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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第14章 魔女様の聖王国をぶっとばせ! Part 1 ついに聖王国との戦いの火ぶたが切られます。大丈夫なのか、聖王アスモデウス様!?
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307.魔女様、聖王アスモデウス様にまさかのNTR展開を食らわせます。聖王様は泣いていい

「さぁ、古文書もエリクサーも戻ってきたし、あんたの負けよっ!」


 と、いうわけで!


 私はピンク髪の女の人のところに直行する。

 もはや彼女なんか怖くないのだ。

 虫は私の頼もしい仲間たちが片づけつつあるし、触手の量もずいぶん減った。


「私が負けるだと!? ふはははは、冗談は休み休み言え! あれが見えないのか!」


 しかし、彼女はくじけなかった。

 彼女は魔法か何かで宙に浮くと、びしっとある方向を指さす。


 正直、ここまでしぶとい人にあったのは初めてだ。

 あの凱旋盗の人も最後は潔く負けを認めたっていうのに。


「あれですって!?」


 彼女の指し示す方向には火山があった。

 

「エルドラドの噴火が一度で終わるとでも思ったのか!? 大陸の中央だけでも死の大地に変えてやる!」


 そう、彼女はまたしても火山を噴火させて、あたりを崩壊させると宣言するのである。

 一度や二度の失敗ではくじけない、辛抱強い性格をしているらしい。

 ちょっと羨ましいぐらいだ。


 誰もが彼女の言葉に凍り付く。

 そんな時、意外な声が近づいてきた。


「せ、聖王様!? それでは聖王国も汚染されてしまいます!」


 どこかでみたことのある顔の人物だった。

 えーと、確か……うちの村にちょっかい出してくれた人だ!


 彼女は鳥型のモンスターに乗って大きな声をあげる。


「我々の、私の母国の聖王国はどうなるのですか!? 国民は聖王様の理想ために働いているのですっ!? エルドラドの噴火はおやめください!」


 彼女はピンク髪の人に懇願するような声をあげる。

 その表情は悲壮感にあふれていて、その声は震えていた。



「あっちゃあ、そっかぁ、この人、聖王国の偉い人だったんだ……」


 奇妙な乱入者のおかげで、私は意外なことに気づいたのだった。

 このピンク髪の人、聖王といって聖王国で一番偉い人だったのだ。


 私は思いだす。

 私がピンク髪の人の名前を知らないと言って、ものすごく怒られたことを。

 国家元首に向かって名前を名乗れなんて言ったのは、明らかに無礼だったよね。


 そういえば、第三魔王様も何だか彼女の名前っぽいものを言っていた気もする……。


「ふっ、国民だと? お前達など、私の駒にしか過ぎないというのに生意気な。ハマス、第三魔王軍を足止めすることもできない役立たずが、偉そうに意見をするなっ!」


 聖王の人は背後に黒い渦を出現させる。

 それはさきほどのヒゲ助の背後にあったものとそっくりだった。

 

 そして、そこから繰り出されるのは真っ黒な稲妻。

 

「聖王様、私はあなた様と聖王国を敬愛して……、ぎゃ!?」


 雷はすさまじい勢いで彼女を襲う。

 その速さはとんでもないもので、私は一切反応できなかった。


 攻撃が直撃した彼女はそのまま地上へと落下していく。

 あわわ、危ない!?


「とりあえず、助けてあげるのだよっ!」


 あわや大惨事というところでクレイモアがナイスキャッチ。

 ふぅ、良かった。




「虫けらのくせにとんだ邪魔をしてくれる……」


 聖王は落ちていったハマスという人を眺めて、ぽつりとつぶやく。

 その言葉にちょっとイラっとする私。

 内輪揉めかもしれないけど、自分の部下を魔法で撃ち落とすとかありえないでしょ。


 大体、彼女は自分の国まで被害が出るようなことをするべきじゃないって、至極当然のこと言っただけなのに。 


「さぁて、エルドラドよ、聖王アスモデウスの名において命ず、噴火を始めよっ! 壮大なる破壊をもたらすのだっ!」


 彼女はがぶりを振って、山に魔力みたいなのを送り始める。

 どうやら背景の黒い渦から何かが発せられているようである。


 彼女から現れる黒い波は空気をびりびりと震えさせる。


「……な? あれ? どうしたことだ? エルドラド、なぜ返事をしない!?」


 しかし、一分程度たっても、火山はうんともすんとも言わない。

 彼女は焦ったような顔をして、さらに何かを送り続ける。

 黒い渦はより大きくなり、空に真っ黒い穴を作ったかのよう。


 ま、当然だよね。

 だって、彼女が話しかけているのは、おそらくヒゲ助だからだ。

 このままじゃ彼女がかわいそうなので、私は下に降りてヒゲ助を連れて来ることにした。


「ヒゲ助、初仕事よ! ちょっと上に行くよっ!」

 

「ひぃいい、高いでがんす!? 手が熱いでがんすよ!?」


 髭の生えた魚であるヒゲ助はぬるぬるとしている。

 ぎゅっと握らないと落ちてしまいそうだ。

 高い所が苦手らしくて、わぁぎゃあと悲鳴を上げる。



「あのぉ、あなたが探してるのってこいつのこと?」


 私は先ほど村の仲間に加わった、ヒゲ助を彼女に見せてあげる。

 

「………………な?」


 ヒゲ助の様子を見た聖王様はしばし沈黙。

 目はまん丸になって、口は半開き。

 まさかこんなところにって顔である。


「………………エルドラド?」


「昔はね。今は違うわ、ヒゲ助よ!」


「なぁあああああああ!? 返せ、貴様、それは私のものだ!! この誘拐犯め!」


 ヒゲ助の姿に気づいた聖王様は激昂した様子だ。


 しかし、誘拐犯とは人聞きが悪い。

 モンスターを仲間にするのは何も聖王国だけではないのだ。

 

「残念だったわね。ヒゲ助はうちの村で温泉調査係になったのよ!」


「いつの間にか役割が決まってたでがんす!?」


 私は聖王様にびしっと指をさして、ヒゲ助の新たな一歩を宣言する。

 火山も止めて、モンスターも止めて、温泉でまっとうに生きるのであると。


「貴様、きさま、うご、ぎ、がっぁあああ!?」


 聖王はまるで苦虫を嚙み潰したような声をあげて怒り狂う。

 言葉にならない怒りという感じである。

 

 それほどまでにこのヒゲ助に強い思いを持っていたのだろう。


 とはいえ、私は彼女のやり方は気に食わなかった。

 人であれ、モンスターであれ、使い捨てのモノのように扱う、そのやり方は。

 

 先ほどのヒゲ助の背後には彼女のものと全く同じような黒い渦ができていた。

 おそらくきっと、ヒゲ助も彼女に操られていたのだと思う。

 意思を持った他人を自分の意図のままに操るなんて、絶対にやっちゃいけないことなのだ。


「聖王って言ったわね、あんたは間違っているわ。どんな人にも、どんな存在にも心があって、真心で向き合ってほしいって思ってるのよ! このヒゲ助だって見た目は魚だけど、暴れることだけをしたいわけじゃないわ! そうよね、ヒゲ助?」


「……そ、そうでがんす?」


「ほらね、ヒゲ助はあんたのところにはもう帰らないってさ! 温泉でぬくぬく頑張るって! 巨大温泉を一緒に作るって!」


「ひぇええ、そんなこと一言も……」


「大丈夫。わかってるわ、ヒゲ助、あんたの言いたいことは!」


 私はヒゲ助の心を代弁することにした。

 巨大な亀や火山に変身させられて、こき使われることなどまっぴらごめんというわけである。

 ヒゲ助は口下手みたいだし、こういう時は私がしっかり言ってあげなきゃね。



「それは私が先に目をつけていたのだ、私が目覚めさせ、私が育み、私のために働かせるはずのものだった。私のものだ、それを貴様が、何の思いもない貴様が……」


 彼女は憎しみのこもった瞳でこちらをにらみつけ、ぶつぶつと独り言を言う。

 その背後にある黒い渦はなおも拡大を続け、明らかに良からぬ雰囲気。


「……あのぉ、私がとったっていうのは心外なんですけど? 別に奪ったとかじゃなくて、こいつが心を入れ直すっていうから村に受け入れただけで」


 まるで私が略奪したみたいなことを言い出すので、一応の弁明をしておく。

 そりゃあ、ヒゲ助に思い入れがあったのは分かる。

 だけど、相手に辛い思いをさせておいて去られたとたんに、「今さら大事に思ってた」はないよね。


「うるさい、うるさい、黙れ、黙れ、きさまぁあああ、許さぁあああん!」


 彼女は私の言葉を遮って魔法を発動。

 その瞳には涙が光っていた。


 ゴゴゴゴゴゴゴ!!


 先ほどの黒稲妻が私の周囲を切り裂き始める。

 ひぃいい、雷って私の熱鎧で防げるのかしら。


 

 びぎしぃいいいいっ!?


 しかし、その心配は杞憂に終わった。

 

「がははは! 貴様の雑魚どもの駆除は終わったぞ。聖王アスモデウスよ、分が悪いのではないか?」


 そう、私の目の前にまんまる毛目玉こと第三魔王様が現れたのである。

 この人と言っていいかよくわからないが、彼はどうやら黒い雷を防ぐ方法を知っているらしい。


「逃さないわよ、アスモデウス! うふふ、私の鞭でミンチにしてあげる」


 さらにはデューンさんもこちらに参加。

 下から見ている分にはわからなかったけど、完全に女性である。

 すっごい美人だけど、笑顔は禍々しい。


「がはは、これで三対一。貴様など、この目玉の錆びにしてくれる」


 第三魔王様はとっても物騒なことを言う。

 目玉の錆びって何なのだろう。



「くっ、……ハティ、現れよっ!」


 ここで私たちは完全に不意を突かれることになる。

 下方向から突然、黒い塊がこちらに向かってきたのだ。

 

 グルルルル……


 そして、現れたのは、いつぞやの真っ黒い狼。

 凱旋盗との戦いの時に現れたやつそっくりの狼である。


 いや、それよりも遥かに真っ黒で、遥かに雄大な見た目をしていた。

 それはまるでシュガーショックを黒く塗りつぶしたような感じで。


「ぐむぅ、聖獣ハティか、これは骨が折れそうな相手だ」


 第三魔王様はごくりと喉を鳴らす。

 口は見えないけど、鳴ったんだから仕方がない。


 ハティという獣はこちらに尋常ではない殺気を送る。

 まるで聖王は私が守るとでも言いたげな表情で。


 ここで私はぴんと来るのだった。

 

 そう、いくらダメな飼い主であっても、犬は飼い主を守ろうとするということを。

 ヒゲ助の一件をあげるまでもなく、聖王は明らかにダメ人間だと思う。


 だけど、ハティという子ににとっては違うのだ。

 きっとご飯をくれる優しい人物に見えているのだろう。


 くっ、できない。

 私にはこの子を攻撃するなんて、できないよ。



 ぐぉごぁああああああっ!


「へ? シュガーショック!?」


 私が躊躇しているとこで、さらに乱入者が現れる。

 それはシュガーショックだった。


 白い塊となったシュガーショックはハティに突撃。

 空中をまるで転げまわるように格闘をし始める。


 いや、格闘というよりはじゃれ合いに近いかもしれない。

 牙があたっているわけではないようだけど、大迫力。



「……灼熱の魔女よ、この勝負はお預けだ。貴様を必ず、潰してやる」


 そうこうしているうちに、聖王の人は黒い渦の中にゆっくりと入っていく。

 まるでその中に沈んでいくかのように。 


「え、うそっ!?」


 私は彼女の動きに反応できなかった。

 だって、巨大な犬たちのじゃれ合いである。

 犬好きとしては釘付けになるというものだ。

 

「ちぃっ、逃げるとは卑怯な奴め……」


 第三魔王様はとってもシリアスな口調でつぶやく。

 私は今さらになって、彼がどこから声を出しているのか気になるのだった。




「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「本当にNTRなわけじゃないからセーフ!?」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] アスモデウス様も魔女様と似たようなスキル持ってるのかな? 発電所みたいな感じで? 厳密にはNTRではなく強引な引き抜きですね~w
[一言] あれ?聖王様、忠犬ハティを置いて帰えちゃったよ?(゜o゜; ハティ君?きみ置いてかれてるよ(?・・)σ
[気になる点] 目玉のサビとは一体…地味に気になるけどなんとなく目の手入れが大変そう [一言] 白黒ワンコ(でかい)による戯れ合い
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