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30.ラインハルト家の受難:魔女様の返事にラインハルト家は激怒し、胃を壊す



「そういえば、父上、どうしてユオに戻ってくるように伝えたのですか?」


 ある日のこと、ラインハルト家の三男、ミラージュはガガンに質問をする。

 魔力ゼロのユオを追放したのに、こちらに呼び寄せる必要などないと感じていたからだ。


 以前は押し切られてしまったが、ミラージュはまだ腑に落ちていなかった。



「お前の領地のヤバス地方の領主にやつを据えようと思ってな」


「私の領地のヤバスですか……!」


 ヤバスという言葉を聞いたミラージュは顔を青くする。

 その地方は辺境にほど近く、たくさんのモンスターが出る地域である。

 田畑は荒れ果て、治安は悪く、領民は貧しく、税収も少ない領地だった。



「お前もわかっておるように、あの土地はとにかく貧民と犯罪者の掃き溜めだ。ユオをそこに任せて、なじってやろうと思うのだ」


 ガガンは自分のねじ曲がった根性を隠そうともせず、そんなことを言う。

 つまりはユオをいじめるために、あえて追放を取り消すというのだ。


「なるほど! 確かにヤバス地方は最悪の土地です!」


 ミラージュは父親の案に賛同を示す。

 彼にとってヤバス地方の平定は頭痛の種だった。

 

 ユオに任せたらどうなるだろう?


 おそらく領地経営をしたことのない、あの愚かな妹は泣いて困り果ててしまうだろう。


 そう考えると、ミラージュは心が晴れやかになる気分だった。



「ふふん、あのバカ娘をこきつかってやるわ!」


 ガガンは日頃のうっぷんをユオで晴らしてやろうと邪悪な笑みを浮かべる。


「まったくです! あの自信過剰な女をぎゃふんと言わせてやりましょう!」


 ミラージュもまた、同じように底意地が悪い性格である。

 あの愚かな妹が帰ってきたら、再びいじめてやろうと思うのだった。



「おぉっ、父上、ユオから手紙が届きました」


 二人が笑い合っていると、いいタイミングで一通の手紙が届けられた。

 差出人はユオである。



「ははは、あの辺境でかろうじて生きておったか。ふん、どうせすぐにでも帰ってきたいという内容だろう」


「そうでしょうきっと、辺境など人間の住める場所ではありませんからね」


「帰ってきた暁には屋根裏部屋にでも住んでもらおうか」


「それがいいですね。さすがは父上です」


 二人は口元を歪めて笑い合う。


 父親のガガンはどんな言葉が書かれているのかと鼻歌まじりに手紙を開封する。

 そして、息子のミラージュに手紙を渡すと、読み上げるように言うのだった。


 実を言うとガガンは先日のドレスの一件で、手紙につよいトラウマを抱えてしまったのだが。



「……栄あるラインハルト家のガガン様へ。帰還のご命令、ありがとうございます。ただし、私はもうこちらで世界最強の国を作っております。誠に申し訳ございませんが、帰ることはできません。あしからずご了承ください。最後に一言、誰が帰るか、業突張りのくそ親父と金の亡者のクソ兄貴ども……だそうです」


 それはリース王国の権力者であるガガン・ラインハルトに対して、まさかの内容だった。

 手紙を読み上げたミラージュの手元は震え、足元さえも震えだす。


「ななななな、なにを言っておるのだ!? 冗談を言うにもほどがあるぞ」


「うぐわっ」


 ガガンは怒りのあまりミラージュを殴りつけてしまう。

 彼は乱暴に手紙を奪い取ると、今度は自分の目で手紙を読むことにした。



「なぁああああああ!? 私のことを業突張りのくそ親父だとぉおおお!?」


 ガガンは怒りのあまり、手紙をびりびりに破り捨てる。


「許さん! この私を誰だと心得ているのか! 大恐慌の炎よ……」


「父上、お止めください! 父上っ」


 ガガンは怒りのあまり魔法陣を発動し、あやうく魔法を唱えようとし始める。

 ミラージュが止めなければ、室内で魔法を使って大惨事になるところだった。



「許さぬ! こちらが気安く声をかければ増長しおって!!」


「兵を集めましょう。辺境の村ごと攻め滅ぼせばよいのです! 私が騎士団で制圧してまいります!」


 怒りの収まらないガガンは大きな声をあげて、テーブルを叩く。

 それに同調するように、ミラージュは兵をもってユオの村を滅ぼすと宣言する。

 彼の抱えるラインハルト家直属の騎士団は勇猛果敢なことで有名だった。


 辺境の村など、簡単に蹂躙できるだろう。



「……いや、それはできんのだ」


 しかし、ガガンはミラージュの申し出に苦々しい顔をしながら首を横に振る。


 その理由は先日の女王との謁見の際に、「おかしな動きをするな」と釘を刺されたことにあった。

 もしも、辺境を越えた禁断の大地に軍をすすめたことがバレれば、色々となじられるのは目に見えていた。


「ミラージュ、これから魔石狩りの季節に入る。我々のような高貴なものが、ユオなどという魔力ゼロの能なしに時間を割いている方がもったいないわ」


 ガガンは自分自身を説得するかのように言葉を続ける。


 ラインハルト家では、大規模に魔石を採集する「魔石狩り」を控えていた。

 これはラインハルト家を支える事業であり、必ず成功させなければならない事業だ。

 禁断の大地の村の討伐よりもはるかに優先させなければならないのは明らかだった。



「今のうちに好きなだけ吠えさせてやろう。あそこには凶悪なモンスターが山ほどいるのだ、いずれ自滅するか、泣きついてくるだろう」

 

「そ、そうですよ! あの禁断の大地に飛ばされたんです。あとで助けを呼んでも、もう遅いですよ!」


 ガガンが悔し紛れにそう言うと、ミラージュは合いの手を入れるのだった。

 二人はユオの将来を呪うことで、なんとか精神の安定を保とうとするのだった。


 だが、言葉とは裏腹に無意識レベルでは非常に強いストレスを彼らに与えた。

 彼らは他者をバカにするのは慣れていたが、自分が馬鹿にされるのには耐性がなかった。

 二人の腸は煮えくり返り、胃はぎゅうぎゅうと痛みをあげるのだった。


「父上、ひとまず、飲みましょう! ユオが孤独にのたうち回りますように!」


「おぉっ、よく言った!」


 ミラージュはとりあえず場を持たせるために乾杯の音頭を取る。

 彼は強いアルコールを父親の器に注ぎ込む。

 もはやアルコールぐらいしか、二人を救うものはないようにさえ思えた。


「うぐぐぐぐっ! ミラージュ、この愚か者が!」


「申し訳ございません! わ、悪気はなかったのです!」


 アルコールは胃に空いた穴を直撃し、ひどい腹痛となって返ってくる。

 二人は耐え難い苦痛に身悶えするのだった。

  

「「おのれ、ユオのやつめぇええええええ!」」


 そして、二人は見当違いの怒りをつのらせていくのだった。


「面白かった!」


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「煽りスキル……!」


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