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352/352

352.SS:温泉ハンター、ユオ様の華麗なる温泉発見伝 -まぼろしのプルプル湯編-

「シュガーショック、行くわよ!」


 私の名前はユオ。


 辺境の土地を収める可憐な女領主である。

 その実体は温泉ハンターなのである!

 人間世界からみると、辺境のヤパンの大地にはなぜか温かいお湯が沸く地域が大量にあるのだ。

  

「わおぉんっ!」


 愛犬のシュガーショックにまたがり、私は今日も進む。

 新しい温泉を求めて!


「お嬢さま、さすがに遠くまで来すぎではありませんか?」


「温泉なんかあるんかい、こんなところ」


 普段は私一人で探索するのだが、今日はララとメテオも一緒である。

 私が一人で行動すると危険なことがおきると心配してるらしい。

 うふふ、ララもメテオも私のこと、大好きなんだから。


「いや、周りの人を心配してるだけやで? 地形とか変えられたら困るし」


「そうですね、ダンジョンを破壊しようとした前歴もありますし」


「ぐぅむ」


 うぬぼれていたら、そうではなかった。

 いくら私でも向こう見ずに土地を破壊したりしない。

 ちゃんと温泉がないな、人が住んでいないなってわかってから破壊するつもりだ。

 おっと、こんなこと言うと、破壊するのが当然みたいに思われそうだけど。


「わおぉぉおおおんっ!」


 風のように走っていたシュガーショックが急遽立ち止まる。

 犬の鼻は人間の数十倍、色んなにおいを嗅ぎ分けられるという。

 きっと、シュガーショックは何かを掴んだのだろう。


「お嬢さま、みてくださいっ!」


「こっち、えらいもんがあるでぇ!?」


 シュガーショックの背中から降りたララとメテオが大きな声をあげる。

 私はよいしょよいしょとゆっくり降りる。

 熱の力で飛べるとはいえ、高い所は怖い。


「こ、これは! 温泉だわっ!」


 目の前に現れたのは、温泉だった。

 嘘ではない、温泉だ。

 湯気が舞う泉である。

 どこからどう見ても、温泉だ。


「これは……危険なにおいがぷんぷんしますね」


「せやな、なんか頭痛くなってきた」


 ララとメテオは顔をしかめて、温泉から距離をとっている。

 確かに、ちょっと特殊なにおいがする。

 でも、温泉というものは変なにおいがするものだ。

 村にある温泉もタマゴがあれしたにおいがするわけで。


「よし、入ってみるわ! 何事も、為せば成るっていうじゃない?」


 そんなわけで入浴である。

 すっぽんぽんになってもいいのだが、温泉玄人の私はまずは手触りを楽しむ。


 お湯に手を入れると、ぷよんとした手触り、さらにはぬるりといい当たりを感じる。

 これは初めてのタイプのお湯だ。

 ぷよぷよしてるなんて珍しい。

 温度もいい感じだし、入ってみなきゃだめだ。


「よっし、入る!」


「ユオ様、絶対、危険やで!」


「なんだかおかしいですよっ!」


 ララとメテオはわぁわぁ言うものの、私は本気だ。

 別におかしいことはない。

 ただ単に、変なにおいがするだけだ。


「わぉおおおおおおおんっ!」


「うひゃあっ!?」

 

 服を脱ぎ終わって、いざ温泉に向かった時のことだ。

 シュガーショックが突然、温泉にダイブしてきた。

 当然、辺りは水浸しである。


「もぉおっ! お行儀悪いよ! 温泉には静かに入らなきゃ!」


「くぅうううん……」


 いくらシュガーショックを溺愛しているとはいえ、飼い主として、しつけはしっかりするべきだ。

 私がしかると、シュガーショックは耳を折って落ち込んでみせる。

 ふむ、いいでしょう。


「……あれ? お湯はどこ?」


 私はぽかんと温泉の跡地を見つめた。

 たった今まで湯気を立ち上らせていたはずの温泉がないのだ。

 シュガーショックのダイブ一発で、ほぼ消え失せている。


「ま、まさか……幻覚!? いや、でも触ったよね?」


 そんなバカな話があるだろうか?

 だが、今目の前に広がるのは、ぬかるんだ地面だけ。

 どこにも、お湯らしきものは残っていない。


「ユオ様……温泉にしてはお湯の量が少ないような」


 ララが何か言いかけた瞬間、地面がぐらりと揺れた。


「きゃああっ!? 地震!?」


「違う! これ、何かが……下から出てくるで!!」


 メテオの叫びが響くと同時に、足元のぬかるみが突如として盛り上がる。

 その瞬間――。


 ぼこっ!

 泥の中から、巨大な濁った水の塊が姿を現した。


「ひっ……!」


「お、温泉……の主!?」


 泥の中から現れたのは、ヌメヌメとした身体を持つ巨大な生物だった。

 さっきまでの温泉そっくりの色である。

 温泉の主!?


「いや、これ……スライムやん!?」


 メテオが指をさす。

 確かに、ぬるぬるとした質感を持つ魔物に見覚えがあった。

 それはまさしくスライムだ。


「なるほど……私を騙してくれた罪は重いわよ!」


 私は納得した。

 どうりで、妙にぬるぬるしていたわけだ。

 つまり、これは温泉ではなく、スライムの体液が溜まっていただけなのだ!


「お嬢さま、やっちゃってください! 私たちは離れて見ていますから」


「おいおいおい、素材は残してて!?」


 後ずさるララとメテオ。

 しかし、私は違った。


「今さら、スライムごときにびびると思ったの? 私は温泉ハンター! 身に降りかかる火の粉は自分の力で払えるのよ!」


 私は大きく腕を広げ、手のひらをスライムに向けた。

 瞬間――巨大な熱の塊がスライムを包み、あっけなく蒸発させた。


「ええっ!? 終わったん!? こんな一瞬で!? うちの取り分は?」


 メテオがぽかんとした顔をしているが、取り分なんてない。


「あるわけないじゃない、蒸発させたんだし。……あぁ、しまった! 一度、入ってみればよかった」


「溶かされるで?」


 私は頭を抱える。

 せっかくの新境地だったのにもったいないことをした。

 まぁ、メテオの言うとおり、溶けちゃったらどうしようもないけどさ。


「お嬢さま、とりあえず服を着てください。はしたないですよ」


「うわ、やっば!」


 頭に血が上っていて気付かなかったが、考えれば私は裸だったのである。

 ララやメテオの前とはいえ、かなり恥ずかしい。


「よし! 次の温泉を探すわよ!!!」


 そうして、私たちは再び旅を続ける。


 いつか、新しい温泉を見つけるその日まで!

  

 でもまぁ、今日は村の温泉で一汗流すよっ!

 




お読みいただきありがとうございました!


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