316.魔女様、クサツ魔導公国に到着するよ! そして、彼女を待ち構えていたのは
「魔女皇帝陛下、ばんざぁああああいっ!」
「クサツ魔導公国は魔女様を歓迎いたしますぅううう!」
あれから1週間後、私たち、魔地天国温泉帝国の使節団はクサツ魔導公国にいた。
使節団のメンバーは私とララ、クエイク、エリクサー、それにシュガーショックである。
同行するヨイヨイはモンスターの出にくい道を知っているとのことで、少数精鋭の人選だ。
あちらの王様のいる都市に到着すると、まさかのまさか、大歓迎の嵐を受けることになる。
人々が沿道に集まって、大声で歓声を上げる。
私が人間であるとか、そんなことさえどうでもいいってぐらいに。
「ヨイヨイ、どういうこと!? 大歓迎すぎない?」
「先日も申し上げました通り、聖王国を止めた魔女様は英雄なのですの!」
どうやら先日、ヨイヨイが話していたことが本当だったというわけらしい。
だけど、この歓迎ムードはすごい。
「かわいい」とか「素敵」とか言われると、ちょっと照れちゃうなぁ。
「ふふ、背筋を伸ばして皆の声援にこたえてくださいませ、皇帝陛下」
ララは私にきちんと手を振るように伝える。
そういや、私、一応、皇帝ってことになってるんだっけ。
威厳ある態度を見せないといけないのかも。
そんなわけで私はいつも以上に気合を入れる。
ここまで歓迎されるのって、すごく珍しいからね。
今まではシュガーショックが城のガラスを割ったり、ひんしゅくを買ったりしていたから。
「おぉおおお、あなた様が灼熱の魔女様でございますかぁああ!」
都市の中央にある城では、ヨイヨイのお父さまことクサツ公王陛下が出迎えてくれる。
髭の生えた、かわいらしいおじさんだった。
ちょっとぷっくりしているのが和む。
「魔地天国温泉帝国のユオ・ヤパンです。この度は歓迎ありがとうございます」
かしこまった雰囲気の中、私たちは一人一人挨拶をかわす。
きらびやかなお城で、とてもいい雰囲気。
城の人達も笑顔を絶やさない。
「公王陛下、久方ぶりじゃのぉ! いつぞやはデューンが世話になったのぉ」
エリクサーも口を滑らすことはなく、きちんと挨拶……するわけじゃなかったのだが、旧知の間だったらしく不問に付される。
ふぅむ、エリクサー、謎の多い子。
「それでは、ユオ様達はこちらでお待ちくださいませ。とびきりの晩餐会の準備をさせていただきますのっ!」
ヨイヨイは私たちをとびきり上等な客室へと案内してくれる。
何から何まで快適である。
魔族の国ってもっとこうドロドロしたイメージを持っていたからかなり意外。
リースの王都とそんなに変わらないじゃない。
「何事も先入観を持ってたんじゃいけませんね! うっしっし、ここの国はシーフードが美味しいらしいですよ! この魚も美味しい!」
同行してきているクエイクはどこで入手してきたのか、魚の串焼きみたいなのをすでに食べ始めていた。
さすが村一番の食いしん坊である。
コミュニケーション能力も半端じゃない。
「ふはは、わしらは逆に人間の住む場所は荒廃していて、ヒャッハーがヒャッハーしとると思っておったのじゃぞ。どっちもどっちじゃな」
エリクサーはそう言って、ベッドの上でぽんぽん跳ねる。
そっかぁ、魔族の方は私たちをそんな目で見ていたのか。
もちろん、荒くれ者が跋扈しているのは、ヤバス地方とかの一部だけだ。
疑心暗鬼を生ずっていうけれど、相手を知らないってだけで色眼鏡で見てしまうものなのかも。
私はできるだけ素直な気持ちで相手を見ていたいなぁ。
「ご主人様、あれをご覧ください!」
一人、殊勝な気持ちを感じていると、ララが窓の外に何かを発見したようだ。
その声は少しだけ上ずっていて、ララにして珍しい。
「わわっ、あれ、海じゃん!」
「おぉー、海やん! きれい!」
「のわわわ、わし、生まれて初めて海を見るのじゃぞ!」
ララの指さす方向にはキラキラと青く輝く光が広がっていた。
そう、海である。
これには皆、テンションが上がる。
私もクエイクもエリクサーも、大きな声をあげてしまう。
エリクサーに至っては「大きいのじゃ、すごい」などと言って大喜び。
かわいいなぁ。
うひひ、ご飯を食べたらあれを見ながらお湯に浸かろうかしら。
◇
「それでは、クサツ魔導公国と魔地天国温泉帝国との友好と発展にかんぱぁああいっ!」
その後のパーティでは公王陛下が乾杯の挨拶までしてくれる。
ものすごい歓迎ぶりである。
私たちはと言えば、運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。
海の幸をふんだんに使った料理はどれもこれも美味しい。
時折、スパイスが効きすぎているのがある気もするけど。
「うわぁ、えぐいですよ、めっちゃ美味しいですわっ! 魔族の国、恐るべし! 上手くいけば、うちの村でも爆売れですわ」
クエイクはお皿に乗せられたものを全部食べ切るつもりなのか、ぱくぱくむしゃむしゃ勢いがすごい。
しかし、それでも商売のことを考えているのは偉いよね。
「なるほど、冷凍して運ぶっていう手もありますものね……」
ララの言うとおり、海産物はキンキンに冷凍すれば、うちの村まで運べるかもしれない。
おそらく、それ以外にも色んな特産品があるのだろう。
うふふ、ますます楽しくなってきたよ。
美味しい料理と楽しいおしゃべりはまだまだ続く。
食後のお茶の時間には、クサツ魔導公国のあらましとかを聞き、魔族の国の歴史について学ぶ私たちなのであった。
「明日は色んな名所にご案内差し上げますの!」
ヨイヨイは目をキラキラさせて、鼻息荒くそんなことを言う。
張り切ってくれて、すごく嬉しい。
「ふわぁああ……」
しかし、当の私はなんだかちょっとおかしいのだ。
熱っぽいというか、眠いというか。
私はお茶の入ったカップをテーブルに置く。
上体がふわふわして、心もとない感じ。
「ご主人様!?」
「ユオ様!?」
ララたちの声が遠くに聞こえる。
でも、眠いのだ。
長旅の疲れが一気にやってきたのか……な……?
◇ クサツ魔導公国の大臣ビオルとその一味の会話
「ビオル様、やりました! 魔女の料理に例のものを入れました!」
「聖王様の作られた、あの秘薬があれば魔女ごとき死に至るでしょう!」
「おぉっ、よくやった!」
ここはクサツ魔導公国の大臣ビオルの部屋。
彼は部下からの報告を聞き、満面の笑みを浮かべる。
「灼熱の魔女が死ねば、公王への反発は必至。この国は我々の、いや、聖王国のものになるぞ!」
そう、この大臣とその部下たちは全て聖王国の息のかかったスパイなのだった。
彼らはユオを殺すことで、クサツ魔導公国の王権にひびを入れることを画策していたのだ。
本来はエルドラドの進撃をもって、国の実権を手に入れるはずだったのだが、それを阻止してくれたユオへの恨みは相当なものになっていた。
海からの波の音が、不気味なざわめきを伝え始めていた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「魔女様、ついに陥落……!?」
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