45.【おまけ・スキップOK】C級冒険者ハンスの受難:ハンスは伝説の魔物が村の領主に平然と討伐されていることに腰を抜かす
禁断の大地、初日、腰が痛む。
俺こと冒険者のハンス様は疲れていた。
いや、正直、疲れ果てていた。
村の森に出てくるモンスターはまさかの陸ドラゴン。
しかも、群れをなして襲ってきやがる性質のわるいやつらだった。
俺たちは手も足も出ず、死すら覚悟した。
しかし、村の男やメイドの女はそんなドラゴンを子供扱いするように、なぎ倒す。
極めつきは、あの領主。
名前はユオとかいう、その少女は一人で複数の陸ドラゴンをばらばらに分解しやがった。
疲れた足を引きずり、とぼとぼ村に戻ってみると、おんせん、なるものに案内された。
領主の女いわく、疲れたときは温泉が一番ということだ。
おんせん、なんて言葉は聞いたことがない。
どんなものかと尋ねても、「入ってみなよ、入ればわかる」などと煙に巻きやがる。
「な、なんだ、このにおいは?」
黒光りする温泉なる建物に近づくにつれて、俺達は異変に気づく。
おんせんに近づくにつれて、異様な臭いが強まっていることを。
しかし、かなり強い臭いだ。
まるで地獄の釜の蓋が開いたような臭いってやつだろう。
そして、目の前にあれが現れる。
「ひぃいいいいいい! ば、化け物だぁ!」
黒光りする建造物の入り口に、巨大なトレントが口を開いたまま鎮座していた。
いや、正確にはトレントの顔だけなのだが尋常じゃなくでかい。
通常のトレントの何倍もの大きさで、こんなものは見たことがない。
顔にある傷からして俺はあることを察知する。
「この大きさって、もしかして、城壊しのボボギリなんじゃないか!?」
そう、それはかつての魔王大戦で人間の領地を荒らし回った化け物だった。
その化け物が、おんせんなるものの材料にされているのだ。
精巧なレプリカなのではと思って触ってみるが、硬さや触感からして、どう見ても本物だ。
明らかにモンスターのトレントを材料にしたものだ。
「この建物、ぜんぶ、トレントかよ……!!?」
仲間の一人が目を丸くしながらつぶやく。
よく見れば、この建物はトレントの体でできていることがわかる。
確かに長生きしたトレントの樹皮は超高級素材だ。
しかし、何の因果があって、こんな恐ろしいものを置いているんだ!?
寿命で死んだやつをここまで運んだっていうのか?
いや、トレントの寿命はほとんどないとさえ言われている。
ま、まさか討伐でもしたというのか?
「にしし、それはユオ様がさくっと爆破してもうたんやで。一撃必殺やで」
俺たちの後ろにいた、クエイクの姉がそんなことを言う。
「い、一撃で!? う、嘘だろ」
思わず声が漏れてしまう。
ボボギリと言えば、当時の剣聖たちが押し戻すだけで精一杯の<<歩く要塞>>だったはずだ。
城を何度も踏み潰したやつで、一撃でやられていいような相手じゃない。
さすがに冗談を言っているのだろうと思い、領主の顔を見ると、照れたような顔で、
「しょせん木だから熱に弱いよね? そういうことだよ?」
と、言いやがった。
その照れた表情から俺は理解する。
これは嘘ついている顔じゃない、と。
照れるとか、そういう反応はおかしい、と。
つまり、あの化け物領主はボボギリを討伐してしまったのだ。
しかも、やつはボボギリを面白建築の材料にしていることに一切の感情が動いていないらしい。
平然と、何事もなく、まるで「処理」するようにボボギリを圧倒したに違いない。
……この領主の女、化け物を超えた、化け物だ。
ぞくり、とした。
「ひっ」
森での出来事に俺はもう何が起きても驚かないつもりでいた。
それなのに、俺は本日、二度目の腰抜かしが発生してしまう。
驚いたなんてもんじゃない。
戦慄した。
漏れそうだった。
この領主の女は何かまったく違う存在だ。
「木だから熱に弱いとか、そういうことじゃない! 絶対にそれじゃないだろ!」
俺はふらふらになりながらも、林の方にかけこんで、そう叫ぶのだった。
叫ばなければ、気がおかしくなってしまいそうだったから。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「ハンス、お前の腰、大丈夫か……」
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