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【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい温泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の温泉帝国を築きます~【書籍化+コミカライズ】  作者: 海野アロイ
第14章 魔女様の聖王国をぶっとばせ! Part 1 ついに聖王国との戦いの火ぶたが切られます。大丈夫なのか、聖王アスモデウス様!?
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276.魔女様、クレイモアを温泉に誘って悩みを吹き飛ばそうとするも、思わぬ来客ですよ

「おおぉっ、これはなんか美味しそうなのだなっ! なぁるほど、異民族のお菓子とはよそうがいだったのだ! にゃはは」


 あくる日のことである。


 私とララは古文書をもってさっそくクレイモアに古代人のお菓子のことを伝えに行く。

 なんせこのお菓子、古文書の中にたびたび登場するのだ。

 中には温泉のマークが入ったものさえある始末である。


 もしも、このお菓子が美味しければ、うちの村の新たな名物になるだろうから。


「よぉし、ちょぉっと待ってるのだよっ! ふぅむ、この断面、蒸し菓子とみたのだ」


 彼女はそういうとだだだっと調理を始める。

 思い立ったらすぐ実行するのが彼女のいいところだよね。

 

「相変わらず、すごいねぇ」


「すさまじいっていう表現がぴったりですよ」


 クレイモアは空中で材料を混ぜ合わせたり、あるいは分身までして調理をする。

 お菓子と言えども一切の手を抜かないプロフェッショナルなのだった。


「へいっ、おまちどぉなのだっ!」


 机の上には赤、茶色、白といった複数の例のお菓子が並ぶ。

 それぞれ粉に異なる種類の素材を混ぜたらしい。


 ふわっとした香りも鼻をくすぐる。

 いい感じなんじゃないの?


 私たちはそれぞれを一つずつ実食するのだった。


「あっ、カスタードクリームっひゃああ!」


「美味しいですね」


 ふわふわの小麦粉の皮を破って出てきたのは、黄色めのカスタードクリームである。

 卵のおいしさをしっかりと感じられる、とてもいいお味だった。

 思わず変な叫び声みたいなのが飛び出してしまう。


「……カスタードのはいけるけど、こっちはピンと来ないのだな」


 しかし、クレイモアは微妙な表情だった。

 赤茶色の具をいれたお菓子を試食したものの、満足いく結果ではないといった顔だ。

 

 私も食べてはみたけど、こちらは甘酸っぱい果物のジャムのお味。

 素朴な味わいで悪くはない。

 悪くはないけど、「これだ!」って感じではないのだ。


「ぐぅむ、これじゃ古代人が夢中になってる理由が分からないのだなぁ」


 腕組みをして考えるクレイモアである。

 わざとじゃないんだろうけど、その姿勢は大きなお胸がやたらと強調されるんだよね。


「とりあえずこのカスタードのお菓子だけでいいんじゃないの?」


「そうですね、メテオさんは大喜びすると思いますが」


 とはいえ、これはあくまでも事業の一環としてのお土産開発なのだ。

 売れそうなものを売るしかないのである。


「ふむ、もう一つの方はもうちょっと頑張ってみるのだよ」


 クレイモアはそういうと、ぶつぶつ言いながら調理に入るのだった。

 戦いとなれば敵を吹っ飛ばすことしか考えていない彼女ではあるが、お料理に関してはすっごく職人気質なのである。




「えぇ〜、もうちょっとでいいアイデアが出そうなのだよ! どこに連れて行くつもりなのだ」


「いいから、いいから」


 小一時間後、悩んでいるクレイモアを駆り出して、私はあるところに向かっていた。

 悩んでいたって問題は解決しないことが多い。

 こういうときはリフレッシュしたほうがいい。


 そして、私たちのリフレッシュと言えば、温泉に決まってるでしょ!


「おぉっ、新しい温泉なのだなっ! お湯が真っ白なのだ!」 


 そう、私がクレイモアを案内したのは、新しく開発中の村の温泉なのである。

 この温泉、クエイクが「温泉の白い粉」を発明した、あの温泉であり、真っ白なお湯が特徴だ。


「ふふふ、骸骨のように白い色ですから、スケルトン温泉と呼んでいます」


「ほぉ〜、スケルトン! なぁるほどなのだ」


 ララは勝手につけた名前を披露し、クレイモアは素直に感心する。

 インパクトありすぎるけどモンスターの名前なので絶対に却下したい。


 とはいえ、温泉は温泉である。

 今日は貸切状態にしているので私はいそいそと服をぬぐ。

 何をするって?

 そりゃ、入るにきまってるでしょ。


「ひぃええ、白いのが浮いてるのだよっ!? これ危なくないのか? 死んだりしない?」


 勇猛で名をはせるクレイモアであっても、この温泉に入るのには勇気がいるらしい。

 そう、この温泉、白い塊みたいな、泥みたいな、何とも言えないものがお湯の中を舞っているのである。

 お湯があんまり白いので底が見えないのもちょっと怖いのかもしれない。


「うしし、剣聖さんでも驚いたようやな」


「ふくく、相変わらずメロンメロンやん」


 そして、湯けむりの向こう側から現れ、訳ありげに声をかける二人の人物がいる。

 どういうわけか不気味にライトアップされた彼女たちの猫耳シルエットが湯煙に映る。

 「お、お前らっ!?」などと一瞬、身構えるクレイモア。


 いやいやいやいや、どう見ても、メテオとクエイクでしょうが。

 ちなみにセクハラ発言をしたのはメテオである、念のため。

 


「ふぃいいい、これはこれでいいねぇ。肌へのあたりが全然違うよぉ」


 二人の茶番もそこそこに温泉へと浸かる我々なのである。

 まずは温泉でしっかりリラックスして、頭を休めようって言うのが趣旨だからね。

 クレイモアは私が入ったのを確認すると、ばばばっと服を脱いでお湯に浸かる。

 相変わらず早脱ぎが上手である。


「黒髪魔女の屋敷の温泉とも違うのだな。なんていうか、ふわっとしてて肌が包み込まれるというか」


 恐る恐るつかったクレイモアだったが、すぐにリラックスした表情になる。

 そうやって悩みを手放すと、いい具合のアイデアだったり、助けてくれる人だったりを呼び寄せちゃうものなのだ。


「ふぅむ、この変な白いふよふよのせいなのか? あれ、捕まえられないのだぞ?」


「にゃはは、これは温泉の成分やで。そうそう、触れるもんとちゃうわ」


「せいやっ」


「「はぶわっ!?」」


 クレイモアは「白いふよふよ」を捕まえるために、激しい突きをお湯に繰り出す。

 座ったままの姿勢とはいえ、その威力はすさまじく、ざぱぁんと発生する大波。

 向こう側で湯に浸かっていたメテオとクエイクはざぶんと頭からお湯に飲まれるのだった。


「ふぅむ、これを温泉のもとにするなんて、クエイクは頭いいのだなぁ」


 クレイモアは手のひらに白いふよふよを捕まえて、関心したような声を出す。

 確かに、これを使って温泉の素にしようなんてなかなかないアイデアだよね。

 褒められたクエイクは「へへへ〜、それほどでもあるかも〜」などと照れている。かわいい。


「ふふふ、それでな、例のお土産の件なんやけど、カスタードの奴は白い生地にして、このスケルトン温泉とセットで売り込もうと思ってんねん。温泉の素も白い粉やし、トリプルで関連付けるで」


 ずぶ濡れのメテオはしびびびっと水をまき散らすと、さっそく商売の話を始める。

 目はらんらんとして、声は上ずっている。

 この子は本当にへこたれないよね、感心しちゃうよ。


 ふぅむ、モノと体験をセットにするのはいいアイデアだね。

 この白いお湯の温泉もいい具合に育ってくれるだろうし。

 

 ……あれ? スケルトン温泉っていう名前が定着してる感じなの?

 白百合温泉とか、ミルク温泉とかのほうがよかったのに。


「メテオ様、どうせならご主人様に源泉側に入ってもらって、白い粉を回収するのはいかがでしょうか? もちろん、プレミアム価格での販売となりますが」


「おぉっ、ええな、ご利益ありそう! めっちゃ温まりそうやわ」


 傍で待機していたララだったが、とんでもないことを言い出す。

 この前の魔女塩の時もそうだったけど、絶対にやだからね、そういうの。


「……わかった、クエイクも一緒に入ったるから? な? 寂しくないやろ?」


「はぁああ? なんでうちを道連れに!? うちなんて猫毛が入るしあかんわ! って、何言わすねん、このボケ姉!」


「ぐぎぎ、待て、ほんまにしまっとるって」


「いっぺん、地獄に落ちろ」


 メテオは妹を即座に売り渡そうとするも、クエイクに逆襲され首を絞められる。

 相変わらず戦闘力ゼロである。


 とはいえ、私が首を縦に振るわけはない。

 っていうか、誰と一緒でも絶対にやんないよ。



「ユオ殿、ここにおったのか。ひぇえ、白いお湯の温泉じゃ。まるでアンデッドの骸骨みたいじゃのぉ」


 そんなこんなで新しい温泉でちゃぷちゃぷやってると、エリクサーがやってきた。

 この温泉のことはまだエリクサーには紹介していなかったので、クレイモアと同じようなリアクションをする。

 相変わらずとぼけた口調で、それはそれはかわいい。

 それにしても、何の用だろうか。


「今日は皆の衆に見せたいものがあるのじゃ。外で待っておるぞ」


 彼女は含み笑いをして、いかにもいいことがあったような雰囲気である。

 見せたいものかぁ、何だろうなぁ。

 エリクサーはこの村の人材にしては珍しく、常識の通じる女の子である。

 つまり、私と同じサイドというわけであり、他にはリリとアリシアさんぐらいしかいない。

 きっといいものに違いないよね。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「常識人サイド?」


と思ったら


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― 新着の感想 ―
[一言] うん、常識人サイド?(笑)って事で!
[一言] ユオ様の温泉マークにカスタード塗りたくって舐め回したいね
[一言] 白骨温泉?!
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