285.魔女様、世界樹の村に到着し、エリクサーの神々しさに絶句します
「エリクサー、あんたの村、魔物に襲われる習慣でもあるの!?」
和気あいあいとした雰囲気の中、エリクサーの村に到着するとあら不思議。
村人たちは大型のモンスターと絶賛格闘中なのだった。
いや、格闘中というよりは、明らかに逃げまどっている様子。
前も似たようなことがあったので、ものすごく既視感がある光景だった。
「ほわぁああ、わしの村が大変なのじゃああ!」
所々から煙が上がり、良くない状況なのはすぐにわかる。
エリクサーは救援に行こうとするも、目の前にはモンスターが立ちはだかる。
それは人の姿をしてはいるけど、全身がドロドロに溶けている。
動き回る様はいかにもアンデッド。
うひぃ、デスマウンテンにも似たのがいたけど、外見的に苦手な奴である。
リリを連れて来ればよかったなぁと後悔する私である。
とはいえ。
「よぉっしゃ、やっちゃうのだ! シュガーショックを借りるのだよっ!」
クレイモアはシュガーショックに飛び乗ると、自慢の大剣を持って駆け出していく。
その後の結果はご想像通り。
村を襲った数十体のアンデッドは簡単に駆除されてしまうのだった。
「な、なんだぁああ!? 今度は白い狼に乗った化け物が攻めてきたぞ!?」
「終わりだ、村が滅ぼされるぅうう!?」
ところどころで村人たちの悲鳴が上がる。
クレイモアの獅子奮迅の働きは別の種類のモンスターだと思われたらしい。
もっとも、エリクサーの取りなしによって誤解はすぐに解消できたけど。
◇
「本当に助かりましたぁああ!」
「お久しぶりです!」
魔族の村の人達は私たちを笑顔で出迎えてくれた。
話によると、先日からモンスターが増え始め、村の柵を超えてきたとのこと。
しかも、さきほどのアンデッドモンスターに至っては見たこともないものだったという話。
「ふぅむ、未だに新種のモンスターが出るなんてびっくりですね。あらかた網羅したと思ってましたが」
ララはそう言うと、手持ちのメモ帳にモンスターの特徴を記入する。
彼女はモンスターが好きで、その知識を常に仕入れているのだ。
「まぁ、無事に帰ることができたのじゃ! 皆の者、今日は宴じゃぞい!」
それから私たちは魔族の皆さんから本格的な歓迎を受ける。
それはそれは和やかで素敵なパーティーだった。
「ご主人様、とっても貴重な経験です。ありがとうございます」
ララとの旅行は久しぶりだったけど、喜んでくれたようで嬉しい。
「おぉっ、なるほどなのだ! こんな風に調理するのかぁあ!」
クレイモアはパーティで出された料理に歓声を上げる。
特にあの世界樹の実を加工したお菓子には興味津々の様子だ。
世界樹の実の中身をもちっとした生地の中にくるんだものもあり、私も美味しく頂く。
ふぅむ、今まで食べたことのない食感。
そんな風に会食を楽しんでいた時のことだ。
ズゥウウウウウウウン……
お腹に響くような音が響いてきた。
「あれ? 地震?」
そして、次の瞬間、パーティをしていた建物がぴしぴしと軋み始める。
その軋みは次第に大きくなり、今度は建物がぐらぐらと揺れる。
うちの村でも地震はあるけど、結構びっくりである。
「巫女様……どうやら……」
「うむ、そろそろじゃの」
魔族の村人さんたちとエリクサーは慣れているのか、地響きに驚いた様子はない。
彼らはエリクサーの所に来ると、何やらごにょごにょ話し始めた。
一体全体、何が「そろそろ」なんだろうか。
「ユオ殿、それに、みんなもわしと一緒に来てくれ。知らせておきたいことがあるんじゃ」
エリクサーは私たちに案内したい場所があるという。
その表情は見たこともないぐらい真剣なものだった。
「これは……!?」
ついていった先にあったのは、例の山のように大きな世界樹の根っこの部分だった。
空を見上げれば、青々とその葉は茂り、太い枝を縦横無尽に広げている。
見るからに生命力にあふれていて、なんだかちょっと禍々しさすら感じる。
しかし、案内された場所は何とも得体の知れない場所だった。
人型のくぼみが掘られていて、すぽっと収まる感じというか。
ズズゥウウウウウン……
まじまじと観察していると、再び振動が起こる。
世界樹の枝がぐらりぐらりと揺れ、枯れ葉が地面に落ちてきた。
ひぇええ、あの太い木の枝が落ちてきたらどうしよう。
「燃やしますよね?」
ララは表情を一つ崩すことなく、真顔でそんなことを聞いてくる。
そ、そりゃあ、頭の上に落ちてきたら燃やすけどさぁ、怖いものは怖いでしょ。
「これってひょっとして、世界樹自体が揺れてるんじゃないの?」
「そのようですね。……ご主人様、びっくりして世界樹を燃やしたりしないでくださいね? 責任問題になりますよ?」
「燃やさないよっ!」
ララは真面目な顔をしてそんなことを言ってくる。
私を放火魔か何かと思ってるのかしら。
失礼しちゃいすぎるのである。
「さすれば、皆の衆よ、よく見ておいて欲しいのじゃ」
エリクサーは私たちにかまうことなく、世界樹のくぼみに体をすぽっと入れて目を閉じる。
魔族の村人たちはそれを取り囲んで、手を合わせる。
もしかしなくても、何らかの儀式が始まろうとしていた。
「十三代目の巫女として、世界樹に命じる。その清浄なる力をもってエルドラドを鎮めよ、さすれば、わしは貴様に常に与え続けよう」
エリクサーはその小さい体を少しかがめるようにして祈る態勢に入った。
それから魔族の言語なのか、何か呪文のようなものを唱えるのだった。
次の瞬間、私は目を見張ることになる。
エリクサーの髪の毛の色が変わっていくのだ。
もともと、紫ベースの髪の毛に緑色の筋が何本か入っているぐらいだったのだが、緑部分がどんどん増えていく。
しまいには彼女の髪の毛は緑と紫の色が半々ほどとなり、まばゆい光に包まれ始めるのだった。
ひぇええ、すごい。
なんだかもう神々しさすら感じるよ。
ただの美形の幼女だと思ってたのに。
そして、彼女の祈りが終わるころ、先ほどまで揺れていた世界樹は振動を止めるのだった。
まるでエリクサーや村人たちの祈りを聞いていたかのように。
どうなってるのよ、すごすぎでしょ。
「すごいのだ! エリクサー、ユオ様みたいだったのだ!」
クレイモアは開口一番に歓声をあげる。
えぇっ、私ってそこまで神々しいのかしら……。
自分でもちょっとそういう雰囲気あるかもなぁって思ってたんだけど、照れるなぁ。
自分が褒められたわけでもないのに、ちょっとだけ気恥ずかしくなる私なのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「エリクサーのイラストが見てみたいのじゃ……」
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