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41.C級冒険者ハンスの受難:ハンスは禁断の大地で悪夢を見る。陸ドラゴンを瞬殺ってどういうことだよ

「ゴブリンでも、オークでも、出てこいってんだ!」


 俺たちはモンスター討伐には自信があった。

 森に住まうゴブリンやオーク、はてには巨大な体躯を誇るトロルさえも相手にしてきた。


 剣士、斧使い、レンジャー、魔法使いなどで構成された歴戦のパーティ。

 それに、回復役のリリが加入したことで非常にバランスのいいパーティになった。

 

 どんなモンスターが相手でも一方的に蹴散らしてやる!



 ……そんなことを思っていた時代が俺にもあった。




「ひぃいいいいい!」


「あ、あれは陸ドラゴンじゃないのか!?」


「う、嘘だろ!? サジタリアスにいたやつよりでかいぞ!」


 俺たちの自信はすぐに木っ端微塵になってしまう。

 目の前に現れたモンスターはサジタリアス近郊なら騎士団が総出で討伐する強モンスターだったのだ。


 名前は陸ドラゴン、アースドラゴンとも呼ばれる。

 体つきは小さいが、あくまでも竜種だ。

 強靭な爪を持ち、鎧の上から致命傷を与え、非常に硬い皮膚を持つ。

 素材としてみれば一級品だが、やすやすと倒せるやつじゃない。


「硬い!!??」


 斬りつけるもパーティの武器では歯が立たない。

 魔法をぶつけようにも俊敏すぎて当たらない。


 くそっ、頭もいいらしく間合いのとり方が絶妙だ。


「もう、私はだめですぅうううう」


 さらには新規加入のリリは泣き叫ぶ。

 彼女をかばいながらの戦いになるため、どうしても判断が遅くなる。

 

 く、くそっ、いきなりこの森のボスが現れるとは!?

 俺たちもついてねぇぜ。

 足がすくみ、体がいうことを聞かない。


 

「シュガーショック、やっちゃいなさい!」


 そうこうするうちに、領主は白い狼に指示を出して陸ドラゴンを討伐する。

 やつは風のような速さでドラゴンの喉元に食らいつく。

 さらには凶悪な力で振り回し、周りの木にぶつける。


 叩きつけられたドラゴンは首をやられたらしく、すぐに沈黙する。


 あの狼、つえぇええ。


 ありえないだろ、どうして一撃でやっつけちまうんだよ!?


 

「まだだ! まだ進むぞ! 今度こそ俺たちの実力を見せてやる」


 とはいえ、このままでは帰れない。

 これじゃ一攫千金を夢見て辺境まで来たというのに完全な役立たずだ。

 

 鳴り物入りで辺境に来て、大口を叩いたのに足がすくんで力が出ない。


 これじゃ、とんだ道化師になってしまう。


 第一、自分たちの能力が正しく評価されないと、今後の依頼料だって足元を見られてしまう。

 俺たちは泣く子も黙るCランクパーティだ。

 それ相応の対価をもらわないといけないのだ。


 パーティーの他のメンバーも俺に同調し、さらに森の奥へと進むことにした。

 さきほどの陸ドラゴンはレア中のレアであり、森のヌシなのだ。

 そうに違いない。

 あんな奴は早々出てこない。

 

 俺たちはまだ本気を出していないだけだ!






「ひぎゃああああ!」


「ここで死ぬのはいやああああ!」


「助けてくれぇええ!」


 結論から言うと、その判断は大きな間違いだった。


 さきほどの陸ドラゴンがよりにもよって群れをなして襲ってきたのだ。


 どうして森のボスが、集団で攻撃を仕掛けてきやがるんだ。

 めちゃくちゃだ。

 ありえない。

 ありえないだろ、どうしてだよ、ドラゴンのくせにザコ敵みたいに襲ってくるなよ。



 シャアァアアア!


 前後左右からの地の利を活かした挟撃。

 盾を切り裂く鋭い牙と爪が光り、もう逃げ場はない。


 よほど上ランクのパーティでもなければ全滅するシチュエーションだ。

 当然、俺たちのパーティはうまく反応できずにあたふたするだけだった。


 それを狙いすましていたかのようにメイドと村人は即座に対応。

 弓矢と氷魔法でばったばったとなぎ倒すではないか。


 うっそだろ、あいつら尋常じゃないほど硬かったはずだろ!?

 どうして、そんじょそこらの村人が竜種をやっつけちまうんだよ!??

 どうして、普通のメイドが竜種を氷漬けにするんだよ!???


 頭がくらくらしてきた。

 これって夢じゃないよな?


 しかし、この悪夢には続きがあった。


 なんと、上から跳んできた複数のモンスターを領主の少女が寸分の狂いもなく両断したのだ。


 陸ドラゴン4匹を一瞬で。


 しかも、身動き一つせず。



「ひ、ひ、ひぃいい」


 断末魔の悲鳴をあげる間もなく、空中で分解される複数のモンスター。

 その切り口は鋭利な刃物で切られたかのように直線だった。

 俺のパーティーメンバーたちは腰が抜けたらしく、地面にへたりこんで何もできない。


「あ、あはは……」


 もはや笑うしかなかった。

 俺は自分の目が信じられないと生まれて初めて思った。

 女領主は剣すら持っておらず、剣を振った素振りさえもないのだ。


 はっきり言って、わけがわからない。

 

 まるで『見ただけで』敵を両断したようにさえ思えるが、そんな技は見たことも聞いたこともない。

 剣撃だとしても空中にいる多方向からの敵を両断するなんて反則的なスピードだ。


 サジタリアスにいる<<剣聖>>並の使い手なのか?


 俺の頭にはサジタリアスの騎士団にいる化け物の顔が浮かぶ。


 だが、この眼の前の少女も規格外だ。

 いや、規格外とかいう問題じゃない。 


 こいつ、本当に人間なのか!?

 なんか、俺たちが触っちゃいけない存在なんじゃないのか!??



「さすがは魔女様! お見事です!」


 その後、メイドとハンターたちは少女領主を魔女様と呼んで、その健闘を称える。

 少女領主は謙遜して、「大したことじゃない、トカゲだし」などと言っている。

 

 それはトカゲじゃねぇよ!


 それはドラゴンなんだよ!

 

 叫び出したい気持ちが湧き起こるが、もはや身動き一つとれない。

 


『魔女……、まさか!?』


 俺は「灼熱の魔女」のおとぎ話を思い出す。


 実を言うと俺は領主の黒い髪の毛の一部が、一瞬だけ真っ赤に変化するのを目撃していた。

 赤い筋が黒髪の中にいくつも浮かび上がり、それがゆらゆらと揺らめいていた。


 その色はよくある赤髪ではなく、まるで炎のように真っ赤なのだ。

 かつて灼熱の魔女はその真紅の髪で恐れられたという。 


『この女領主にだけは逆らわないでおこう……』


 茫然自失するパーティの面々の顔を眺めながら、俺はそう誓うのだった。

 そして、明日からは薬草採取を頑張ろうと心に決めたのだ。

 いや、村の掃除とか、そういうのでもいいかもしれない。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「それはトカゲじゃありません……!!」


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― 新着の感想 ―
[一言] トカゲでは・・・ありません。
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