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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第14章 魔女様の聖王国をぶっとばせ! Part 1 ついに聖王国との戦いの火ぶたが切られます。大丈夫なのか、聖王アスモデウス様!?
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303.魔女様、溶岩の熱を吸い込んで破壊神の柱を生み出す&聖王アスモデウス様の受難

「こんなものぉおおおおお!」


 目の前には真っ赤な溶岩が吹き出してくる。

 とんでもない風圧で一瞬でも気を抜いたら吹き飛ばされそうになる。

 溶岩に混じって大量の燃え盛る岩石。

 

 普通にしてたら、命はすぐになくなってしまうだろう。


 だけど、私は恐れない。


 さらに言えば、爆発を避けることさえしない。


 だって、ピンク髪の女の子は言ったのだ。

 この火山灰には毒が含まれているって。


 それなら、できるだけ受け止めるのが私の役目なわけで!

 

 ごごごごっごごごごっごごおおお!!



 両手を広げた私を溶岩が包む。


 岩と金属が焼けた独特のにおい。

 息もできないし、目の前の風景もほとんどわからない。

 その凄まじさには気を失ってしまいそうだ。


「……ご…じん……さまぁあああ……!?」


 それでも、かすかにララが叫ぶ声が聞こえる。


 大丈夫だよ。


 この世界の熱は全部、私の味方だから。

 どんなに暴れる熱だって受け止めて見せるから。


 体中に感じる熱が私の内側に吸い込まれていくイメージをする。


 それは凱旋盗の人と戦った時に使った、熱を吸収する力。


 マグマが私にぶつかった瞬間、その熱が全て私の中に貯蔵されていくのだ。


 まるで溶岩の中を泳ぐ魚のような感覚。

 溶岩さえもひんやりとして気持ちいいって思えるような。


「あと少し!」


 噴き出してくる溶岩は、ぴしぴしと音をたてながらすぐに冷えて固まっていく。

 気づいた時には、山頂に真っ黒いヘンテコな岩石のオブジェができていた。


 そして、ゆっくりと噴火は収まってしまうのだった。


「終わった……」


 ふぅーっと息を吐く。


 あれだけ大量の溶岩を受け止めたのに、私は案外へっちゃらだった。

 普段はほとんど使わない熱吸収の技だけど、上手くなったと思う。


「ご、ご主人様ぁあああ、ぶ、無事なんですかぁああ!?」


 ララが声を魔法で大きくして尋ねてくる。


「ぜんぜん、平気だよぉーっ!」


 ガッツポーズを送る私。

 溶岩なんてフレアさんのところでも作って見せたのだ。

 別に当たってもどうということはない。

 まぁ、めちゃくちゃな量だったから飛ばされそうだったけど。


「うぐ!? うぐぐぐっ!?」


 しかし、次の瞬間。


 異常な感覚が私を襲う。

 尋常ではなく胸焼けがしてきたのだ。


 胃袋の辺りがかぁーっと熱くなり、目の奥がチカチカとする。


 うわ、やばい。

 さすがに溶岩の熱を全部吸い込むのは無理があった!?


 体の奥から何かがこみ上げてくる。


 熱い、熱い、塊が。


 これってもしかして、私の中で熱が暴走してるのかしら!?


 うっそぉ、やばいよ。

 こんなの地上に向かって吐き出したら、お行儀が悪い。

 いや、それどころか巨大な穴が開いちゃう自信がある。

 このあたりを荒野に変えてしまい、例の魔女様伝説の一つとして語られてしまうだろう。


 それだけは避けなければ!


「でりゃああああっ!」


 破れかぶれになった私は右の拳を天に突き上げる。

 こういう時に、拳からどかぁああんっと熱がでて行ったらかっこいいものね。


 念のため、顔も空を見上げたけど。



 結果。


 どっがぁあああああああああああんっ!!!


 冗談なみたいな音を立てて、光の柱が私の拳から発せられる。


 やったぁあ! かっこいい!

 

 ……と言いたいところなのだが、さにあらず。


 案の定、私の目や口からも光が飛び出したのだ。

 いや、むしろ、そっちの方がたくさん出ていった。

 ついでに言うと、耳からもでて行った気がする。なんなのよ、これ。


 私の発した熱は猛烈な勢いで天を上っていく。

 やがて空に真っ赤な波紋を作り、どこかへ消えていくのだった。


 あわわわわわわ。 


 ……まぁ、空には何もないだろうし、大丈夫だよね? 誰にも迷惑かけてないよね? 




「ご主人様ぁああああ! さいっこぉおおですよぉおおおっ! まさしく世界の王たる存在ですよっ!」


「それでこそ、私の破壊神様ですぅうううう!」


「めちゃくちゃ面白かったのだぁあああああ! みんなに教えてやるのだよっ!」


 私がはしたない真似をしていたら、ララたちが大はしゃぎである。

 うわぁ、全部見られてたんだ、最悪。


 ララには盛大な嫌味を言われるし。

 ハンナには完全に勘違いされているし。

 クレイモアは誰かに話す気、満々だし。

 

 とはいえ、三人とも笑顔なのでそれはそれでよし!



「おのれ、おのれ、おのれぇええええ、この化け物がぁああああっ!」


 しかし、笑顔じゃない人が一人だけいたのだった。

 そう、あの名前を尋ねたら怒られたピンク髪の女の子である。


 私が噴火をどうにかしちゃったことが相当、気に食わないらしい。


 あんたのせいで大変なことになったんだよ。

 少しは良心の呵責でも感じて欲しい所なのに。


 

「……しかし、残念だったな! 灼熱よ、空を見よっ!」


「うっそぉ……」


 彼女に促されるまま空を見上げると、私はまだ状況が厳しいことに気づく。

 毒の灰と呼ばれる火山灰がゆっくりと振り始めているのだ。


 私は溶岩を受け止めることはできたけど、灰までは処理しきれなかったらしい。


 これが降り積もったら大地が使えなくなるじゃん!

 熱鎧の使えない皆にはすぐに逃げてもらわないとっ!


「ふはははは、毒の灰によって世界樹の大地は汚染され、あの魔族の娘は死ぬのだっ!」


「なんですって……!?」


 高笑いの混じったその言葉に私は絶句してしまう。

 火山灰に触れた世界樹の葉っぱが枯れ始めていた。


 まずいよ、このまま世界樹を枯らしたら、取り返しのつかないことになる!

 エリクサーを取り戻すこともできなくなる。


 どうしよう!?


 いっそのこと、辺りをわたしの熱で満たしてしまう?

 いや、それだとララたちの命が危ない。


 思考が混乱し、焦りに焦る。


 そんな時だった。


 ドルン!

 ゴパァ!

 ドルルッルルルルルッルル!



「飛べ、シュガーショック! ひき肉にしてくれんゾ? テメーら……」


 山のふもとの方から、いつぞやの破裂音が聞こえて来たのだった。

 さらには、とんでもなく気合の入った声も!


「!?」


 これってもしかして!?


 


◇ 聖王アスモデウスちゃんの憂うつ



「貴様らはここで死ぬがいい!」


 エルドラドの奥底から溶岩が噴き出す。

 それはこの地域を焼き尽くすだけではない。

 毒の灰をもって大陸を汚染し、私を永遠の命へと導くものだ。


 例え、私の聖王国が毒の灰で消えたとしても、何の迷いもない。

 所詮、あんな国は私の仮の入れ物にしか過ぎないのだ。



「こんなものぉおおおおお!」


 奴はあろうことかエルドラドの山頂へと向かい、その溶岩を受け止めようとする。

 馬鹿が。

 そんなことをして何になるというのか。


 エルドラドはもはや荒れ狂う自然災厄と化している。

 それを止めるなど、できるはずもないのに。



 噴き出した溶岩が奴を直撃する。

 赤く燃える溶岩は怒りの顕現。


 そのまま影も形もなくなるはず。


 奴にできるのはモノを燃やすことだけ。

 相手は質量を伴った溶岩だ。

 抑え込めるはずがない。


「んなぁああああああっ!?」


 しかし、私はうめき声をあげる。

 奴は、灼熱の魔女はエルドラドの吹き出す溶岩を全て受け止めてしまったのだ。


 その髪の毛には赤い光が筋どころではなく、帯となって揺らめいていた。

 何が起きているか、理解が追い付かない。


 だが、奴は溶岩を燃やしたのではない。

 溶岩は吹き出した時の形のまま止まってしまっているのだ。

 それは真っ黒く冷えて固まり、山頂に塔のような形で固まる。


 エルドラドの噴火は奥の手の一つ。

 それは世界を崩壊させる覚悟で放ったものだった。

 それなのに、こいつは、この女は……。



 さらに奴は巨大な熱を天高く放射する。

 奴の体全体が光ったかと思うと、内側に蓄えた溶岩の熱を一斉放射したのだった。

 びりびりと空気が揺れ、耳が聞こえなくなるほどの大爆発。

 


 それは破壊神のもたらす光の柱のようだった。

 過去の魔王大戦の時にすら見たことのない圧倒的な破壊力。

 もはや人間どころか、魔族を含めて、こんな大破壊を引き起こせるものはいない。


 もし、今のが私に向かっていたら、エルドラドもろとも消し飛んでいただろう。


 私はこいつに勝てるのか……?


 恐怖と焦りで思考がぐらぐらと揺れる。

 不死身の体を手に入れた、この私を恐れさせるものがいたとは。

 

 しかし、天は、いや、異界の神は私を見放してはいなかった。


 空には毒の灰が十分な量、舞い上がっていたのだ。

 少なくとも、この世界樹の大地を汚染するには十分だ。


 私の野望を邪魔しようとした代償は払ってもらわねばならない。

 私は奴らを指さして高笑いをする。




 ドルン!

 ゴパァ!

 ドルルッルルルルルッルル!

 

 そんな時である。

 私は今までに聞いたことのない音を耳にする。

 それは何かが小刻みに破裂するような音。

 

 そのリズムはなぜか私の心を震わせるのだった。



【魔女様の使った能力】

熱吸収(中級):物質に備わっている熱を体全体から吸収する能力。自然物のようにまばらな熱をもった対象からも吸収可能。手で触れることによって、生体から熱を奪うことができる。暗殺技に向いている。即死技。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「こんなのにどうやって勝てっていうねん……」


「口と目と耳と指先からメガ粒子砲?」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] く、苦しい~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ポンポン…
[一言] 吸熱して1兆℃出せそう
[一言] 余剰分の破壊光線が下から出なくて良かったな
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