ様、この話にはまだ続きがございます」

 

「……報告を続けよ」


 ミラージュは眉間にシワを寄せながら、部下に報告を続けさせる。


「ははっ。驚くべきことに、ユオ様の村はとてつもない発展を遂げているとのことです」


「は、発展だと!?」


「冒険者の話では、至るところにレンガ造りの建物があるとのこと。学校さえあるそうです」


「レンガ!? 学校!?」


 ミラージュはまたも自分の耳を疑う。


 ユオの村は想像以上に発展しており、もはや村と呼べるものではないとのことだ。

 いくら魔石で儲けたとしても、建材を運び込めるような地域ではないはず。

 ミラージュの頭の中はさらに混乱を深めていく。


「どうして、あの辺境でレンガなどを作ることができる!?」


「その背景にはあの神匠のドレス・ドレスデンがいるらしいと噂が入っております。あの、ドレスです」


 ドレスの名前を聞いたミラージュは喉から心臓が飛び出しそうになる。

 ドレス・ドレスデンといえば、大陸の貴族お抱えのドワーフ工房のトップである。

 

 金貨を何枚積んでも、気に入った仕事しかしてくれないことで有名な人物。

 先日、父親のガガンの仕事を断り、大恥をかかせてくれた人物だ。


 それがどうして、あの禁断の大地に住んでいる!?


「ドレスと言えば、あのドレープ王の孫でもあります。もしかすると、ドワーフの連中も資材欲しさにユオ様の村を援助しているのかもしれません」


「ドワーフ王国も、だと!?」


 ミラージュは混乱のあまり、めまいを感じる。

 確かにドレス・ドレスデンは有名なドワーフの王の孫として知られている。

 部下の言う通り、ドワーフさえも禁断の大地に目をつけ始めた可能性がある。


 そうなると、ユオの村は


・リース王国

・ビビッド商会

・ドワーフ王国

 

 これら3つの勢力が関与する地域になっているのだ。


 100年ほど前の魔王大戦以降、大規模な戦争は起きていなかった。

 人族と亜人族の各国は表向き、平和に暮らしていた。

 だが、ユオの住む辺境がその火種になる可能性があるのだ。


 ミラージュは自分の胃がキリキリと痛みだすのを感じる。

 しかし、部下からの報告はそれだけではなかった。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「魔女様の村、いつの間にきな臭くなってきてんな」


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