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27.魔女様、温泉リゾートの内側は比較的まともで安堵する

「それでは温泉の中を案内させていただきます」


 現場監督として働いていたララが、私たち一行を温泉の中へと案内する。

 気を取り直して足を一歩踏み入れればそこは完全な非現実な世界が広がっていた。


 施設内はトレントの魔石をつかった照明が至る所に施され、まるで昼間かと思うぐらいに煌々と照らされて明るい。

 正直、私の住んでいる屋敷よりも明るい。


 内装はまともだ! 

 もっと黒々としていて、禍々しいかと思った。


 あぁ、よかった。

 神様、ありがとう!


 生まれて初めて心から神様に感謝し、ほっと胸をなでおろす私なのである。


 温泉は半屋外の大きな岩風呂ができており、もちろん、男女別に分かれている。

 更衣室も清潔で、トイレもメイクルームも完備。

 さらには湯あがり後にゆったりする場所まで。


 それどころか、簡易的に宿泊するところまでできていた。

 冒険者が来たら、とりあえずここを宿屋として使うこともできるようだ。


 入り口のデザインは絶望的だけど、内側のしつらえは素晴らしい。

 これなら最高の温泉ライフを楽しめるだろう。



「ユオ様、みてみぃ、これ! かわいいやろ!」


 施設の中をあらかた見て回ると、メテオが村人数人を引き連れてやってくる。

 村の若い衆の男女なのだが、なんとあの古文書に出てくる人々の格好をしているのだ。

 私たちの文化にはない紐で調整するかたちの独特の服装なのだが、とてもよく似合っていた。


「かわいいじゃん! さすがはメテオ!」


「へへへ、せやろ? そんでな、この面々には温泉の運営と防衛をお願いしようと思っとんねん。いわば、おもてなしメンバーやな、リーダーは村のアイドル、ハンナちゃんやで!」


 メテオはそう言うとハンナをずずいと前に押し出す。

 異国の装束に身を包んだハンナはたいそうかわいらしく映る。


 第一印象はやせたかなしい姿だったのに。

 最近では栄養とケアが行き届き、金色の髪の毛と青い瞳は輝きを増している。

 普通にしてたら絶級の美少女。

 モンスター相手に剣を振り回す狂戦士だなんて誰も思わないだろう。



「魔女様! 私、頑張ります! 悪い奴が来ても私が斬りますから、最初のいけにえは私にしてくださいね!」


 目をキラキラさせて意気込みを語るハンナなのである。

 なるほど、防犯のための人選なのだろうか。

 彼女が見回りしてくれるのなら、荒っぽい冒険者でも言うことを聞くだろう。

 それと、この子はいつまで生贄を覚えているんだろうか。



「…… ユオ様、お願いがあるんですが」


 その後、施設の活用法に思いを巡らせていると、後ろからドレスたちが声をかけてくる。 ちょっともじもじして話しづらそうな雰囲気。

 だけど、何を言いたいのか私にはわかっている。


「わかってるわ、しっかりお代は弾ませてもらうわよ」


 今回の最大の功労者はドレスとドワーフのおじさんたちだ。

 トレントの顔を設置してくれやがったことを除けば、とってもいい仕事をしてくれた。

 モンスターの素材もどんどん集まっているし、追加報酬だってもちろん用意している。


 ……低金利の分割払いだと嬉しいけど。


「いえ、そんなことじゃなくて、うちらもこの村に住みたいんですが」


 しかし、私の想像は思いっきり裏切られることになる。

 これまで旅を続けてきたドワーフ旅団なのであるが、この村に拠点を設けたいとのことだ。


 施設の修理や武器防具の管理など、職人である彼らにできることはたくさんある。

 私はもちろんもろ手を挙げて大喜びしたいのだが、はっきり言って腑に落ちない。


「こんな辺境なのにいいの? 娯楽もないし、美味しいレストランも、お菓子屋もお花屋もないんだよ?」


 こんなに優秀な人たちが定住するほどの理由があるのだろうか。

 私はちょっとびっくりしてしまうのだった。


「今回、ユオ様が見せてくださった古文書の絵に似せて作ったんですが、自分の腕のなさに愕然としたんですわ。神匠なんて言われていたのが恥ずかしいと思いまして。心を入れ替えて大工仕事に精を出そうと思ってます」


 この村で腕をもっと磨きたいとのことなのだろうか。

 さすがは職人。殊勝な心意気。


「それに、ここいらは色んな素材がまだまだ眠っている気がするんですわ。ぜひ、この村に住まわせてください! 家はうちらが建てますから!」


「私たちもこの村の発展に貢献させてください!」


 ドレスに続いて、その他のドワーフのみなさんも移住したいとの話。

 メテオに続いて、村への移住、第二号となり、非常に嬉しい。

 私たちはドレスとメテオの歓迎会も含めて、村をあげてのお祝いをしたのだった。



◇ ドワーフたちの会話


「いいか、みんな、あっしらドワーフ旅団は全力でユオ様を応援する! ユオ様のもとで、この辺境の大地の素材を扱いつくすぞ」


「おぉっ! その通りだ!」


 祝いの席でドワーフのドレスが大きな声をあげる。

 彼女は少女ながらも、神匠と言われるほどの腕を持ち、仲間からの信頼も厚い。

 仲間たちは大きな声で結束を誓うのだった。


「ユオ様に見せてもらった古文書の施設をいつの日か再現しようぜ!」


「あぁ、あのヘンテコな屋根の家を作ってやるぜ!」


「俺はあの妙な機械をつくってやる!」


 ドワーフたちは今後の展望についてワイワイと話し合うのだった。

 彼らの生産力を手に入れたことで、ユオの村は発展のきっかけを掴むことになる。



【魔女様の手に入れたもの】

温泉リゾート:旅人を受け入れるための温泉とホテルがセットになった施設。古文書に描かれた内装設備で統一されている。スタッフも古文書の服装をしている。ドワーフのドレスが要所要所にボボギリの素材を使っているため、非常に強固な建築となった。


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