51.魔女様、移民の皆さんに仕事を与え、教育を与え、いたれりつくせりしてしまう小話
「さぁ、みなさんにお仕事を割り振りますよ! 農業を続けたい人はこちらに並んでください」
一夜明けると、ララたちは村人一人一人を面接し、適切な職業にわけていく。
半数は農家になると思うけれど、腕に自信のある人はハンターの訓練を受けたり、接客の好きな人は温泉スタッフの訓練を受けたりできるらしい。
「工房に興味あるやつらはこっちだ!」
ドレスも声を上げて、人材をリクルートしていく。
彼女いわく、工房の手伝いや資材の運搬など、タフな人材がほしいらしい。
うーむ、かなりタフじゃないと務まらないんじゃないかな。
「商業関係はこちらやでぇ!」
「列に並んでくださーい」
商業関係はメテオとクエイクの運営だ。
彼女たちも元気いっぱいに声を上げる。
温泉リゾートへのスタッフをはじめとする、ありとあらゆる商売にスタッフを配置することになっていく。
ふぅむ、あの猫娘たちがどんな面接をするのかちょっと興味深いな。
「ハンター志望はこちらじゃぞ」
そして、村の平和を守るためにモンスターと戦うのが村のハンターだ。
代表者はもちろん、村長のサンライズさん。
おじいさんながら足腰は達者なもので、「まだまだ若いものには負けんぞい」などと口走っている。
移民の皆さん、あの剣聖が生きてるって知ったら、腰をぬかすだろうなぁ。
「ひぃいいいいいい! あんたがあのサンライズ!?」
「伝説の剣聖が山奥でスローライフを始めてるの!?」
そんなことを思っていたら、やっぱり悲鳴が上がる。
そりゃそうだよね、ほとんど伝説の人物がこんな田舎で村の平和を守ってるんだもの。
「おっし、頑張るぞ! この村で第二の人生を始めるんだ!」
「私は温泉というところで働いてみる!」
「わしは巨大作物を育てるぞ!」
「俺はハンターに挑戦してみるぜ! サンライズさんの弟子になる!」
和気あいあいと仕事場に向かう面々。
働き過ぎはよくないけれど、仕事があるって素晴らしいことでもある。
今、彼らはまぶしいぐらいにいい笑顔をしている。
自分が必要とされるって素晴らしいことだと感心する私なのだった。
◇
「魔女様、うちの息子が学校に通えるなんて嘘みたいです。なんとお礼を言っていいのか……」
村民たちの顔色がいいのにはもう一つ理由がある。
それは村の中心にレンガ造りの学校を作り、子供たちが通えるようにしたことだ。
今まで子供たちは大人の手伝いをするか、子供同士で遊んでいたのだけど、やっぱり読み書きや、簡単な計算ぐらいはできたほうがいい。
「それにしても、ご主人様、思い切りましたね」
「ふふふ、子供は国の宝って言うでしょ?」
何を思い切ったのかというと、村の学校は学費も制服も無料にしたことだ。
さらには栄養たっぷりの給食だって出る。
まさに貴族待遇なのである。
「魔女様の学校、すごいじゃないか!」
「俺、この村に生まれてよかった!」
これは王都だってやってないことで、おそらく世界で初めての試みだろう。
村民たちは学校の前でわいわいと騒いでいる。
「ユオ様、私にこの子たちの教育係をさせてください!」
そして、嬉しい誤算がもう一つあった。
それは引っ込み思案なリリが教師に立候補してくれたことだ。
リリはきちんとした教育を受けているので文字もきれいだし、身だしなみもマナーも素晴らしい。
魔法だって使えるので、才能のある子どもにはその手ほどきもしてくれる。
まさに教師役にうってつけなのだ。
「ユオ様、私、やっと自分が必要とされている場所が分かった気がします!」
そう言って満面の笑みで学校に向かうリリを見ていると、なんだか涙腺が脆くなる。
彼女は今、輝いている。
うちの村に来た時にへこんで沈んでいたのが嘘みたいだ。
「リリ先生、今日は何を勉強するの?」
「私、自分の名前が書けるようになったよ」
学校を始めて数日もするとリリは大人気になったらしい。
子供たちは彼女を取り囲んでやいのやいの言っている。
嬉しそうにはしゃいでいる子供たちの顔を眺めていると、この平和は絶対に守らなきゃと誓う私なのであった。
◇ リース王国の辺境の村人たち、ユオの村を目指す
「おい、聞いたか、隣村のやつら禁断の大地の村に移住したそうだぞ」
「き、禁断の大地だって!? どういうことだよ!? 死ぬぞ、お前!?」
「それが素晴らしい領主様が現れて、ものすごく発展してるそうだ。俺もびっくりしたんだけどよ」
「だって、あの禁断の大地だろ!? 住むだけで命がけじゃないのか」
「それがめちゃくちゃ安全らしい。今、住民を募集していて、なんと仕事も住居も提供されるってことだ」
「仕事も住居も!?」
「あぁ、税金は安いし。信じられないが、食べ物も美味しいらしい」
「税金……。あぁ、確かに俺達の村は崩壊寸前だ。腹減ったなぁ、くそっ」
「このまま行き倒れるぐらいなら、禁断の大地に移住するのもありかもな」
「しかも、その禁断の大地はあの盗賊殺し様が治めているらしい」
「盗賊殺し!? って、盗賊どもを一網打尽にした少女とメイドのことか!?」
「そうだ、あの盗賊殺し、だ。びっくりだろ?」
「あぁ。……俺、その村に移住してもいいぞ」
「善は急げだ。一緒に村長に掛け合ってみようぜ!」
ラインハルト家が領有するヤバス地域の貧しい村々ではこんな噂が流れ始めていた。
そして、ユオの村にはどんどん移民が集まり始めていくのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「いいじゃないか、追放された剣聖が田舎でスローライフしてたって……」
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