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32.魔女様、辺境の犬と相対する



「それじゃあ、冒険者を呼び込むわよ!」


 食料問題も解決し、温泉施設が出来上がった。

 これからするべきことは冒険者の呼び込みだ。


 この村の周辺には王都にはいないモンスターが多く、素材集めには最適だと思う。

 体力を回復できる温泉と宿屋があれば、冒険者のみなさんもこの村にとどまってくれるんじゃないだろうか。

 そして、私達はお金をがっぽり稼ぐのだ。うしし。



「いよいよですね! ご主人さま!」


「とにかくうちの村は人材不足だからね。ヒーラー、薬師、料理人にパティシエ、花屋さん、ありとあらゆる人材が必要なわけよ。そんなわけでメテオ、何かアイデアある?」


 私は温泉に浸かりながら、とりあえずメテオにむちゃぶりをしてみる。

 彼女は機転が利くし、考え方が私とは全然違う。


 いいアイデアが飛んできたりする。



「ふふふ、それについてはもう手は打ってあるので。実は……」


 メテオは足を組んでドヤ顔をして人差し指を一本立てて、ドヤ顔をする。

 な、なんと先手を打ってくれていたとは。

 有能な商人だってことを思い出したよ、メテオさん!


 どんどんどん!


 メテオがふんすと鼻息を荒くしていいところを見せるタイミングなのに、我が温泉の扉をたたく人がいる。


「魔女様! じけんですぅうう!」


 それも、あきらかに緊急事態であることをアピールしている。


 ……あぁ、これって、またあのパターンだ。


 私が温泉で一息つこうとすると決まって必ず誰かが扉をたたくのだ。


 神様は私に温泉に入るなと言ってるのだろうか。

 まぁ、入るなって言われても入るけどね。



「魔女様! 旅人がいぬに追われています! おじいちゃんが交戦中ですが、苦戦しています!」


 扉の向こうにいたのは金髪碧眼の美少女、ハンナだった。

 温泉の服装に身を包んでいるので、村の警護には出ていなかったらしい。


「い、犬!? 村長さんが犬ぐらいで苦戦するものなの? かわいい部類でしょ?」


 私は犬という言葉に食らいつく。

 こう見えても私は無類の動物好き。

 王都にいたころは屋敷に犬も猫も鳥もいたし、その扱いには慣れている。


 しかし、犬なんかと村長さんが戦っているって、どういうこと!?



「か、かわいいものなのですか!? さすがは魔女様……。でも、相手はのらいぬですよ!」


「ふふふ、野良犬ぐらい簡単よ。ララ、お肉を用意して! かわいかったら飼ってあげるわ!」


 旅人を追いかけているのは野良犬だということだ。

 確かに、飼い犬と違って野良犬は気性が荒く、手をつけられないこともある。

 

 しかし、所詮、犬は犬。


 美味しいお肉で餌付けをすれば一発だろう。

 私はララに肉の準備をお願いすると、旅人が追いかけられているところまで向かうのだった。

 

くふふ、かわいい子だったらいいなぁ。







「にぎゃああ! うちなんかおいしゅうないでぇえ! こんなことなら、寝込みに毛をかっぱらおうとかしなきゃよかった! 好奇心が猫を殺すってホンマやったんやなぁ!!?」


 馬に乗りながら、モンスターに追いかけられているのは猫耳の女の子だった。

 その手にはモンスターから奪ったのであろう白い毛が握られている。


 逃げまどうのは誰かさんにそっくりの女の子。

 どこかで見た光景に、どこかで聞いたセリフ、そしてどこかで聞いた後悔の言葉。

 

 私は一緒に走ってきたメテオの顔をじっと見つめる。


「あ、あれは妹のクエイクやん! あっちゃあ、モンスターを見るとちょいとばかり素材を拝借する良い癖が悪い方に出たな。えらいこっちゃ!」


 メテオは真剣そのものという表情でそんなことを言う。

 っていうか、妹の手癖が悪い。

 なにが、あっちゃあ、えらいこっちゃだ。


「まったくモンスターに追われるなんて、情けない妹や」


 メテオはその後、真顔でそんなことを言う。

 自分だって自業自得でモンスターに追われてたくせに忘れてしまったのだろうか。

 いや、自分のことをかえりみることなんて、絶対ないタイプだな、メテオは。



「さぁ、魔女様! いぬ退治にいきましょう! 私が先導します!」


 ハンナが剣を抜いてわくわく&ギラギラした表情をしている。

 その視線の先には村人の家1軒分ぐらいの大きさの白いがいた。犬じゃない。


 その牙はぎざぎざとしていて、凶悪さが伝わってくる。

 こんなのと戦ったら絶対にただじゃすまない感じがびんびん伝わってくる。



「……ひょっとして、犬ってあれのことなの?」


「あはは、嫌ですよ! いぬってあぁいうの以外どんなのがいるんですか!」


 ハンナは私がとんでもなく面白い冗談を言ったかのようにお腹を抱えて笑う。

 いや、笑い事じゃなく、冗談でもなく。

 あれを犬っていうのは無理があるでしょ!


 いくらなんでも大きすぎる。

 確かに毛はもふもふとしていて、瞳は案外にキラキラしてるけど。

 

 ……あれ、この子、かわいいかもしれない。


「かわいいなんて、ありえませんよ! あぁ、ひょっとして王都にはいぬがいないのでしょうか」


 ハンナはきょとんとした顔をする。

 あの巨大なモンスターが犬であるとあくまでも強弁するつもりらしい。


 いや、信じて疑わないって言う方が適切なのかも。

 あぁもう、辺境を甘く見た私が悪うございましたよ!



「クエイク! こっちや! 時の運はないで! 自分の力量でもちっと踏ん張れ!」


「お、お姉ちゃん!? すみませんねぇ、こんな妹で!」


 メテオの妹は泣きながら馬を駆り、こちらに向かって走ってくる。

 村長さんが戦っているものの、敵の動きは素早く、ダメージを与えることができないようだ。

 モンスターはぐわぁあああっと大口を開けて追いかけてくる。



「ほぉら、おいぬさん! 私が相手ですよ!」


「魔女様、私どもがひきつけますので、どかんとやってください!」


 ハンナは大きな剣を振り回し、白い狼に戦いを挑む。

 村長さんとの連携もばっちりなのだが、それでも有効打は与えられないようだ。

 めちゃくちゃ素早いし、触れるか謎だし、とどめとか言われても困るんだけど。


 相手はもっふもふの塊なのだ。

 顔つきはかわいいから、危害など与えられるはずもない。

 そもそも私はかわいいものは基本的に傷つけられない、心優しい性格をしているのだ。うん。



「……ご主人様、こちらの肉、どうします?」


 村長さんたちの戦いを唖然とした表情で眺めていると、ララがワゴンに肉を乗せて登場する。

 その肉は肉塊といった感じで10kgは超えてそうだ。

 どうみても普通の犬に与える分量じゃない。

 彼女は機転を利かせて、辺境の犬用に大きめの肉を用意したらしい。


「ぬぉおおお、やりおる! さすがはいぬじゃあ!」


「このいぬ、強いですぅう!」


 しばらくすると、村長さんとハンナのコンビが悲鳴を上げはじめる。

 どうやらモンスターを覆っている白い毛が二人の攻撃を無効化しているようだ。


 それに加えて、敵の身のこなしは鮮やか。


 くるくる回ったり、

 地面を転がったり、

 はふはふと息を荒らげたりしている。


 本気で戦っている二人には悪いけど、まるで二人が遊ばれているようにさえ思える。


 あれ?


 心なしかモンスターのしっぽがパタパタと揺れている気がするんだけど?


 ……ひょっとして、あの白い狼、二人とリアルに遊んでない? 


 いや、尻尾を揺らしてはふはふ言うなんて、どこからどう見ても遊んでるよね?

 これなら、もしかすると上手くいくかも!


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「辺境のいぬは一味違う……!」


と思ったら


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― 新着の感想 ―
[気になる点] メテオにクエイクか……まだ、兄弟姉妹はいそうだな。 [一言] イッヌ!!イッヌ!!クソデカイッヌ!!! これはモフの海で眠るドリームチャンスの予感!!!!
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